Side N
ゆかちゃんがリニアの部屋を出てから3ヶ月
あたしは、二人から貰ったぬいぐるみを抱きしめながら、一緒に寝ていた
ゆかちゃんには大丈夫とか強がっちゃったけど、いざ一人になると寂しかったから
あのプレゼントは凄く嬉しかった

だから、二人の誕生日には何か出来ないかなって、考えてはみたけど、ココにいる以上は出来ることって限られちゃうし…

そしてやってきたゆかちゃんの誕生日
結局、良い案は浮かんでこなくて…
だから、言葉で伝えようって、たくさんのおめでとうをゆかちゃんに言う事にしてたんだ

夜になったらちゃんと言おうと思ってたら、リニアのダンスが終わる時間、ヤスタカ様に連れらてゆかちゃんがやってきた
ゆかちゃんがリニアじゃなくなった日から、ゆかちゃんがリニアの部屋に来ることはなかった
ゆかちゃんには資格があるから、部屋に入ることは出来るんだけど
あんまり色んな人が出入りするのも良くないからって、権限はなくなったみたい

「それじゃあ、時間になったらまた迎えに来る」
ヤスタカ様はそう言って部屋を出て行った

「ゆかちゃん!誕生日おめでとう!」
ゆかちゃんは目の前にいるけど、触れることは出来ない
手を伸ばしても、透明な壁の感触だけ

「ありがとう、のっち…」
あー、ゆかちゃんの声…
「にしても、ゆかちゃん来てビックリしたわw」
「ぅん。なんかね?あ〜ちゃんからの誕生日プレゼントなんじゃって」
「プレゼント?」

そうこの日、どうやら折角リニアの部屋に入れるんだから、誕生日くらい側で幼馴染から祝福してもらってもいいでしょ?って
あ〜ちゃんが王にお願いしてくれたんだって

「そっかぁ、さすがあ〜ちゃんじゃねwのっちは何もプレゼントないんよw」
「そりゃ、しょうがないじゃろ?のっちはがんばって踊っとるんじゃけぇ」
でもやっぱり、大切な親友に何もプレゼントできないのは心苦しいから
「ゆかちゃん何かしてほしいことある?」

少し考えたゆかちゃんは
「…のっちは、この世界が好き?」
「ぇ、う、うん。ゆかちゃんと、あ〜ちゃんと皆がおる世界じゃけぇ、大好きw」
「なら、、のっちは踊って?ゆか、のっちのダンスめっちゃ好きじゃけぇ」

この時の優しく微笑むゆかちゃんの顔に、切なさを感じたのは気のせいだと思った
そして、チクリと感じた胸の痛みも気のせいだと思った

「うん!」

だって、その気持ちが特別な感情だって、知らなかったから…

あたしはただこの世界が平和であってくれるように、そう願いながら毎日踊っていた
ゆかちゃんが暮らすこの世界が平和であるように…




Side A
私の部屋のドアが開いて、ゆかちゃんが戻ってきた
のっちと会ってきたはずなのに、その表情はどこか悲しそうで…

トボトボと私の前まできたゆかちゃんに「のっちといっぱい話せた?」って聞いたら
「うぇ〜んwあ〜ちゃぁんっ、、」てゆかちゃんが泣き出しちゃって、急のことにどうしたら良いのか分からなくて
その時はただ、ゆかちゃんをギュッてしてあげることしか出来なくて…
「どうしたん?」て聞いても、ゆかちゃんは泣くばかりで、結局その日はゆかちゃんと一緒に
私のベットで眠った

ゆかちゃんがのっちのことで泣いてるのは、間違いなかった
でも、翌日

「急に泣いちゃってごめんね?もう大丈夫じぁけぇ」
「ホンマに大丈夫なん?」
「うんw久しぶりにのっちと会ったけぇ。色々込み上げてきたみたぃ」
「そうなん?」
そうなら良いんだけど…
「そうなんよ。変な心配させちゃってごめんね?」

ヒヒwって笑うゆかちゃんは、ちょっと無理してるようにも見えたけど
その言葉を疑うことを知らなかった私は、ホント子供だった
三人とも、今より子供だったんだ




Side K
のっちに会える…
そう思うだけで、嬉しくてソワソワして、妙にドキドキして…
久しぶりに来たリニアの部屋は、何も変わってないのにドキドキ、ドキドキ…
のっちの顔を見れば治まると思って、のっちと顔を合わせた途端

「ゆかちゃん!誕生日おめでとう!」
私の心は切なくなった

のっちが伸ばした両手は見えない壁に遮られて、
「ありがとう、のっち…」
のっちの右手に自分の掌を重ねても、のっちの温もりを感じられない
また切ない…

ずっとこの部屋にいるから、プレゼントなんて気にしなくても良いのに
のっちは「何かしてほしいことある?」って聞いてくれて

だったら、私が望むのは…

「なら、、のっちは踊って?ゆか、のっちのダンスめっちゃ好きじゃけぇ」

「うん!」

一番近くで見ていたのっちのダンス
のっちが一番楽しそうに輝いている、その姿を失いたくないから

だってきっと、ヤスタカ様の言葉は…


『キミには、この世界より大切なものがあるか?』


『リニア』は『世界』を愛さなくちゃいけないってことだったんだ

私が『リニア』でいられなくなったのは、、
のっちを、独りにしてしまったのは、、

私のせい、だったんだ


あ〜ちゃんの部屋に戻った私は泣いた
理由も言わずに、ただ泣く私をあ〜ちゃんは抱きしめてくれて、そのまま朝まで一緒に眠ってくれた

心配してくれたあ〜ちゃんに、私は大丈夫だよって、自分の想いを隠した
だって、そうしないと今度こそ、色んなものを失ってしまうって思ったから

でも、、
そんなこと、、なかったのにね?


—つづく—





最終更新:2010年11月06日 15:34