『A』
暗い路地で、二人、手を繋ぎながら帰る
可愛いゆかちゃんと人気のない場所で二人きりじゃけぇ
変質者でもいたらどうしよう、こういう時にのっちが居たら心強いけど
まぁ、でものっちは肝心なとこで噛むし、変質者さんとええ勝負じゃねなんて考えてたらおかしくなって自然と顔の表情が緩む
「なーんか、今日のあ〜ちゃん嬉しそうじゃね。なんかあった?」
「へ?べ、別になんもないけぇ!」
急に横から声を掛けられるから変に動揺しちゃった。これじゃのっちとあんま変わらん
「そ、ならええけど。あ、ゆかの家のマンション見えてきた」
マンションのエレベーターに乗り、ゆかちゃんの部屋の階のボタンを押す
チン、と扉が開く
ゆかちゃんが自分の部屋の鍵を開けると同時にゆかちゃんに腕と肩を捕まれ引っ張られた拍子に玄関に雪崩れ込むよな形になり
尻餅を付きそうになるところでゆかちゃんに抱え込まれ床に押さえつけられる
床の上であ〜ちゃんが下になってゆかちゃんが上にいて
急な展開にまだ付いていけてないあ〜ちゃんを置いてきぼりにして、そのままの体勢で見下ろしながら、あ〜ちゃんの髪の間に見た目とは似合わず意外と大きめな手を入れて優しく撫でながら
「あ〜ちゃん、可愛いね」
と耳元で呟かれる。
え、と、・・・この状況は?
今置かれている状況を全部把握したところで
凄く恥ずかしくなって顔から火が出るんじゃないかってくらい熱くなる。
「…ゆ、ゆかちゃんの方が可愛いけぇっ」
「んーん、そんなことない。あ〜ちゃんは超可愛いよ、もう食べちゃいたいくらいって言うか今から食べるとこだけど」
「え、ちょっと、待っ…んっ」
言葉を最後まで言い終わってないのに、上からゆかちゃんと唇が重なって口封じされる
最初は、軽く口と口が合わさるくらいだったけど、だんだんエスカレートしてって少しずつ深い口づけになる
ああ、やっぱりこうやってゆかちゃんのペースに巻き込まれるんだなぁなんて思いながら
電気の点いてない寂しげな薄暗い玄関は、二人の甘い空間に変わろうとしていた
つづく
最終更新:2010年11月06日 03:59