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「いらっしゃーい」
「あ、こんばん、わー、、」


ガソリンを入れたらスタンドのおじさんが親切に色々教えてくれて、
引っ越してきたと言ったら、「じゃ車洗ってやる」と言い出した。夜、なのに。
だから今、ゆかは目の前にあった喫茶店で時間を潰そうと、お店のドアを開けた。
中は狭くて、でも小洒落てて、
こんな田舎で見つけた、ちょっと素敵な隠れ家的な。
コーヒーのいい匂い。あったかいオレンジのライト。
ちょうど誰かが帰った後みたいで、テーブルが一席だけあいていた。


「あの、ここ、いいですか?」
「あ、はいはい!ごめんねー、今片付けるから」


そういって出てきたマスターはけっこう渋くてかっこいい、かも?
席につくと、空から綺麗な星が見えた。
見て、気付いた。星、なんて。久しぶりに見た。
都会じゃ雲やビルに隠れて、埋もれて。まともに星なんか見ない。見えない。
綺麗だな。メグさんにも見せたいな。
ゆかは写メを撮って、すぐにメールを送った。





「いらっしゃい。何にします?」
マスターの声に振り向く。


「あ、じゃぁ、、ラテで」
「はい。かしこまりました」
「あ!あの!」
「はい?」
「濃いめで!お願いします!」
「!」
「え?、、と、、」
「あぁ、すいません! さっきそこに座ってた人も、まぁ、常連さんなんですけど。
いつもラテをダブルショットで召し上がるんで、、びっくりしちゃって」
「あー、そうなんですか?偶然、ですね」


お待ちください。と、マスターはカウンターの中に消えていった。
数分後、出てきたコーヒーは驚くほど美味しくて、この寂れた田舎街が、少しだけ好きになった。うん、悪くない。
ガソリンを満タンにして、帰って眠りについて、朝がきても、
恋人からのメールはなかったけれど。






最終更新:2010年11月06日 16:30