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夜、携帯を開くとメールが一件。

『まだ仕事終わらない。先寝てて』

のっちからのメールは最近いつもこれ。
先寝てて、ってかご飯は!?
毎日作って待ってる自分がアホらしくなってきた。

『ご飯あるよ。チンして食べてね。おやすみ』


帰ってきてからというものの、のっちは仕事人間で。
朝はゆかが早いし、夜はのっちが遅いしで。
すれ違ってばっかり。
でも、だから、たまの休みがめっちゃ幸せー!
なんてのも、もう半年以上前の記憶。
待ち続けるのもいい加減疲れた。
ってか飽きた。
もーいーや。寝よ。







「ただいまー」


玄関から聞こえたのっちの声に、思わず振り向きそうになる。
声、元気ない。
絶対疲れてる。
おかえりーって抱きしめたい。
おつかれーっていーこいーこしてあげたい。


けど、我慢。
今にも起き上がりそうな体をベッドに縛り付ける。
寝たフリとかー。ゆかも子供だわ。
でもだってー。ゆかだって待ってばっか嫌なんだもん。


「ゆか、寝ちゃった、か…。」


あー、声。可愛いーよー。
のっちー、ぎゅってしたいよー。
けど、若干本当に眠いしな。


キッチンでごそごそやってる間も、
シャワーを浴びてる間も、
ゆかはベッドにうずくまって。
早くベッドこないかなー。
寝たフリしながら抱きついて寝よー。


目をつむって、
視覚以外の感覚を全て尖らせて。
のっちの体温を感じると、途端に眠くなった。
ゆかを安心させる温度。
子供みたいにその温度に包み込まれて眠る。幸せだ。


そっと頭に触れる優しい手の平に気付いたのは、
幸せな温度に溶けだした頃。
優しい手つきで何度も何度もゆかの髪を撫でて、


「ごめん、ね、、」


手の平から伝わる優しい温度とは不釣り合いな声でのっちが言った。
ゆかの胸はグッてなって、
つむってるはずの目があつくなって、
ばれないように、寝返りをうった。
そしたらのっちはゆっくり隣に忍び込んで、
背中から抱きしめた。
その温度が、体が、のっちの腕が。
どれも優しくて、ゆかを安心させるから、
またゆかの胸はグッてなった。






ゆかの髪の毛に顔をうずめて、
何かを確認するかのように、思い切り息を吸い込んで。


「いつも待たせてばっかで、ごめん。」


抱きしめる腕が強くなった。


ゆかの体すべてがのっちに寄り掛かっていて、
のっちはそれを全部受け止めていて。
悔しくて、ゆかはまた、寝返りをうった。


反転した世界は、素晴らしくあったかくて、優しくて。
思わず見たくなって、抱きしめたくなって、
ゆかは目をあけた。
そしたら、あつく留まっていたナニカが落ちた。
のっちはそれを、すくいとった。


「お、かえり、」
ゆかの声は震えていて、
「ただいま」
のっちの声は優しかった。



「…さみしかった」
のっちのあったかい手の平は、簡単にゆかの頬を拭った。

「うん、ごめん」
のっちの長い腕は、簡単にゆかを捕まえた。


「いいよ。帰ってきてくれれば。それでいい。」
のっちの優しいキスは、簡単にゆかをさらっていった。


「帰ってくるよ。もうゆか一人になんてできない」
反転した視界に写るのっちの笑顔は、簡単にゆかを安心させた。


「おやすみ」
「うん、おやすみ」



抱き合って眠って。
朝になって離れて。
夜になって帰ってこなくて。
でも、
それでもゆか、幸せだ。
また、もっと深い夜になったら、
抱き合って、眠るんだから。




end






最終更新:2010年11月06日 15:36