ヴィィ、ヴィィ、ヴィィ。
夜の11時過ぎ。
熱帯夜で寝れなくてベッドの上でウダウダしてたら携帯が震えた。
ディスプレイ画面を見ると『かっしー』って文字。
あたしはベッドから飛び起きて急いでボタンを押した。
『あ。のっち?』
『う、うん』
『起きてた?』
『うん』
あれ?
なんか普通に喋れてるよ?
『なにしてたん?』
『暑くて寝れないから、ベッドでゴロゴロしてた』
『ふーん。じゃあね』
『え』
プー、プー、プー・・・。
切られた。
これはきっとゆかちゃんのなんらかのサインだと思って、あたしは掛け直した。
『なによ』
『なによって、こっちのセリフだよ』
『・・・』
『なんかあったの?』
『なーんもないよ』
『じゃあ、なんで電話掛けてきたの?』
『寝てると思ってイタ電しただけ』
『ほんとにそれだけ?』
『・・・ゆか、今学校の裏の公園にいるんだ』
『え!?ひ、ひとりで?』
『そーだよ』
『あ、危ないじゃん。なんでそんなとこにいるの?』
『心配だったら、迎えに来てよ』
『・・・わかった』
今度はあたしから電話を切った。
そして自転車の鍵を持って玄関の扉を開けた。
なんでこんな夜中にひとりで公園なんているんだよ。
夏の夜なんて変な奴がウヨウヨいるってのに。
なんかあったら大変じゃん。
家の人はなにも言わないのかな。
そもそも、なんであたしに電話掛けてきたの?
あたしの足りない頭で一生懸命考えたけど、わからなかった。
そうこうしてるうちに公園に着いた。
自転車を思いっきり飛ばしたから汗ダラダラ。
薄暗い電灯の下のベンチにゆかちゃん発見。
「のっち!?」
ゆかちゃんは自分で呼んだくせに、あたしが来たことに驚いてる。
「ほんとに来たの?」
「来たよ。だって、ゆかちゃんが来いって言ったんじゃん」
「そうだけど、普通来る?」
「ゆかちゃんのためだったらどこでも行くよ!」
「・・・ねぇ、なんでゆかなの?」
またそれ?
「そんなん知らないよ!気付いたら好きになってたんだもん!!」
自転車をベンチの横に置いて、あたしはゆかちゃんの隣に座った。
ゆかちゃんに「飲む?」ってペットボトルのお茶を差し出されたから、あたしは「飲む」って言って飲んだ。
お茶はぬるかった。
それはゆかちゃんがここに長時間いた証拠。
「ゆかは自分が嫌いだったの」
「え?」
「毎日毎日なんの為に生きてるんだかわからんかったの」
「うん、、、」
「もうね、死んじゃいたいなーって、いつも思ってたの」
「うん」
「でもね、あやちゃんと出会ってね。死にたいって思わなくなったの。少しだけ自分が好きになったの」
「・・・うん」
「あやちゃんはゆかの人生を変えてくれた人なんよ」
「へー、、、」
「のっちにとってのゆかはそういう存在なの?」
あぁ、暑いな。
夜でもこんなに暑いってヤバくない?
地球おかしいでしょ。
風もぜんぜん吹かないし。
汗は止まること知らないし。
「ちょっと違うけど、ちょっと合ってる」
あ。
風がきた。
まるであたしに味方してくれてるみたい。
「あたしは死にたいって思ったことないけど、つまんない毎日を過ごしてた。でも、ゆかちゃんと知り合ってから、楽しい毎日になった」
「ゆかといると楽しいの?」
「めっちゃ楽しいよ」
「・・・のっちの気持ちは嬉しいけど、やっぱり応えられん、、、、ごめんなさい」
あ。
風が止んだ。
「待つよ」
「え?」
「ゆかちゃんがあたしを一番にしてくれるまで待つよ」
「なんよそれ」
「決めた!今、決めた!あたし待つ!!何年かかってもいいから、待ってるよ!」
「は?なに言ってるんよ。勝手に決めないでよ!」
中田くんに言ったら怒られるんだろうな。
『自分の気持ちを相手に押し付けてどうするんだよ』って。
だって、そうするしか方法がみつからないんだもん。
どうやって、ゆかちゃんを助け出すかなんてわかんないよ。
あたし頭よくないし。
待つの嫌いじゃないし。
こうするしか思いつかなかったんだもん。
しょうがないじゃん。
ゆかちゃんが17歳になってくれるまで待つよ!!
最終更新:2010年11月06日 16:24