あれから、ゆかはのっちのうちで過ごす時間が増えた。
だって、すごく心地よかったから。
前ほど、虚無感の発作に襲われることもなくなった。


「もうさぁ、一緒に暮らそうよ〜」
「ヤぁだよっ」


ほんとは、暮らしたかったよ。

けど、、けど、さ?


この環境は、のっちにとっては、よくないって。
わかってたから、、、

わかってたのに。


それは、ここ最近ののっちの調子からも明らかだ。


もともと、ぐだぐだするのが好きだって言うけれど
最近、なかなかベッドから抜け出せないのは、
そうじゃない、でしょ?


「のっち?」
「んー?」
「大丈夫?」
「うん、、、だいじょーぶよ」

そう答えつつ、大きな瞳は閉じられたまま。

ちょっと切りすぎた前髪を撫でる。
触れた額は、熱くて、少し汗ばんでいた。




「あたし、今日はもう、帰るね?」
「えっ、どうして?」
さっと開かれる瞳。
どうして、て、、、そんなの・・
「あたしがいないほうが、落ち着くだろうから」
すると

「やだ。帰らないで」


ゆかだって、そばにいたいよ。
心配だもん。でも、だから、、、

ゆかは、のっちを癒してはあげられない。


「ひとりは、さみしいよ」
「…」
「誰でもいいわけじゃないよ?」
「…」
「かっしーに、そばにいてほしい」

「…ほんと、に?」
「ん?」
「あたしでいいの?」
のっち、苦しめてるの、ゆかだよ?

「かっしーじゃなきゃ、やだよ」
「…」
「そばにいてくれる?」
「わかった」



そう答えると、ほんとに
すっごく嬉しそうに笑うんだもん。

のっちだって、きっと気付いてるはずなのに。
ゆかの“影響”だって。


なのに、すっごく幸せそうに笑うんだもん。

ゆかのことも、幸せにしてくれる笑顔で。

だから
甘えちゃったよ。


そばにいたかったから。

目の前まで迫ってる現実に目を瞑って
気付かないフリ、したんだ。


のっちのため?ゆかのため?


のっちのため。ゆかのため。





最終更新:2010年11月06日 17:12