Side N
王が来てくれてから1ヵ月後、、
原因不明の病に王が倒れ、しばらく後に王妃も同じ病で倒れた

王と王妃の側について、今まで三人で話していた時間にあ〜ちゃんが居ない日ができた
それでも居てくれる時、あ〜ちゃんの表情は明らかに不安が溢れているのに、「大丈夫」って言って笑顔を見せてくれる

今日はあ〜ちゃんがいない日

「ねぇ、ゆかちゃん」
「ん?」
「あ〜ちゃん、大丈夫かな?」
「そりゃ、辛いじゃろ」
「じゃよね、、。あ〜ちゃんお父さんとお母さんこと、めっちゃ大好きじゃもんね」
「ぅん、、」

あ〜ちゃんに元気がないと、あたしたちの気持ちも浮かない

「あの、さ」
「ん?」
「今度からさ。あ〜ちゃんが二人んトコ行く時さ。ゆかちゃんも一緒に行ってあげてくれんかな?」
「え、でも、そしたらのっちが、」
「のっちは!大丈夫じゃけぇ、、ちゃんとあ〜ちゃんとゆかちゃんが側にいてくれるけぇw」
ホラ!って、二人がくれたぬいぐるみをゆかちゃんに見せた

「のっち、、」
「あ〜ちゃんの辛い時に、側におれるように…ね?今は、あ〜ちゃんを一人にしたらいけんよ。少しでも永く、側にいてあげてよ」
「…分かった」
「うんwヨロシクね?」

どんなに医療が進んでいて、技術者がいても、病気がなくなることはない
そして、すべてを治すことも出来ない
リニアのエネルギーも、この時ばかりは役に立たないんだ
悔しいなぁ…

この時点で、ヤスタカ様から二人の病を治す術がないと、教えてもらっていた
そして、命もそんなに永くない、、ということも…

だから、ゆかちゃんはあたしなんかより、あ〜ちゃんの側にいてあげなくちゃ

でも、そのお願いをしたことで、じわじわ自分の心を締めだしていたんだ




Side K
ミキコ先生がお城の仕事を止めるって聞いて
ますますのっちが独りになっちゃうと思って、今まで以上に三人の時間を大切にした

あ〜ちゃんは13歳になってから、これから国を治める為に必要なことを教わり始めて
難しい話を聞いたり、今まであ〜ちゃんが出席していなかった話し合いとか交流にも、王は積極的にあ〜ちゃんを参加させるようになっていた

だから、あ〜ちゃんが疲れてる時もあるけど、のっちとの時間も忘れずにとってくれて、凄く嬉しかったな
だけど…

王と王妃が倒れて、事態は一変した

あ〜ちゃんにとって、自慢で大好きなご両親
ましてや、この国を治めている王が…
その二人が倒れたとなれば、ただ事じゃない

三人での時間はぐんと減って、、でも、私は変わらずのっちとの時間を欠かさなかった
のっちを独りにしたくなかったから
あ〜ちゃんがいなくても、部屋に入っても良いって許可を貰っていたから、毎日のっちと画面の前で顔を合わせた
なのに、のっちは私に「あ〜ちゃんの側にいてあげて」って、、
「今、あ〜ちゃんを一人にしちゃいけんよ」って、、

自分だって、一人が嫌なくせに…
そう思うと心がぎゅっとなったけど、、
確かに、二人の状態を考えたら、今優先するべきなのはあ〜ちゃんのこと
だから、のっちのお願いに頷くしかなかった




そして翌日

「ゆかちゃん、のっちとお話せんでもええの?」
隣を歩く私に、不思議そうに聞いてくるあ〜ちゃん
「うん、のっちにあ〜ちゃんと一緒にいてあげてって言われたけぇ」
「そんなに、心配せんでもええのにぃ、、」
なんて、苦笑いのあ〜ちゃん

そんなあ〜ちゃんの手をそっと掴まえて
「我慢せんで良いけぇ、ね?」
あ〜ちゃんの顔を見ると、やっぱり我慢してたみたいで、ぐっと表情が歪んで涙を流したあ〜ちゃん

「ゆがぢゃんっ、、っ」

きっと声を上げて泣きたいんだろうけど、ココは廊下で、しばらく歩けば二人がいる寝室
聞こえないように、一生懸命声を押し殺してる
そんなあ〜ちゃんを抱きしめて、背中を撫でてあげる

「っ、父様と、母様、、死んじゃうの、やだぁっ」
「ぅん」
「やだよぅ、、」
「、、ぅん」

私は無力で、ただ頷いてあげることしか出来なくて、撫でてあげることしかできなくて…
きっと寂しがってるのっちを想って、抱きしめることしか出来なくて…
本当に側に居ることしか、出来なくて…

いずれ訪れるその時にも、きっとこれ以上のことは出来ない
本当に、無力だ


しかも、どんどんのっちとの時間も、なんだか噛み合わなくて…

「のっち?」

リニアの部屋に繋げても、のっちの姿が見当たらないことが多くなった
その代わりに、のっちが描いた絵とメッセージが、カメラに映されてた
見れる時は、あ〜ちゃんと一緒に見て、のっち独特のメッセージに目頭が熱くなるようなものもあって、、
あ〜ちゃんは、ヤスタカ様にお願いして、その紙を持ってきて貰って、何度も読み返してたっけ

もちろん、私たちがいない日の分も欠かさず書いていたみたいで、その枚数は1か月分くらい

でも、その映されているメッセージの向こうでのっちは、寂しがっていたんだよね?


私は、どうしたら良かったんだろう?


—つづく—






最終更新:2010年11月06日 16:03