「あ、あそこにコンビニあるよ!のっちぃ傘買わん?」
「そうだね!あ〜ちゃんと綾香ちゃんのも買おうよ」
樫野と大本は川原付近のコンビニで傘を4本購入した。
「結構橋まで遠いんね…」
「たしかに…向こう岸に行くまでこんなにかかるなんて…」
樫野と大本は川沿いの道を橋を目指して歩いていた。
一番近い橋までも結構な距離があった。
さらに雨は激しくなる。
◆
「綾香!どうゆうことなん!?」
「わかった…全部話すよ…」
ニセ脇は重い口を開いた。
「実はあっしのようなあのクスリで作られた分身は、水を当て続けると消えてしまう仕組みになってんの」
「え…」
「さっき川に入り続けたから、あっしの体はもう消えるの。だから体の色が透明になってるんだよね」
ニセ脇の体の透明度が高くなる。
西脇は言葉を失う。
「も、もしかして綾香がお風呂に入るのを断ったのって…」
「ああ…その通り。風呂を浴びるとあっしの体が消えちゃうから」
ニセ脇がぶっきらぼうに答える。
「何でそれを先に言ってくれないん!お風呂断る時に言えばええじゃろ!」
「別にお前に関係ないだろ…」
「それを知っとったら綾香を川原へ連れてこんかったのに…!」
西脇の目から涙が溢れ出した。
激しい雨が振っているので、西脇の顔はすでに濡れている。
「うわーん!ごめん綾香ー!ぐずっ…。あ〜ちゃんが川に落ちなければ…綾香が消えることなんか…死ぬことなんかなかったのに…ぐずっ
」
「死ぬなんて大袈裟だな」
「ごめんね、本当にごめんね綾香…。あ〜ちゃんが綾香を殺してしもうた…」
西脇はニセ脇を抱きしめた。
ニセ脇の足の部分はもう全く見えていない。
「綾香の足が…綾香の足が…」
「ああ…もうあと…30秒も…いられないな…」
ニセ脇の声が途切れ途切れになっている。
「綾香行かないで!消えないで!死なないで!」
「そん…なに…泣くなよ…鼻水で…メイクが…ボロ…ボロ…だぞ…」
「綾香ー!綾香ー!」
ニセ脇の腕も見えなくなった。
残っているのは頭部だけだ。
「綾香…」
「もう…お別れ…だな…じゃあな…」
「待って綾香!」
「最後に…今まで…楽し…かったよ…あり…がとうな…あ〜ちゃ…」
「えっ…初めてあ〜ちゃんって呼んでくれた?」
ニセ脇は最後の言葉を吐くと、跡形もなくスーッと消えていった。
ニセ脇が着ていた服が全て地面へペタリと落ち、激しい雨がそれを打ちつけていた。
「綾香ー!うわ〜ん…!」
西脇はその服を全て拾い上げて抱きしめて泣いた。
「あ、あ〜ちゃんいたいた。遅くなってごめんね。橋が意外と遠くてね…」
「はい、これはあ〜ちゃんの傘」
大本と樫野がやってきた。
樫野が西脇に傘を渡す。
「あれ?あ〜ちゃんどうしたの?なんで泣いてるの?」
「そういえば綾香ちゃんの姿が見えんけど…」
「ねえ…あ〜ちゃん何があったん…?」
西脇は雨に打たれながら泣くばかりであった。
第3章【化身】完
エピローグへ続く
最終更新:2010年11月06日 14:40