「なーかーたーくーん!あーそーびーまーしょー!!」
あたしは中田くんちのカメラ付きのインターホンの前にいる。
ほどなくすると、玄関の鍵が開く音が聞こえた。
「近所迷惑・・・」
「だって、そうでもしないと入れてくれないじゃんw」
ムスっとした顔の中田くんは渋々あたしを部屋に入れてくれた。
「あれ?おばさんは?」
「しんね。買い物じゃね?」
「そっかw」
「てか、大本さん何しにきたの?俺、寝てたんだけど」
「用がなきゃ来ちゃいけないの?」
「・・・それってキミが言う台詞じゃないよね、、、」
「、、、うるさいなー。これもって来たんだよ!」
あたしはあ〜ちゃんに頼まれたプリントを渡した。
中田くんとあたしは10年来の友人。
家が近くて、お互いのお母さんが友達同士だから、子供たちも仲良くなった。
10年間一緒にいるけど、お互いに”中田くん””大本さん”とよそよそしく呼ぶ。
きっと変だと思われるけど、あたしたちはそれが一番しっくりくるんだよね。
逆に中田くんに、のっちとか彩乃ちゃんって呼ばれたら気持ち悪くて返事なんてしないよw
「中田くん、ガッコ来なよ〜」
「俺は出席日数ギリギリでいいの!」
「えー、そんなこと言わないで。ガッコ楽しいよ?」
「この前まで行きたくないって言ってたのはどこのどいつだよ?」
「だって。担任またあ〜ちゃんだよ?」
「あぁ・・・。あのおせっかいの人ね」
「おせっかいって言うなよー。バカ!あんた、あ〜ちゃんが担任じゃなかったら、留年してたよ?」
「はいはい」
「ねぇ、中田くん」
「あ」
「樫野有香ちゃんって知ってる?」
「学校にほとんど来てない俺に聞くの?」
「だよね〜」
「なんだよ。その人がどうしたんだよ」
「でへへ。その子と友達になったんだーw」
「ふーん」
「えっ!?それだけ?」
中田くんはあたしの話に飽きたのか、ベッドに潜り込んでしまった。
「ちょっとー、寝ないでよ〜」
あたしはまだ話を聞いてほしかったから、中田くんの体を揺すった。
「あんだよ!!寝かせろよ!!」
「まーた、DJやってたんでしょ?よくおばさん怒らないね」
「うちは放任主義ですから」
「そんなことよりも、その樫野さんてね。めっちゃ可愛いんだよw」
「あーあー。その人と友達になったから学校が楽しくなったのね」
「おー!!なんでわかったの?さすが10年あたしの友達だけあるねw」
「いやいや。今の話の流れだったら、誰だってわかるだろ!」
「そう?」
「そうだよ!てか、マジでいい加減寝かせろ!」
中田くんは寝ちゃったし、あたしは特にすることもないから自分ちに帰ることにした。
でも家にいてもなんもすることない。
あっそうだ!
ノート写ししよう。
せっかくかっしーがコピーしてくれたんだもん。
って、あれ?
やっべー・・・鞄に入ってない。
机に入れっぱだよ。
うー、めんどくさいけど学校に戻ろう。
帰宅部のあたしにとって放課後の学校の雰囲気は新鮮。
夕暮れの教室はなんだか物寂しい。
あたしはすぐコピーを持って教室を出た。
下駄箱で上履きからローファーに履き替える。
「あ」
「あ!!」
偶然にもかっしーと会った。
わっ。超嬉しい。
「なんでいんの?帰ったんじゃないの?」
「あ・・・忘れ物取りに」
「ふーん」
「かっしーは?」
「部活だけど」
「えっ?部活入ってたの?」
「あんたが知らんだけじゃろ。一年ときから入ってるけど」
「なに部?」
「漫研」
「へー。かっしー、漫画好きなんだ。あたしも大好きw」
「ふーん。てか、なんでまた上履き履くのよ?」
「えーw一緒に帰ろうかなって思ってw」
「嫌だよ。だって、まだゆか帰らんもん」
「じゃあ終わるまで待ってるw」
「待たなくていい」
「えー。なんで?」
「なんででも!」
かっしーはあたしを置いて階段を駆け上がっていってしまった。
下駄箱に取り残されたあたしはどうしたらいいのでしょう。
ただ一緒に帰ろうって言っただけなのに、あんなに拒絶しなくてもいいじゃないか。
シュンと肩を落としてローファーに履き替えようとしたら声を掛けられた。
「のっち?」
「あっ、あ〜ちゃん」
「帰るん?」
「はい」
「10分くらい待ってくれれば、車で送ってあげようか?」
「えっ!?いいんですか?」
「ええよ〜。もう暗くなってきてるし。うちの生徒に何かあったら大変じゃーw」
「ありがとうございまーすw」
やった。
本当はかっしーと帰りたかったけど、あ〜ちゃんに送ってもらえる。
駐車場であ〜ちゃんを待ってるとだんだんと暗くなっていくのがわかる。
4月なのに、夜はまだ肌寒い。
セーターとブレザー着てても風が吹くと身体が震える。
ボケーっと手すりに座ってたら人の気配を感じた。
「あ!!」
「あ」
かっしーだ。
また偶然?
「なんでいんの?帰ったんじゃないの?」
さっき言われたセリフをまた言われた。
「あ〜ちゃんが車で送っててくれるって言ったから、待ってるんだw」
「・・・マジで」
かっしーは何故か苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あんた、バスで帰りんさいよ!」
「えぇ!?・・・あぁ!一緒に帰ってくれるの?」
「帰らん!あんた、ひとりで帰りさいよ!」
「なんでよ〜」
「・・・ゆかも送っててもらうんよ」
「あ〜ちゃんに?」
「そうよ。正確にはあやちゃんがうちに来るんだけど」
「だからさっき一緒に帰れないって言ったんだ?そう言ってくれればよかったのにw」
「うるさいなー!のっちには関係ないじゃん!」
かっしーに怒鳴られて雰囲気が悪くなったところであ〜ちゃんが現れた。
「おーい!お待たせ〜。・・・ん?どうしたん?」
「・・・なんでもないよ。はやく、行こ。あやちゃん」
「そう?んじゃ、のっちも乗っちゃって」
「あ・・・やっぱり。バスで帰ります」
これ以上かっしーを怒らせなくないから、あ〜ちゃんにそう言った。
「遠慮しなくてええんよ?どうせ通り道なんだしw」
「や・・・。あっ!本屋寄ろうと思ってたんです」
「・・・そっか。じゃあ気ぃつけて帰りんさいよ」
「はい。さよなら」
あ〜ちゃんに軽く会釈して、次にとなりのかっしーをチラ見する。
「ばいばい」
かっしーは無表情であたしに手を振った。
そしてすぐに車の助手席に乗り込んでしまった。
「・・・バイバイ」
あたしもそれに応えた。
今日はいつもより少し寂しい帰り道になった気がする。
最終更新:2010年11月06日 15:54