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「セックスしよう」

って、言ったらのっちがいつものように眉毛を下げた。
そしてあたしにキスしてくれた。
久々のキスに泣きそうになった。

ソファーでするのは好きじゃないけど、こんな状況でそんなこと言えない。
そんなことしたらのっちがどっかにいっちゃいそうで。
あたしは必死になってのっちを掴んだ。

久々ののっちの温もりに泣きそうになった。

さっきまであんなに怖い顔してたのに、今はすごく優しい顔になってる。
それはあたしの大好きな顔。

たまに強引だけど、セックスしてる時ののっちはいつも優しくて綺麗。
そして何よりもあたしを大切に扱ってくれるのが嬉しいの。

久々にそんなのっちに会えて泣きそうになった。

ふたりで汗ビッショリかいて一緒にお風呂に入った。
狭いバスタブは二人で入るとギュウギュウ。
あたしはのっちに後ろから抱かれてる体勢で入ってる。
そこはあたしの特等席。
誰にも渡さない。

「どうだった?」
のっちはあたしの右肩に顎を乗せてるから、右耳から直に聞こえる。
「ん?なにが?」
「久々のエッチ。気持ちかった?」
「もー、なんでそんなこと訊くん?恥ずかしいじゃろw」
「ねぇ、気持ちかった?」
「んっ、、、よかっ、、、たけぇ」
ちょっと。耳舐めながら訊かないでよ。
上手く答えらんないじゃない。

でも良かった。
これで仲直り出来たみたい。




「なら、よかった」
そう言ってのっちはバスタブから出た。
いつもならもっとグダグダ入ってるんだけど、今日は随分と早い。
「もう出るの?」
もっとくっついていたかったのに。

「っん」
のっちはあたしの顎を持っていきなりディープキスをしてきた。
あたしの口内を暴れまわるのっちの舌のせいで、また身体が火照ってきちゃう。

キスが終わるとまたのっちは眉毛を下げた。

「あ〜ちゃん、、、」
「ん?」
「別れよう」
のっちはニコっと笑ってたしかにそう言って、お風呂場を後にした。

は?

今なんて言った?

あたしは急いでバスタブから出る。

先に出てたのっちはすでにTシャツに着替えてた。
あたしはバスタオルを体に巻いてのっちに訊いた。

「言ってる意味がわからんのだけど・・・」
「なんでよwそのまんまの意味じゃん」
「それは今日の雑誌の記事が原因なん?」
のっちは黙ってソファーに座った。

さっきまでそこで愛し合ってたソファーでこんな話をするなんて、考えてもみなかった。

「それは・・・きっかけかな」
「は?どういうこと」
「・・・実は、ミキちゃんと付き合ってる」

は?
この人何言ってんの?
そんな冗談言われても全然笑えないけど。




「ごめん。ちょっと理解できん。のっちはあたしと付き合ってるんじゃろ?」
「うん。でもミキちゃんとも付き合ってる」
「じゃあ・・・それって、二股ってこと?」
「そうだね・・・」

ホント笑えない冗談はやめてよ。
ねぇ、冗談なんでしょ?
なんでそんな真剣な顔してんのよ。

「冗談でしょ?あたしのことからかってるつもりなんじゃろ?w」
あたしは必死にこの場を和ませようとした。

「冗談じゃないよ。ミキちゃんとヤッた」

は?
何をやったの?

嘘でしょ・・・。

「なんで・・・そんなこと言うんよ、、、」
「・・・わからん」
「わからんなら、言わないでよ!そんなこと、、、言わなくてもいいことじゃろ!」
あたしはバスタオル一枚というまぬけな格好で泣き崩れた。

「あ〜ちゃん・・・」
のっちはそんなあたしに見かねて肩を抱こうとしたから、その手を振り払った。

中途半端に優しくしないでよ。
別れたいなら非情になってよ。
こんな時まで優しさみせないでよ。

「触らないで!」
「・・・ごめん」
あたしを抱こうとした手を引っ込めて、のっちは立ち上がった。

「あたし、、、実家に戻る。あ〜ちゃんは事務所のマンションに引っ越して」
「は?なに勝手に決めてるん?」
「大家さんにはあたしが話しとくから、早めに荷造りしといて」
「だから、なんでそうなるんよ!あたしは、引っ越ししたくないし、別れたくないんよ!」
「あ〜ちゃん・・・もうそろそろ、うちら大人にならなきゃ・・・」
なんでそんな寂しそうな顔してるのよ。

なんなん?
のっちの考えてることが全然わからん。
ミキちゃんと付き合ってるのは本当なのか嘘なのか。
ミキちゃんとヤッたのは本当なのか嘘なのか。
斉藤さんとの関係を本気で疑っているのかいないのか。



実際はそんなこと関係ない。

本当に知りたいのは、あたしのことを好きなのか、好きじゃなくなったのか。

それがわからない。

そこが一番大切なのに。


「それまで、あたしは事務所で寝泊まりするから・・・。引っ越しの日程決まったら教えて」
「ちょっと・・・どこいくん?」

「コンビニ」

そう言ってのっちは出ていったきり、帰ってこなかった。

どんだけ遠いコンビニ行ってるんだって、突っ込みも出来ないくらい、あたしはショックを受けてる。
そのショックのせいなのか、ずっとバスタオル一枚でいたせいなのかわからないけどあたしは体調を崩してしまった。

もうアリーナツアーは目の前なのに、これじゃプロ失格。

こんなんじゃ、ミキちゃんにバカにされて笑われちゃう。
のっちにも愛想尽かされちゃう。
あぁ、もう愛想尽かされちゃったかw

ダメだな。
あたし、のっちがいないとダメだ。
いつからこんなになっちゃったんだろ。

一週間後、あたしは仕方なく引っ越した。
お揃いの食器が離ればなれになるなんて思ってなかった。

いつかまた、一緒に買った緑とピンクの食器が隣同士に並べられる日がくるの?

のっち・・・あたしたち、本当にこれで終わりなの?





最終更新:2010年11月06日 03:52