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『もしもし。ゆかちゃん?』
『なんよ?』

『ねぇ、花火大会いこうよ♪』
『あんた、待つんじゃなかったの?』

『うー、そうだけど。それとこれは別だよ〜』
『なにが別よ!』

『だからー、付き合うとかじゃなくてぇー。オトモダチとして一緒に行きませんか?』
『最近ののっち、イジワルでしつこいから嫌だ』

えー。
それって酷くね?

『イジワルもしないし、しつこくしないから。いこーよー。花火綺麗だよ〜』
『えー。どうしよっかな』

もったいぶるなよ〜。

『いーこーおーよー』
『えー・・・』

『行こうよ!行こうよ!行こうよ!行こうよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!』
『、、、っわかった!わかったわよ!行くわよ!行けばいいんでしょ!!』

『よっしゃ!!じゃあ、明日5時に駅前ね〜』
『はいはい』

翌日の午後5時の駅前。
ゆかちゃんは時間通りにちゃんと来てくれた。
あたしは絶対に遅れちゃいけないと思い、なんと1時間前から待っていた。
おかげですでに汗ビッチョリ。

「なんだ。浴衣じゃないんだ」
「は?」
「ゆかちゃんの浴衣姿見たかった」
「は?なに言ってるん」
ふん。そんなにムスっとしなくてもいいじゃんか。

花火がよく見えるスポットに行ってみると、すでに人だかり。
ビニールシートを敷いてお酒を呑んでる大学生っぽい人たち。
このくそ暑い中いちゃついてるカップル。
カキ氷をおいしそうに食べてる子供たち。

あたしたちはその中に混じって、暗くなるのを待った。




「ゆかちゃん。知ってる?」
「なにを?」
「この花火大会を一緒に見たカップルって幸せになるって話」
「へー。初めて聞いた」

だからゆかちゃんと来たかったんだ。
別にカップルじゃないけど、もしかしたらそのジンクスのご利益であわよくば付き合えたらなんて思ったんだ。
そんなこと口が裂けても言えないけどさ。

「あ。始まった」

広い夜空に大きい花火が咲き乱れる。

「すっごーーーい!!!」
ゆかちゃんは小さい子供みたいに大興奮。
さっきまでムスっとしてたのに花火がうち上がった瞬間からニコニコ顔。
まるで子供みたいだ。

「すっごいよ!ねぇ、のっち。すっごいよ!見た?今見た?」
ゆかちゃんは視線はずっと花火だけど、あたしのTシャツの袖をグイグイ引っ張ってる。
それがとてもくすぐったくて嬉しかった。
あたしは隣のゆかちゃんが興奮してるせいなのか、花火を見るのを疎かになってしまった。

「キャーーーー!!!」
フィナーレの連続花火で悲鳴を上げるゆかちゃん。
気付けば周りの人たちも同じように声を上げていた。
あたしはやっぱりフィナーレでも、Tシャツの袖を掴んでるゆかちゃんの手が邪魔してちゃんと見れてなかった。

「わーー!めっちゃドキドキしたww」
「ね。ドキドキした〜」
ゆかちゃんは花火でドキドキしたんだろうけど、あたしはゆかちゃんでドキドキしたんだよ。

「すごい人・・・」
花火が終わるとみんな一斉に駅へと向かうから一面人だかり。
肌と肌が密着するくらいの混み様。

「ゆかちゃん!」
あたしははぐれないようにゆかちゃんの手首を掴んだ。
「わっ!」
人ごみに流されそうになったゆかちゃんを引っ張る。

「ありがと」
「うん」
引っ張った拍子にゆかちゃんと密着する形になってしまった。

「ご、ごめん。汗でベトベトして気持ち悪いよね・・・」
「しょうがないじゃん。こんなに人がいるんだもん。ゆかも汗かいてるしw」

汗ばんだ腕と腕が引っ付きあう。
そこから体温が2℃ほど上がった気がした。




「のっち」
「ん?」
「放さなんでね」
「う、うん」

そんな間近でそんな事言わないでよ。
また体温が上がっちゃうじゃん。

あたしたちはくっ付きながら人ごみに流されながら駅に向かう。

「あ!」
急にゆかちゃんが大きな声を上げた。

「な、なに?」
「あやちゃんだ」
「え」
「あやちゃんがいた!」

そんな。

こんな人ごみの中で見つけたの?
あたしの視界には見当たらないけど。

「のっち!あやちゃんがいた!」
そんな事言われてもどうすりゃいいの。

「え?ゆかちゃん?」
ゆかちゃんは人の流れとは逆に行こうとしたから、それは危険だと思い掴んでた手の力を強めた。

「放して!」

え。
今さっき放さないでって言ったばっかじゃん。

「でも・・・。人がいっぱいいて危ないよ」
「大丈夫!!だから放して。あやちゃんとこ行ってくる」
「でも、、、」
ゆかちゃんはまたムスっとした顔して、あたしの手を振り払った。
そして人ごみの中へ消えていった。
あたしは流されてゆかちゃんとはぐれてしまった。

どんどんふたりの距離が離れていく。
あっという間に、ゆかちゃんの姿が見えなくなった。

本当にあ〜ちゃんがこの場所にいたんだろうか。
だとしたら見つけたゆかちゃんはそうとう目がいいってことだよね。
それとも”特別”なあ〜ちゃんだったから見つけられたのかな。

だとしたらこの場でゆかちゃんを見つけられないあたしってなんなんだろう。

振り払われた右手にはまだゆかちゃんの腕の感触が残ってる。





最終更新:2010年11月06日 16:31