アットウィキロゴ
3年も月日が経つと色々変わるもんだ。

とうとうあたしたちの母校が閉校した。
建物はそのまま残るらしい。
映画やドラマの撮影場に生まれ変わるみたい。
あの屋上がなくならないってわかってホッとした。

ゆかちゃんに子供が出来た。
まだ生まれたばっかりのおちびちゃんだけど可愛い女の子。
旦那さんは相変わらずの筋金入りのあ〜ちゃんファンで、子供の名前を綾香にしちゃったほど。
その話を聞いたあ〜ちゃんは照れ笑いしてた。
そしてあたしはその旦那さんに超嫌われてる。
一度会ったことあるけど、マジで怖かった。
どうやら、あ〜ちゃんをひとりじめしてるのが許さないらしい。

ミキちゃんが電撃結婚した。
お相手はなんとヘアメイク担当の人。
これはテレビのワイドショーで知った。
正直驚いた。
芸能リポーターにインタビューされてるミキちゃんは相変わらず、愛想なくてイメージよくなかったけど、前よりももっと綺麗になった気がした。
綺麗になってるのは愛されてる証拠なのかなって思ったり。
ミキちゃんに対しての罪悪感が少しだけ軽くなった気がした。

おせっかいだった斉藤さんも前に進んだみたい。
あ〜ちゃん曰く最近左手の薬指に指輪をはめてるらしい。
相手の話を聞き出してるけど、斉藤さんはいつもはぐらかすんだって。
そりゃそうかも。
だって、あ〜ちゃんは斉藤さんがうちらと”同じ”って知らないからね〜。
斉藤さん、辛い過去から連れ出してくれた人を見つけたんだね。
よかったよかった。
年下で未熟者のあたしが、なにえらそうに語ってんだって突っ込まれるから、口に出していえないけどねw

あ〜ちゃんも変わった。
前よりも強くなった。
3年前よりも正直バンドの人気は落ち着いた。
アイドルとしてみていた層が減って、本当にあ〜ちゃんたちの音楽が好きな人たちが聴いてくれてる。
いわば公務員的な安定感。

あ〜ちゃんのメディアの露出も最小限になった。
テレビに出るのはリリースキャンペーンくらい。
レギュラーはラジオの冠番組が二本。
たまにCMキャラクターやタイアップをやらせてもらってる程度。
あとは大好きなライブとフェスばっかりやってる。

3年前の超忙しかった時よりも今の方が活き活きとしてる。

それはあ〜ちゃんがちゃんと向き合ったからだ。

あ〜ちゃんはあたしとやり直した後、もっさんにあたしと付き合ってることをカミングアウトした。
あたしはもっさんに別れろって言われたコト、あ〜ちゃんに正確に言ってないけど、薄々気付いてたみたい。

もっさんはあ〜ちゃんの真摯な態度に折れて許してくれた。
許しを得て、あたしは事務所公認の恋人になったわけだ。
さすがに世間様には公表できないけど。

一緒に住んでないけど、あたしは暇さえあればあ〜ちゃんのマンションに行くのが当たり前になった。
まるで通い妻状態。
通っても別に部屋の片付けしたり、料理作ったり、妻らしいことはひとつもしてないけど。

みんな変わってるのに、あたしだけ変わってない。
変われてない。
あの時のまま。
そして今日もあ〜ちゃんちのソファーであ〜ちゃんの帰りを待ちながらゲームをしてる。



「ただいま〜」
「おかえり〜」
まーた、ゲームばっかりしとる。

「ご飯は?」
「仕度してないよ〜」
「だと思った。じゃけぇ、お弁当買ってきたわw」
「さすが、あ〜ちゃん。なに弁当?」
「のっちはとんかつ弁当で、あたしはヘルシーなサラダうどん」
「わーい。でもちょっと待って。いまいいところだから」
のっちはそう言って手に持ってるゲーム機に夢中。

もう、ゲーム好きはいつまで経っても変わらん。
今日はいっぱい話したいことあるのに。

ソファーで仰向けでゲームをしているのっちに跨った。
一瞬あたしを見たけどのっちはすぐにゲームに視線を戻す。

「ねぇ、のっち」
「んあ?」
「斉藤さんがね?」
「んー」
「ハリウッド行くんじゃって!」
「んー。・・・えっ!!??は、はりうっど?」
「そう。ハリウッドw」
「なんでまた?」
「もっとメイクの勉強をしたいから留学するんじゃと。はっきりとは言っとらんけど、どうやら向こうに恋人がいるらしいのw」
「うへぇぇ!!マジで!?チョー、ビックリなんですけどww」
のっちはやっとゲーム機を手放した。

