「あ、光った」
「うん。あ、あっち」
「ほんとだ、、、きれー…」
「ゆか、蛍見るの初めて」
「のっちも、初めてみたいなもんだよ」
「なにそれ」
「親が言うには、ちっさいときに見に連れって
もらってんだってさ。記憶にないけど」
「へぇ」
薄暗くなった空間。
ぽつん、ぽつん。
消えては、光り、
光っては、消える。
ありきたりな表現しかできない自分に
ほとほと残念なんだけど
うん、幻想的、だね。
「きれぇだね」
「でね」
「ん?」
「泣いたらしいよ」
「だれが?」
「のっちが」
すっと、ゆかちゃんの肩に
灯る、やわらかな光。
「ま、虫じゃん?」
「うわっ、それを言ったらダメでしょ」
「いやいや、そなんだけど。
てか、子どもの頃の話よ?」
「うんw」
「なんか、怖かったんだろね」
「虫、が?」
「てか、、、“光る”虫、が?」
「あぁ」
「ま、覚えてないんだけど、さ」
すっと、手を伸ばすと
ふわっと、闇の中に消えてった。
かと思えば、うっすら遠く
また、ふわっと光り、
微笑んだような気がした。
「消えないで」
無意識に
微か、に
でも、確実に呟いた。
ゆかちゃん?
あなただけは、消えないで、よ?
あたりはとても静かで。
遠く、近く
せせらぎの音が聞こえる気がするけれど
とても、静かで。
浮かんでは消える
やわらかな光の音が
鼓膜に響いてるのを感じる。
「ずっと、そばにおればいいじゃろ?」
そう、甘く
あなたは囁いて
のっちのココロん中に
また、一つ
消えることない光を灯した。
「…うん」
そっと
でも、ぎゅっと
はぐれないように
その指先を、すくった。
「きれーだね」
「うん。ありがと」
「え?」
「連れてきてくれて」
「あぁ、、ただ、一緒に見たかっただけだよ?」
のっちこそ、ありがとう。
いつも、闇の中から
救い上げてくれて。
「じゃ、来年も連れてきて?」
頬が緩む。
「うん」
ふわふわとした幸せ。
来年も、その先も
ずっと。
最終更新:2010年11月06日 14:22