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Side.K



「お疲れ様でしたー!」

他のスタッフさん達にあいさつをしつつ、廊下を歩いてると、俯いたまま小走りの影。
他の人にぶつかりそうになっても気付いてない。
あ、れ…もしかして…

「のっち……!!」
「……あ、ああ、ゆかちゃん…。」

ようやく顔を上げたのっちは、つい数分前まで仕事をしてたとは思えないほど、生気のない顔をしていた。

「どうしたん!?大丈夫…?」
「へ、平気!!平気だよ!!」

弾かれたような返事は、私を安心させるためではなく、
自分にただ、言い聞かせてるように聞こえた。

「ちょっと、トイレ行ってくる。すぐ戻るから。」

そう言って弱弱しく笑って踵を返すのっちを引き留めたくて。
でも言葉が見つからなくて。

とっさに私は尋ねていた。





「ねぇのっち、…あ〜ちゃんは?」

場所を尋ねただけなんじゃない。

あ〜ちゃんの言動や行動が、
のっちに多大な影響を与えているのは紛れもない事実で。

だから、のっちがここ最近おかしいのは、
私の前であんなに泣いたりしたのは、
きっと、あ〜ちゃんが……。

さっきも仕事前に見た、あの冷たい目……。

最近のことを見てると、
どれをとっても、フツウじゃない。

だから、聞いた。
黙って見ている時じゃない。


のっちの足が、ぴたりと止まった。

「さあ、わかんないな。」
「のっちっ……!」
「わかんないよ。なんに、も…。」
「……。」
「わかんないんだよ…ぅ…。」

俯いて流れた黒い髪の間から、光るものが落ちて
冷たい廊下の床に弾けた。

「…っ…ごめん、もう行く。すぐ戻るから。」

今度はもう、留める間もなく、
パタパタと足音を響かせて、行ってしまった。


……。


のっちが解らない、あ〜ちゃん。
ゆかは、解ることが出来るのかな。
ああ、でもその前に、のっちが壊れてしまったら……。

ゆかは、どうするのが正解なの?





Side.A



役目が終わったさっきの男の人を、適当にあしらって帰した。
まあ、後でメールくらい入れておこう。


廊下を曲がってみたら、
のっちが走り去って、
それをゆかちゃんが心配そうに見送る場面に遭遇した。

ああ、のっちは泣いたのかな?
見たかったなあ…。

きっとのっちの泣き顔を見たら、
今の私は、嬉しくて笑ってしまう。
いつから、こんなに歪んでしまったんだろう?
嫉妬なんて、私らしくないって、ついこの間まで思っていたのに。
今では嫉妬に駆られるがままに行動している自分がいる。
怖い……どうしようもなく。

「でも……。」

でも、どれもこれものっちが悪い。
のっちは優しいから。
のっちは可愛いから。
のっちは美人だから。
のっちはかっこいいから。

のっちは…のっちは…。



「あ、やば。」

ゆかちゃんがこっちを振り向きかけて、慌てて隠れる。
何食わぬ顔で控室に先に戻ると、少し落ち込んだ様子のゆかちゃんが入ってきた。

「………。」

きっと、のっちのこと、考えてるんだ。
確かに、ちょっとおかしいかもね。

でも、ゆかちゃんにはどうにもできんよ。
のっちのことを、どうこうできるのは、あ〜ちゃんだけなんじゃから。

だからさ、ゆかちゃん。



あんまり、のっちに手、出さんでよ……。





最終更新:2010年11月06日 03:32