代々木のライブは大成功。
会長やライターさんとかの評判も上々。
ファンクラブの人数も増えたみたい。
そしてこれから夏から秋にかけてホールアリーナツアーがある。
今はそのツアーのリハーサルと新曲のプロモーション。
しかも今回の新曲は大型のタイアップ付き。
しかも念願のドラマ主題歌。
しかも月9。
しかも主演はミキちゃん。
こんな偶然ってあるのかな?
ドラマ主題歌は嬉しいけど、主演がミキちゃんって喜んでいいのか悪いのか・・・。
しかもそのミキちゃんと雑誌の企画で対談をすることになった。
前からドラマの収録を見てみたいってもっさんに言ってたら、気を利かせてくれてドラマの現場で対談をさせてもらうようにセッティングしてくれたみたい。
あたしはスタッフさんに用意してもらったイスにおとなしく見学してる。
なんだろただ見てるだけでも、緊張するわ。
まだミキちゃんはいなくて、他の役者さんのシーンの撮影みたい。
いつもと違う現場は見てるだけでも楽しい。
あっ!!ミキちゃんがきた!!
スゴイ・・・。ひとりだけオーラが違う。
てか、めっちゃ顔ちっちゃいし、可愛いし、細いし、白いし、もうお人形さんみたい!!
おっ、のっちだ!
なんかミキちゃんと仲良さげな雰囲気。
のっちがあたしに気づいたみたい。
いつものように眉毛を下げて、あたしに小さく手を振ってくれた。
あたしも迷惑がかからないように振り返す。
それだけで安心する。
「初めまして。西脇綾香です」
「どもー。ミキでーす」
お互いに会釈。
ミキちゃんは間近で見ると、びっくりするくらい綺麗。
のっちはこんな綺麗な人にメイクとかしてるんだ。
あーやだやだ。
変な嫉妬しちゃった。
しょうがないでしょ。
のっちはミキちゃんを綺麗にするのが仕事なんだから。
それに最近は前みたいに呼び出しとかなくなったみたいだし。
でもね。
あたしがデビューする前日にのっちが言ってくれたあの言葉。
『あ〜ちゃんをキレイにするのは、あたしがやりたかったな』
他の人にメイクをしてもらうたびに、あたしはその言葉を思い出すんだよ。
本当はあたしものっちに綺麗にしてもらいたいのに。
でもそこの場所はミキちゃんの場所。
あーやだやだ。
こんなんじゃプロって言えないね。
ちゃんと仕事モードに入らんといけん!
あたしは気合を入れなおし、ミキちゃんとの対談に挑んだ。
ライターさんの進行で当たり障りのないプライベートの話、ファッションの話題、お互いの仕事の内容を喋った。
途中軽い休憩が入ると、ミキちゃんはマネージャーを呼ばずにのっちを呼んだ。
「のっち!のっち!のっち!」
まるで犬を呼ぶみたいにのっちの名を連呼する。
「はいはい」
のっちはそれを慣れてるようで、ミキちゃんに煙草とライターを渡す。
それはヘアメイク担当ののっちのする仕事?
それはあたしの中でのミキちゃんの好感度が下がった瞬間。
そこでのっちと目が合った。
のっちは「気にしないで。いつものことだから」って顔して、また眉毛を下げた。
思わずあたしもつられて眉毛を下げる。
「あぁ、今のあたしのメイク担当の子。のっちって言うの。可愛いでしょw」
あたしの目の前で煙草をスパスパ吸うミキちゃん。
なんでミキちゃんが「のっちはあたしのもの」みたいな言い方するの?
「知ってます。あたしも一緒に働いたことありますから!」
やだ。
あたしったら、かっこ悪い。
なに対抗してんの?
「・・・へー、そうなんだ。初めて聞いた」
「てゆーか、実は高校の同級生なんですよね。友達なんです!」
さすがに付き合ってるとは言えなくて、友達って言ったけどね。
てか、何言ってるの?
あたしったら嫉妬むき出し。
めっちゃかっこ悪い。
「・・・へぇ、、、知らなかった。のっち、自分のことは喋んないからな・・・」
明らかに動揺してるミキちゃん。
あたしはそんな彼女をみて優越感。
とっても浅はかな優越感だけど。
でもそれくらいしてもいいでしょ。
散々あたしののっちを振り回したんだから。
その夜は珍しくのっちが先に帰っていた。
「おかえり」
「ただいま」
「ご飯は?」
「あぁ、、、食べてきちゃったけぇ」
「そう」
のっちはもうお風呂に入ってて、ソファーで撮り溜めてたお笑い番組を見てる。
あたしも即お風呂に入ってのっちの横に座る。
あたしに気付いたのっちは腕を伸ばしてきてその中に入れてくれた。
「ドラマの現場っておもしろいっしょ?w」
「んー」
「あら?そうでもなかった?w」
「ううん。楽しかったけど楽しくなかった」
「えぇ!?なんだそれ?どっちだよw」
ケラケラ笑うのっち。
なんだか上機嫌みたい。
なんで上機嫌なんだろ?