「ん?じゃあ、メイク担当は誰になんの?」
「のっちがいいんだけど・・・」
「えー!?無理無理w」
「なんで?斉藤さんももっさんものっちでいいって言ってくれたんよ?」
「だって、あたししがない商店街の美容室のしがない美容師だよw」
「ちょいワルオヤジ風な渋い社長さんも事務所に戻ってきてくれって言ってたんよ?」
「いや・・・ねw嬉しいけどさ・・・」
「のっちの仕事もあるけぇ。すぐにとは言わんよ。でもあたしはのっちにメイクしてほしい」
あたしの下でう〜んと唸ってるのっち。



この3年、のっちはあたしにすごく優しくなった。
優しくされるのは嬉しいけど、たまにあたしの顔色を気にしすぎてる節がある。
エッチも前はたまに強引にすることもあったけど、今じゃ遠慮がちだもの。

きっとミキちゃんのことがあったからだと思うけど。
あたしはもう吹っ切れたのに、のっちはまだ自分が許せないらしい。

一緒にいるけど、たまにのっちがいないような気がするの。
魂がないってゆーか、上手く言えないんだけど、前みたいに戻りたい。
のっちの不安を取り除いてあげたい。

「でも、またあたしがメイクの仕事したら・・・」
「ん?」
「いや、やっぱいい。忘れてwお弁当食べよう。てか、いつまで上に乗ってんのw」
「んーだって、のっちとくっついてたいけぇw」
あたしは寝そべってるのっちに覆いかぶさる。
のっちはあたしの頭をポンポンと撫でてくれる。
それだけであたしは安心する。

けど、のっちはまだ安心してないんだよね。
だったらこれで安心してくれるかな。

「ねぇ、のっちぃ」
「はーい?」
「左手貸して?」
「あとで返してねw」
ヒラヒラとあたしの目の前に出されたのっちの左手。
あたしはそれを掴んで薬指に指輪をはめた。

その行為を目の前で見ていたのっちは大きい目をパチクリと何度も瞬きさせてる。

「一緒になろ?」
「え・・・」
「うちらケッコン出来んけど、一緒に生きていくことは出来るじゃろ?じゃけぇ、また一緒に暮らそ?」
のっちは何も言ってくれず、かわりに眉毛がおもしろいくらい下がってる。




「メイクの担当嫌なら無理にせんでもええよwあ〜ちゃんがちゃんとのっちの分まで養ってあげるけぇwお金のことは心配無用じゃ!」
「うぇっ、、、うぇぇ、うぇぇーん」
あれ?泣かすつもりなんてなかったんだけど、のっち泣いちゃった。
泣いてるのっちはなんだか可愛い。

「なーんで泣くんよ?あ〜ちゃんのプロポーズ嫌じゃった?」
「・・・許して、くれるの?」
「ん?」
「あたし、あ〜ちゃん以外の人と寝ちゃったんだよ?それでもいいの?」
「もー、何度も言っとるじゃろ?だいじょーぶじゃーてw」
「またメイク担当したら、また同じ過ち犯しちゃうかもしれない・・・。絶対ないって言い切れない」
「もうさ、自分責めるのやめんさいよ。のっちはこの三年ずっと背中に十字架背負ってたんじゃろ?」
「・・・」
「もう、その十字架下ろしてええよ。三年苦しんだんだから時効じゃ、時効w」
「ごめん」
「のっちのごめんは聞き飽きた。もっと、気の利いたセリフ思いつかんの?」
「ははは。ごめん」
「ほらー、また言う〜w」
泣き止んだのっちの顔に笑顔が戻った。

のっちはあたしのことをよく太陽って言うけど、あたしにとったらのっちの方が太陽だよ。
そのフニャっとした笑顔に何度救われたか。
さっきの指輪はめるの本当は心臓バクバクだったんだよ。
拒絶されたらどうしようって思ったんだよ。

「やっとのっちに綺麗にしてもらえるんじゃねw」
「ふふ。そうだねw」
「さーてと、なんかおなか減ったwお弁当食べよっか?」
「お茶入れるよ」
「おっwやっと妻らしいことしてくれるん?」
「え?それどういう意味ですか?w」
「だってのっちさ、うち来てもだたゲームしとるだけじゃろw家事も料理も苦手で、何が得意なん?」
「あら、ダーリン。お忘れになって?あたしは床上手よw」
あっ。
3年ぶりのアホでエッチで強引なのっちだ。

「あ〜ちゃん、愛してるよ」
「知っとるw」

キス。

「あ〜ちゃん、あたしのこと幸せにして。あたしもあ〜ちゃんのこと幸せにするから。一緒に幸せになろ?」
「のっちのくせに生意気じゃw」

またキス。

久しぶりの眠れない夜。
明日も頑張ろう。
そう思える人に出会えて本当に良かった。

あなたに逢えてあたしはそれだけで幸せ。

— Fin —




最終更新:2010年11月06日 04:38