大本の透明人間騒動が終わってから2ヶ月。9月になった。
大学では夏休みも明けて、後期の授業が始まっていた。
「今日もいっぱい歌った〜」
西脇がカラオケボックスから出てきた。
西脇は歌唱力に定評があり、周りの友人からも評判だ。
大勢で歌うことも好きだが、一人でじっくりカラオケに籠もることも好きなのだ。
西脇は俗に言うヒトカラーでもある。
ヒトカラを終えて満足そうに帰り道を歩く。
西脇は自宅近くの路地裏を歩いていた。
「そちらのお姉さん。珍しいものをいかが?」
西脇は声のする方を向いた。
そこには全身黒装束の怪しげな占い師のような身なりをした若い女が立っていた。
そう、この女は樫野に催眠術メガネを、大本に透明人間のクスリを売った商人だ。
西脇はその誘いを断り、前へ進んだ。
「ちょっと待って下さい!」
商人は再び西脇に声をかけた。
よく見るとこの商人はスタイルが良い。
細身で長身でモデルのような体系だ。
「透明人間になりたくないですか?人間一度はなりたいですよね?コレを飲むと透明人間になれますよ!」
商人は興奮げに話す。
よく見ると手には大本に渡したものと同じようなビンを持っている。
西脇はそのビンを見つめた。
「本当にそんなんで透明人間になれるんですかね?」
西脇は商人をあしらうと商人はまた口を開いた。
「勿論なれますとも!この前もボブヘアーの女性がしっかり透明人間になってましたし!」
商人はさらに続ける。
「それに透明になるといろんなことが出来るんですよ。想像してみて下さい。夢が広がりますでしょう?」
西脇は透明人間になった自分を想像してみた。
着替え、風呂場、トイレ等覗き放題である。
「まぁ悪くはないですけど…」
西脇は少し顔を赤らめて言う。
「ですよね〜。この透明人間になれるクスリをお買いになりませんか?今なら500万円でお売りしますよ」
「高い…」
西脇はびっくりした。
値段が高すぎるのである。
「高いですか…それ相応の物品と交換でも構いませんよ!あなたの脱ぎたてパンツとか…」
「なんか言いましたか?」
「いえ、なにも…」
すると、商人は西脇の髪の毛を見て叫んだ。
「この髪留めは珍しい!相当な値打ちがあるものと見ました!あなたの髪留めと私の透明人間のクスリを交換でどうでしょう?」
「え?そんなものでいいんですか?」
西脇は驚いた。
「ええ、構いませんよ。じゃあ早速交換しましょうね」
西脇と商人は髪留めとクスリを交換した。
「ありがとうございます!」
商人は深々を頭を下げた。
西脇も会釈をして商人と別れた。
「いいのかな?500万円する高級なものとあんな安いヘアーピンを交換なんて?」
西脇のヘアーピンは100円ショップで購入したものであった。
つづく。
最終更新:2010年11月06日 04:04