ミキちゃん?
「あたし、ミキちゃん好きくない!」
やだやだ。
またかっこ悪い嫉妬。
「えっ?前に好きって言ってたじゃん?」
「それは、会うまで!今日会って、思ってたイメージと全然違ったんだもん・・・」
「あぁ・・・。でも慣れるといい子だよ?あ〜ちゃんも仲良くなったらわかるよw」
「そんなんわかりたくない!」
「なーに?そんなムキになんなくてもいいじゃんw」
「なるけぇ!・・・だって、ミキちゃん絶対のっちのこと好きだもん!!」
のっちの表情が曇った。
あたしはのっちの腕の中から抜け出した。
「・・・なんでそう思うの?」
「今日のミキちゃんの態度見たらピンときたんじゃけぇ」
「もしそうだとしても、あたしはあ〜ちゃんと付き合ってるんだよ?そんな心配することじゃないよ」
「ミキちゃんにうちらが付き合ってること言った?」
「言ってないよ」
「なんで言わんの?」
「っ、なんでわざわざ言わなきゃいけないの?ミキちゃんには関係ないでしょ?」
「関係ある。大有りじゃけ!」
「・・・ちゃんと付き合ってる人はいるとは言ったよ。でもさすがに、あ〜ちゃんと付き合ってるなんて言えないでしょ」
そんなめんどくさそうに答えないでよ。
必死なあたしが惨めじゃない。
「ミキちゃんの担当外れられないん?」
「えっ?」
ずっと干渉しないように気をつけてたのに。
とうとう言ってしまった。
本当はこんなこと言いたくなかったのに。
これじゃあ『仕事と私どっちを取るの?』って言ってる女と一緒じゃない。
そんな女になりたくなかったのに。
なんでこんな風になっちゃったんだろ・・・。
「・・・そんなの無理だよ。あ〜ちゃんが頑張れって言ったんじゃん・・・それなのに、なんだよ、、、」
「言ったけど・・・ミキちゃんとは一緒にいてほしくないけぇ」
「だから!!ミキちゃんとはなにもないよ!!」
そんな怒鳴らなくてもいいでしょ。
バカのっち。
「のっちはあたしを綺麗にしたかったんじゃないん?なんで、ミキちゃんなんよ・・・」
「そうだよ!あたしだってあ〜ちゃんの担当になりたいよ!!でもまだできないんだよ!」
「なんでできんのよ?」
「だからそれは社長の考えなんだよ!あたしは社長の命令をきかなきゃいけない立場なの!あ〜ちゃんみたいな芸能人とは違うの!!」
もしかしてこれってケンカ?
付き合って初めてだ。
こんなにのっちと自分が憎らしく思ったのは。
「もういい!!!」
あたしは我慢できなくて適当に上着を掴んで、外に出ようとしたらのっちに止められた。
「どこ行くの!」
「そんなんのっちに関係ないじゃろ!」
「あたしには関係なくても、あ〜ちゃんの関係者に迷惑がかかるでしょ!」
「は?」
「時計見てみなよ。今、夜中の1時前。こんな時間に外に出て、なんかあったら誰が責任とるんだよ!」
あたしの腕を掴んでるのっちの目が鋭い。
その目は怒ってるのか心配してるのかわからない。
「あたしの顔見たくないなら、あたしが出てくから」
「え」
「あ〜ちゃんは一般人じゃないんだからさ。もうちょい芸能人って、自覚もちなよ」
「・・・」
「それと、ミキちゃんのことそんなに知りもしないで嫌いとか言うなよ。あ〜ちゃんはそういうこと言う人じゃないと思ってたのにちょっと幻滅した・・・」
のっちはそんな捨て台詞を吐いて出て行った。
あんな怒ったのっち見たの初めて。
完璧に嫌われた。
もう最低。
なにもかも最低。
嫌いなんて言ってないもん。
好きくないって言ったんだもん。
だって不安だったんだもん。
妙にミキちゃんの肩を持つのっちがさ・・・。
もしかしてって思うじゃない。
知らない現場であんなの見せられたら、心配しちゃうでしょ。
しないほうがおかしいでしょ。
のっち・・・あたしは、どうしたらいいの?
最終更新:2010年11月06日 03:26