Side N
ゆかちゃんがこの部屋に来た日から、なんだかおかしい
たまに覚醒が安定しなくなる
今も不安定
「のっちちゃんストップ」
「え?」
エネルギーを転送するために付けているヘッドフォン
実際、マイクを通した声も聞こえるようになっている
踊っている最中は、外からだと集中してて聞こえてないことがほとんどだから、それを使用している
で、さっきストップの声を掛けてきたのは
「のっちちゃん、ちょっと休んで話そっか」
「え、でも、ちゃんと予定分ダンスせんと、、」
「一日くらい平気よぉ。今の時点で予定より多いんだからw」
「そぅ、なんですか?」
「もちろんよぅ。先生が言うんだから、疑わないのー」
「そ、ですね」
「分かったら、こっち来て座った座ったw」
「はい」
壁を挟んで椅子に座る
外で座っているのは、ミキコ先生
リニア候補の時からあたしたちにダンスを教えてくれてて、リニアになってからもこうやって様子をみてくれてる
先生もリニアの血を受け継いでいて、リニアのダンスについても結構詳しくて、それを役立ててこの部屋で仕えている
すごく親しみやすくて、候補生の子たちからも人気があった
「のっちちゃん、なんか心境の変化でもあった?」
「え、いえ、別に」
自分で思い当たる節が無いわけじゃないけど、何て言ったら良いのか分からない
「んー、じゃあ、何で覚醒が不安定になると思う?」
「先生、理由知っとるん?」
「まぁ、一応リニアについてなら、大体知ってるつもりだけどw」
「じゃあ、ゆかちゃんがリニアじゃなくなった理由も?」
「、、そうね。ゆかちゃんの時は、ココに居てあげられなかったからハッキリとは言えないけど…」
「ゆかちゃんは知ってるん?」
「言ってはいないけど、、去年のゆかちゃんの誕生日に二人が話してるの聞いて、知ってそうだとは思ったけど」
「ゆかちゃんが、ココに来た日?」
「あなたに『この世界が好き?』って聞いてたでしょ?」
「うん」
「それで、もしかして気付いたのかなって」
「、、そうなんじゃ」
でもゆかちゃんは、あたしに理由を話してはくれなかった
それがちょっぴり、悲しかった
「『リニア』のエネルギーはね?覚醒してる時の『リニア』自身の想いが影響してくるの。だから、今ののっちちゃんの心の中に、何があるのか…自分で分かる?」
「心の、中?」
「そう。ちょっと思い出してみて?覚醒が不安定になる時、何か共通してるモノがあるんじゃない?」
先生の言葉に、目を閉じてみると
そこに浮かんできたのは、、
「ゆ、か、ちゃん…」
そうだ
ゆかちゃんと会ったあの日から、ゆかちゃんのコトを思い出すと胸の辺りがぐってなって…
「ゆかちゃんがいなくなって、寂しいんだ?」
「…ぅん」
でも、ただ寂しいだけじゃない
「もしかして、のっちちゃんにとって、凄く大切なのかな?」
「たぶん…」
そういうことなんだと思った
だって、、同じように大好きだと思ってた、あ〜ちゃんのコトを考える時とは、違ったから
「そっか、、じゃあ、ゆかちゃんのコト想う時、それを世界を想う気持ちに変えられる?」
「世界を、想う?」
「そう。それがエネルギーを生み出すうえで、一番重要な想いだから」
「想い…」
「ゆかちゃんが居る世界を想うこと、、できるよね?」
「…はい。大丈夫です」
リニアの想いが、世界のエネルギーになる
リニアになった頃は、ダンス自体が楽しくて、ほとんど何も考えずに踊っていた
だから、、リニアは世界のために生まれ、世界のために生きる
この時ようやく、リニアが負う役割を理解したんだよね
そして、初めて知った事実
「それと、何より楽しんでほしいな。ゆかちゃんと違って、のっちちゃんがリニアじゃなくなることは、多分ないから」
「え、なんで?」
「あのね?」
ゆかちゃんとあたしの違うところ
あたしはこの時代の『リニア』として生まれてきたけど
ゆかちゃんは元々違って、あたしの力に『リニア』の血が反応して、力が引き出されたらしい
だから、想いの影響を大きく受けて、『リニア』ではなくなったんじゃないかって
先生は、そう推論したみたい
そしてあたしの力は、『リニア』は一人という、ヤスタカ様の夢見をも変えてしまった
『リニア』の力の凄さを実感させられた話だった
「…だから、のっちちゃんは、最期までリニアとして生きることになるわ…。まだ13歳ののっちちゃんに頼むことしか出来ないなんて、なんだか情けないんだけどw」
「この世界を、好きでいてね?」
「うん」
嫌いになんてなるわけない、、
ゆかちゃんが居るんだから
「良かったw、、あ、そうだ」
「?」
先生は新しい仕事が入っていて、今月でこのお城の仕事を止めるんだって
ずっと、一緒にいてくれたから、ちょっと、、心細いな…
「でも、、のっちちゃんは、独りじゃないから。王も王妃も、ヤスタカ様もあなたを気にかけておられるわ?だから、何かあったら遠慮せずに言うのよ?」
「うん」
でも、がんばらなきゃ
「、、ふぅ。さて、今日はこれからどうしようか?このままおしゃべりしちゃう?w」
「いえ、、踊りますw」
「あら、そう?せっかく、根掘り葉掘り聞こうかと思ったのに」
「え?何を?」
「ん?ゆかちゃんのどこを好きになったのかな〜、とかぁ?」
「なっ///」
「あらぁ、のっちちゃん可愛いわねぇw」
「お!踊るけぇ!」
改めて言われると恥しくて、あたしは立って先生に背を向け、いつもの定位置へとズンズン歩いた
その場所でヘッドフォンを付け直して、目を閉じて大きく深呼吸…
浮かぶのは、ゆかちゃんの笑顔
この想いを、力に…っ
一気に目を開くと共に
『覚醒』
同時にヘッドフォンから「ふぅ〜w」っていう先生の感嘆の声も聞こえてきた
そして、曲が流れる
あたしは・・・『リニア』だ
—つづく—
最終更新:2010年11月06日 15:42