Side N
あ〜ちゃんと一緒に部屋に戻るけど、あ〜ちゃんの表情はずっと曇っている
ソファーに並んで座る二人
その間には、少しの隙間が開いている
それはあ〜ちゃんがつくったもの
すぐにでも無くしたかったけれど、今はその時じゃない
Side A
さっきからのっちの顔を見れない
とっくに過ぎてしまったこと、過去の事でしかないのに…
だけど、今のあたしには酷くリアルな感情
「ねぇ、のっち」
「なに?」
「話して、くれる?」
どんな気持ちで、あたしと一緒にいて
どんな気持ちで、あたしを抱いていたのか
「話さなくちゃダメ?」
困り顔で聞いてくるのっち
でも、できたら…
「のっちの痛み、、教えてほしい、な…」
それは、ただの我儘なのかもしれない
でも、知らなくちゃいけない気がするの
きっと、痛い思いをするんだと思うけど、それは
大切な人をキズつけた自分への罰だから…
「…うん、分かった」
少し迷ったみたいだけど、そう言ってくれた
のっち、ごめんね?
話すのも辛いかもしれないのに…
Side N
すべてを受け入れる覚悟をしているあ〜ちゃん
あたしはそれに応えなくちゃいけない
きっと、あ〜ちゃんにとって辛い内容だって、そう思う
「…うん、分かった」
でも今の二人なら
きっと乗り越えられる
そう、、信じているから
…
そして…
すべて話した
ゆかちゃんと別れてからのこと、包み隠さず、全部
あ〜ちゃんを利用して、ゆかちゃんを動揺させようとしたこと
でも、ゆかちゃんの決意は固くて、全然功を奏さなくて、だんだん空しくなって、寂しくなって…
あの時は、ホント自分でも最低だったって思う…
ゆっくり思い出しながら話すあたしの話を
両手を膝の上でぎゅっと握り締めて、泣かないように必死に聞いてくれているキミ
「…っ。あたしいて、辛い、のに、何で、、側に、居させてく、れたの?」
「なんで、ねぇ…」
ゆかちゃんを動揺させるため…
ゆかちゃんの願いを叶えるため…
そのどちらにも…
「あ〜ちゃんが必要だったから」
あ〜ちゃんの手がスカートの裾をクシャッと握った
それはまるで、あたしの心臓をあ〜ちゃんに掴まれるような感覚がした
あ〜ちゃんを遠ざけられなかったのは…
それは、ただ単純な理由なんだ
最初はすべてゆかちゃんへ対してのことだったけど
でもいつからか…
うん、、たぶん、あ〜ちゃんを背中から抱きしめていたあの日、あの時から
あたしの心は、あ〜ちゃんに向かい始めてたんだと思う
あ〜ちゃんが向けてくれるその想いが…
広くて…
深くて…
強くて…
優しい…
おっきなおっきな想いが…
今も変わらないその想いに…
あたしの黒い感情は
救われたんだ
「辛さが愛しさに変わるには、あ〜ちゃんの真っ直ぐな想いじゃなくちゃ、、ダメだったんよ」
側にいてくれたのが、あ〜ちゃんだったからからなんだよ
「じゃけぇ、すごく感謝しとるんよ」
「、、っ、のっち、、」
そこでようやく、あ〜ちゃんの作った隙間を埋めるように、あたしはあ〜ちゃんを抱きしめた
あ〜ちゃんも寄り掛かるように、あたしに身を預けてくれて嬉かった
Side A
のっちの話はやっぱり苦しくて、自然と流れそうになる涙を堪えて、ギュッと掌を握り締めた
「…っ。あたしいて、辛い、のに、何、で、、側に、居させてく、れたの?」
「なんで、ねぇ…」
言葉を選ぶように、やわらかく、ゆっくり話すのっち
「あ〜ちゃんが必要だったから」
分かんないよ…
でも、、
一つだけ分ったことは…
「辛さが愛しさに変わるには、あ〜ちゃんの真っ直ぐな想いじゃなくちゃ、、ダメだったんよ」
のっちの想いが
あの頃、全然掴めなかったのっちの想いが
あたしに別れを告げたあの時と違って
「じゃけぇ、すごく感謝しとるんよ」
「、、っ、のっち、、」
ちゃんと、伝わってくる…
その事実がすごく嬉しくて
ずっと堪えていた涙が、耐え切れずに零れてしまった
だから、あたしが作った隙間を埋めるように、のっちが優しく抱きしめてくれたことに安心して
あたしも、のっちにすべて預けるように身を寄せた
ゆかちゃん
やっぱりあたし…
幸せだよ
—つづく—
最終更新:2010年11月06日 03:02