『N』
ずっと前からあ〜ちゃんの事が好きで好きで仕方がなかった
けど、のっちたち女の子同士じゃん?
普通に引かれそうだしあ〜ちゃんの側に居れるなら
ずっと友達のままでいいやって思った
だから、少しでもその気持ち、想いをどこかに隠してなかった事にしようと思って
声を掛けて来て連絡先を交換して
本当あ〜ちゃん以外なら誰でも良かった
連絡を取り合って仲良くしてくれる男性、色んな人と付き合った
でも、のっち自身に愛はないんだからそう長くは続かない
「彩乃は、俺がいなくても生きていけそう必要ないよな俺なんて」
毎回そう言われて
好きになる前に彼の方から離れて行く
今の彼も
合鍵を貰って
別に会いたかったわけじゃないけど
あ〜ちゃんの温もりを感じられない夜は彼の部屋に上がり込んで
寂しさを紛らわすように体を重ねる日々が続いていた
そんなある日の夜に、いつものように彼のアパートの一室に上がり込もうとした時
珍しく電気が消えてる
でも外灯は点いてるし、寝てるのかな?そう思ってドアノブを回すと糸も簡単にがチャリ、と扉が開いた
部屋に入ってすぐわかった
いつもと違う空気
彼のでものっちのでもない
甘ったるい香水の匂い
恐る恐る、部屋を覗くと彼と知らない女がベッドの上、裸で激しいキスをしていた
ああ、これが浮気現場ってやつっすね
今すぐ布団を引き剥がして誰なのよその女!なんて怒鳴るとこだけど
なんかそう言うのって面倒だし
彼と女に気づかれないようそっと部屋を出る
言うまでもなくドアを閉める際二人によく聞こえるようにバタン!と思い切り閉めてやった
あーあ、馬鹿らしくてやってらんね〜
今度こそは上手く行くかもなんて思ってたのっちが馬鹿だった
このまま自分の家に帰るのも退屈だし時間潰しにコンビニにフラフラと立ち寄った
最新の漫画やゲーム雑誌を物色しているとポンポン、と誰かに肩を叩かれる
「のっち!めっちゃ偶然じゃね。何しとるんよ」
こんな偶然ってあるんだな、今のっちの目の前に大好きなあ〜ちゃんがいる
「ん〜、暇だから寄ってみただけだよ、あ〜ちゃんこそこんなとこで何しとるん?」
「あ〜ちゃんも暇だったしお腹すいたけぇデザート買いに来たんよ」
あ〜ちゃんのカゴの中を見ると確かに、あ〜ちゃんの好きそうなデザートがいくつか入っている
「ちょっと、待っとって」
そう言ってあ〜ちゃんはレジの方へ行っちゃった
しばらくして、レジ袋を下げたあ〜ちゃんが戻ってきて
「今からのっちの家行ってもいい?」
と聞いてくる。
そりゃあ、もちろんOKでしょ。
「うん、いいよ。その代わり散らかってるけど…」
「はぁ、少しは片づけんさいよー。じゃあ、のっちの部屋片付けるの手伝いに行く、ってことで」
「マジで?散らかりすぎて困ってたんよ、さすがあ〜ちゃん」
「散らかりすぎ…って、まぁいいわ。よし行こ」
「わっ」
急に、手を握られて変な声が出ちゃう
あ〜ちゃんはそんなの気にせずのっちの手を握ったままのっちの家へと一緒に歩き出した。
なんとも思ってないからだよね?
のっちから手を握るなんて滅多に出来ないもん
そう思うと凄く胸が苦しくなった。
つづく
最終更新:2010年11月06日 04:27