「でも、なんかあった?」
「なんで?」
「いや、ちょっと、心配したから、さ」
「なんか、羽が濡れると、うまく飛べなくって…」
「そっかそっか」
すっと、ゆかの手が伸びてきて
頬をかすめる。
「のっち、、、泣いてたの?」
えっ、、?
「…んーん、アメ、だよ」
そ、これは、アメ。
「そっか、アメ、だね」
そう言って、微笑んだ顔は
ほんと、ゆかちゃんそっくりで、、、
雨足が強まるのを、ぐっとこらえた。
うちに帰ると、すぐに
ふわふわタオルで、ゆかの羽を拭う。
帰りは、のっちの羽に包まっていこうって言ったのに
一緒に飛んで帰るって、聞かないんだもん。
「んー、なんでうまく飛べないんだろ?」
口を尖らせて、ぶつぶつ呟くゆか。
「おっきくなったら、大丈夫になるかな?」
かわいいな、ほんと。
「ね、のっちは?」
「ん?」
「のっちも最初は、うまく飛べなかった?」
あぁ、、、
「いや、まぁ、多少は、ねぇ、、、けど、たぶん」
「たぶん?」
「白い羽は、比較的、アメに弱いのかも」
「えぇ!」
「てか、ゆかちゃんは、弱かったからねぇ」
「…ママ、が?」
「うん。だから、ゆかも、そうかも」
むー、、、と
なんだか、考え込んでしまった様子。
「だから、ね?」
ぽんと、ゆかの頭を撫でる。
「あんまり、ムリはして欲しくないんだ」
「…うん」
「ゆかに、なんかあったら、のっち泣いちゃうもん」
「…さっき、みたいに?」
「さっきのは、、、アメ、だって」
「うん、、、」
「ね?今度は、2人で、傘さして帰ってこようっか」
「うん、わかった」
おっ、意外に素直。
これは、どっち似?、、なんて、ね。
「…ねぇ、のっち?」
「ん?」
「ママに逢いたい?」
「・・・うん、たまに、ね」
たまぁに、無性に、ね?
「でも、のっちには、ゆかがいるから」
ふわっと包み込んで
ぎゅっと抱きしめる。
「ありがと」
ほんと、さ?
ふとした瞬間
ちょっとしたきっかけで
ひょこっとキミは顔をだす。
そのどれもが、とんでもなく幸せな記憶を連れてくるものだから
ほんの少し、胸がチクっと痛んで
ちょびっとだけ、、、、ほんのちょびっとなんだけど、寂しくなる…
でも、忘れないよ?
寂しくさせにきてよ?
空から、涙が零れるたび
キミを想って、雨を降らすから。
それはきっと
幸せの証。
最終更新:2010年11月06日 04:15