最近あ〜ちゃんと会ってない。
正確には会おうとしてない。
あたしが意図的に避けてるからだ。
あ〜ちゃんは夏に入ると全国のフェスやイベント回りで忙しくて。
あたしはあたしで、ミキちゃんのドラマが終わった後はすぐ映画の撮影が始まって、沖縄に飛んだ。
この一、二ヶ月はすれ違い生活。
お互いに気付いているのか、電話もメールもほとんどしなかったし。
したらしたで、すぐ言い争いになるから疲れるんだ。
あれからミキちゃんは普段どおりの接し方をしてくれてる。
もしろ前よりも少し優しくなった気がする。
ミキちゃんとの関係は、あの時の一度きり。
ミキちゃんは何も訊いてこない。
だからあたしもそこに甘えて何も言わない。
ミキちゃんに対して最低だと思っても、フォローが出来てないあたしはまだ未熟者なんだ。
沖縄撮影が終えて東京に帰ってきて、なんとなく立ち寄ったコンビニの雑誌コーナーに行くと、ある週刊誌が目に止まった。
それは低俗なゴシップ雑誌。
表紙には『人気ガールズバンドのボーカルあ〜ちゃん初スキャンダル!!お相手はイケメン、ヘアメイクアーティスト!!』
どういうこと!!??
あたしはその雑誌を手に取って確認した。
記事の内容はあ〜ちゃんがそのイケメンヘアメイクアーティストの自宅にお泊りしてるって書いてあった。
てか、このイケメンって絶対斉藤さんだろ!!
しかもご丁寧に隠し撮りの写真まで掲載してるんですけど。
ふたりともめっちゃ楽しそうに写ってるし。
ホント端から見たらカップルにしか見えませんわ。
なんでもっさんはこの記事をもみ消さなかったの?
あたしの時はそうしたじゃん。
もしかして、本当にあ〜ちゃんは斉藤さんとデキてんの?
真実だからもみ消さなかったの?
こんなしょうもない記事に、明らかに動揺してる自分がいる。
この内容が全部嘘って信じたいけど、今はそんな自信がない。
なにが嘘だか、なにが真実だかわけわからなくなってきた。
でも、斉藤さんならいいかな・・・。
あんまりしゃべった事ないけど、いい人みたいだし、仕事出来るし、イケメンだし、それに男だし。
完璧じゃん。
あたしなんて、最低な奴だし、好きな人を泣かしてばっかだし、仕事はイマイチだし、それに女だし。
勝てっこないじゃん。
もう本当に限界かも。
「のっち?」
目を開けるとそこにあ〜ちゃんが見えた。
悶々と悩んでいたらそのまま寝てしまったみたい。
「今・・・何時?」
カーテンを締めてるあ〜ちゃんに訊く。
「もう、夕方の5時すぎじゃよw」
てことは、2時間も寝てたの?
「今日の仕事終わったの?」
「うん。今日はラジオの収録だけだったから・・・」
「そっか」
あたしはテレビの電源を入れた。
『・・・さて、次の話題に移りましょう』
テレビは夕方のニュース番組の中のワイドショーコーナー。
『これはスクープですね!今若い子に大人気のガールズバンドのボーカル、あ〜ちゃんに恋人発覚!!』
あーあ、なんでテレビなんてつけちゃったんだろう。
自分のタイミングの悪さを恨むよ。
『お相手はイケメン、ヘアメイクアーティストのSさん』
「・・・のっち!!違うの!!」
「別にいいよ・・・」
「きいて!斉藤さんとは別になにもないんよ!これは好き勝手に書かれただけなんよ!」
あたしはあ〜ちゃんの弁解を聞き流して、テレビの芸能リポーターの話に耳を傾けた。
『Sさんはどうやらあ〜ちゃんのヘアメイクを担当してるみたいですねw』
「この時は他のスタッフさんもいるのに、ふたりだけになるように悪質に撮られたやつなんよ!」
『周りの関係者もふたりはいつも仲良くしてたと証言してますねw』
「泊まったって書いてあるけど、あたし一度も斉藤さんの家なんて行ったことないんよ!」
『どうやらあ〜ちゃんはSさんの自宅に通ってるみたいです。何度も目撃されてますねw』
「ねぇ、のっち!!あたしの話きいとる?」
「・・・きいてるよ」
「もっさんに、事務所名義のマンションに引っ越せって言われた」
「え」
「今まで、プライベートは干渉しなかったけど、今回写真撮られちゃったから、警備をちゃんとしてるところに移れって・・・」
「そうしなよ」
「えっ?そしたら、離ればなれになっちゃうんよ?」
「もう別にいいよ」
色々なんか疲れた。
「いいって、何が?」
「引っ越せばいいじゃん」
「あたしは・・・引っ越したくないけぇ」
「何言ってんの。事務所命令でしょ?仕方ないじゃん」
「のっちは・・・あたしと離れてもええの?」
「・・・どうせ今も離れてるじゃん」
あ〜ちゃんの表情が一変した。
「あたしよりも斉藤さんと付き合った方がいいんじゃない?」
「はぁ?」
「てか、実はこの記事に書いてあるの事実なんじゃないの?」
あたしは自分の行為を棚に上げて、あ〜ちゃんを責めた。
「なんで、そんなこと言うん?あんなん全部嘘に決まっとるじゃろ!のっち、最近変じゃけぇ・・・」
「限界なんだよ・・・」
「え・・・」
「もう色々ありすぎて限界なの!!パンク寸前なの!!」
あぁ、ヤバい。
これ・・・またケンカになるぞ。
「ごめんなさい」
「え?」
「写真撮られたあたしが悪いけぇ。のっちは全然悪くないのに、責めちゃってごめん」
あ〜ちゃんが初めて謝った。
しかも自分は悪くないのに。
むしろあたしの方があ〜ちゃんに対して酷い事したのに。
しかもそれを隠して、逆ギレしたのに。
「のっち、もう言い争いは終わりにしよ」
「・・・うん」
あ〜ちゃんはソファーに座ってるあたしの前に立って、頭を包み込んでくれた。
久しぶりにあ〜ちゃんの体温を感じた。
あたしもあ〜ちゃんの背中に腕を回す。
「のっちぃ・・・」
「ん?」
「セックスしよう」
そう言ってあ〜ちゃんはキスしてきた。
それは久しぶりのキスだった。
あ〜ちゃんから誘ってきたのは初めて。
しかも超ストレートにセックスって言葉を発するなんて。
あたしはあ〜ちゃんのその勇気に無言で応えた。
あ〜ちゃんはベッド以外は嫌だって知ってるけど、移動する時間がもったいないからソファーで。
忘れてた。
あ〜ちゃんってこんなに柔らかくて温かかったんだ。
覚えておこう。
あ〜ちゃんの可愛い声。
あ〜ちゃんの甘い匂い。
あ〜ちゃんの白い身体。
もうこうして、感じることはないから。
あ〜ちゃん・・・あなたの勇気を無駄にしてごめんね。やっぱりあたしはあなたと一緒にいる資格はないから、、、
最終更新:2010年11月06日 03:44