sideN
「じゃあ、また明日」
「うん、バイバーイ」
大学の正門で彩と別れて向かうのは、妹の病院。というより、うちの病院。
最近は、なんでか知らないけど、そこに向かう足取りがよくいうことをきく。嫌がりもせず。自分でも驚いてる。
どうなんだろう。別に、何か心変わりがあるわけでもないのに。どういうわけ、か。
でも、ま、単純に、心配、だし。
妹、だから。とか、よくわかんないけど、別に認めていないわけじゃないし。
姉を、あ〜ちゃんを、取られた、とか。そういうわけでもないし。
自分が、姉になる、とか。そういうのに、劣等感を抱いてるわけじゃ、ない。
ほんと、ただ単純に、心配で。
それで、ただ単純に、早くよくなって、と。願うばかりだ。
向かう足取りは、いうことをきく、けど。
そりゃ、そうなんだよ。
やっぱり、心配、だし、ね。
sideA
“のっち、いつ来るかなぁ?”
無邪気な顔で言う妹の顔を、真正面から見られないのは、なんでだろう?
嬉しそうに、のっちのことを思い出す妹を見ると、淋しくなるのは、なんでだろう?
あの妹が、あんな荒れていた妹が、ゆかのお見舞いに来るようになって。少なからず、私たちは、変わった。
私は、よく、わからなくなった。
ゆかのこと、想う気持ちが、何なのかわからない焦りと、苛立ち。
のっちのこと、正すことが、私にはできなかった悔しさと、ふがいなさ。
両方とも、淋しい。二人のことを想うと、最近は、どっちも、近いのに遠い気がして。淋しくなって、自問自答を繰り返しては、抜け出せないでいる。
でも、それでも、、、
「お姉ちゃん、いつもありがとね」
この子の笑顔を見ると、
泣きそうになると同時に、
強くなれるのは、なんでだろう?
sideY
入院生活が思いの外辛くなかったのは、考えなくてもすぐにわかった。
あんなにゆかに冷たかったのっちが、
あんなにゆかに興味のなかったのっちが、
会いに来てくれて、心配してくれて、アイス食べる?って聞いてくれて。
お姉ちゃんらしいことなんか、ひとつもしてくれなかったくせに、最近優しくて。嬉しんだけど、困ってる。
ゆかだけに優しんだ、なんて。
勝手に勘違いして。本当のお姉ちゃんじゃないのなら、それをゆかが知ってるって知ったら。
のっちはどんな反応するんだろ?とか、そんなことばっかり考えちゃって、困ってる。
好きになった人は、お姉ちゃんでした。
なんて。今時ありえないほど笑える。
ドラマにもならないような恋だけど、
それでもゆかの、生きる糧、だよ。
最終更新:2010年11月06日 16:16