西脇がクスリを飲んで眠り翌朝になった。
西脇はベッドで寝息を立てている。
「あだっ!」
西脇は太ももに痛みを感じて目を覚ました。
「痛い…誰かに蹴られた感じする」
西脇は一人暮らしなので、他に住人はいない。
誰かに蹴られるなどありえない話である。
(まさか、隣に誰か寝ている!?)
西脇は起き上がりベッドを見て驚愕した。
「う、うそでしょ…こんなことありえない…なんで…!?」
西脇のベッドの上には西脇の外見そっくりの女が眠っていた。
顔はもちろん、身長や体つきも西脇と全く同じである。
その西脇そっくりの女は全裸で、西脇の隣ですやすやと眠っている。
「ちょっと!あんたは誰なん!?誰かが変装でもしとるんじゃろ!?」
西脇は西脇のそっくりさんを叩き起こした。
「うるせぇな〜人が気持ちよく眠っているっていうのに…」
西脇のそっくりさんは機嫌が悪そうに呟いた。声まで西脇と全く同じである。
「あんたはどっから入ってきたん!?窓は全部施錠したし、ドアにもチェーンかけたし…」
西脇は慌てふためいている。
「どっから入ったっていうかお前があっしを作り出したんじゃねぇかよ!」
西脇のそっくりさんが返した。
ちなみにこの西脇のそっくりさんは言葉遣いが結構乱暴だ。
「い、意味わからん…」
「お前さぁ?昨日の夕方にクスリ飲んだろ?液体のやつ」
「あぁ飲んだよ。透明人間になるクスリのことでしょ?」
「透明人間になるクスリ?ちげーよ!お前が飲んだクスリは“分身を作るクスリ”だよ!」
「へっ…?」
西脇は唖然とした。
商人は西脇に透明人間になるクスリではなく、分身を作るクスリを間違えて渡してしまったのだ。
「分身を作るクスリを飲んでから睡眠をとると、飲んだヤツの分身が出来上がるんだ。だから今あっしはここにいるの。状況はわかった?」
「う、うん…(なんで!?もしかしてあの商人さんクスリを間違えたの!?)」
西脇のそっくりさんの説明が終わった。
西脇は突然なことに驚いている。
西脇のそっくりさんと書くのは面倒なので、これからは“ニセ脇”と記述することにする。
「とりあえず、あっしになんか服を貸してよ。人間は生まれてくるとき全裸だから服がないんだわ」
ニセ脇は西脇のタンスの中を勝手に開けた。
「ちょっ!勝手に開けんといてよ!」
「おめーは外見に似合わずエロい下着持ってるな!」
「う、うるさい!」
「パンツはこの黒いヤツ借りるぞ。じゃあブラもこの黒いヤツで」
ニセ脇は下着を身に着けた。
「服はなぁ…なんかワンピースばっかだな。お前の趣味か?」
「あ〜ちゃんはガーリーな服が趣味じゃけぇ!」
「しょうがねぇな…じゃあこの白いワンピースでいいや」
ニセ脇は不服ながらもその白いワンピースを着用した。
「あ、そうそう。あっしはその“あ〜ちゃん”って呼び方はダサくて嫌いだから、あっしのことは“綾香”って呼べよ」
「ダサい名前とは失礼な!」
ニセ脇は文句をつけた。
西脇も反論する。
「あ、もうこんな時間。早く朝ごはん食べて、学校に行かなきゃ!」
「おういってらっしゃい。あっしは家でごろごろしとくから」
西脇は冷蔵庫から前日のうちに作っておいた朝食を取り出して食べた。
「ねぇあっしには朝飯ないの?」
「ないよ!いるなんて知らなかったし。なんか欲しけりゃ自分で適当に冷蔵庫から作って食べてよ」
西脇は朝食を食べ終えて身支度をした。
「あ〜ちゃんは今日は1限から授業じゃけぇ。綾香はうちでおとなしく留守番しんさいや!」
「任せとけって」
「外に勝手に飛び出したりせんといてよ!」
「わかったって」
「知らない人が来てもドアを開けちゃダメよ!」
「あっしはガキか!」
西脇は大学に通学し、ニセ脇は留守番となった。
西脇は不安だった。
チンピラ風のニセ脇に留守番を頼んでいるからである。
ガラが悪い人間は何をしでかすかわからないものだ。
「ねえあ〜ちゃん?」
「あ〜ちゃん!」
「あっごめん!え〜と何だっけ?」
今は大学の昼休み。
3人はいつものように学食にいた。
西脇はボーとしており、樫野と大本が呼んでもなかなか気づかなかった。
「どうしたのあ〜ちゃん?さっきからボーとしてるけど?」
大本が大きな目をさらに大きくさせて西脇に訪ねた。
「あ〜ちゃん?何か心配事でもあるの?」
樫野もさほど大きくない目を大きくさせて西脇に話しかけた。
「えっ何でもないよ!大丈夫だよ!」
西脇は返す。
少しのこころの変化にも気づける2人。
この3人の友情は確かなものだ。
(やっぱ心配じゃ…綾香は何をやらかすか…)
この後の授業も西脇は集中できなかった。
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「ただいまー」
西脇が帰宅した。
「綾香ーいるー?」
西脇が玄関先で声をかけても、ニセ脇は返事をしなかった。
西脇がリビングのドアを開けると、とんでもない光景が目に入ってきた。
「な、なんで…」
つづく。
最終更新:2010年11月06日 04:22