今日はあ〜ちゃんの結婚式。
ていってもただの生徒のあたしなんかが招待されるはずなく、家でゴロゴロしてる。
当然家族になるゆかちゃんは参列してると思うけど。
ゆかちゃん、ちゃんと式に出てるのかな?
なんか、ゆかちゃんのこと考えてたら家でゴロゴロなんてしてらんないよ!
昨日式場の場所を教えてもらったんだ。
呼ばれてないけど、外で見るだけでもいいよね?
えぇーい!行っちゃえ!!
電車を乗り継いで1時間。
少し迷って到着した時はもう式は始まってるっぽかった。
招待状がないから入れない。
招待状がないから何時に終わるかわからない。
あたしはその辺でウロウロするしかなかった。
「のっち!?」
柵の向こうからあたしを呼ぶ声。
それはゆかちゃんの声だった。
「なにしに来たん?」
驚きを隠せないゆかちゃんが駆け寄ってきてくれた。
「えっと、、、。あの、、、えへへ」
その質問に上手く答えられなくてシドロモドロ。
「ここ招待された人しか入れんよ?」
「あ、、、うん」
柵越しに喋るのはなんか変な感じだ。
「あやちゃん、めっちゃキレイよw」
「え?」
「なん?あやちゃんの花嫁姿見にきたんじゃないん?」
「え?・・・あ。う、うん」
もちろんあ〜ちゃんのウエディングドレスは見たい。
けど、本当の理由はキミが心配だったから。とは、言えない。
「もうちょいで出てくるよ。待ってれば?」
「うん」
心配してきたものの、当のゆかちゃんはいつもどおりの冷静さ。
なんだか肩透かしって感じだよ。
あたしが柵の外で待ってると、式場の係りの人が気を利かせてくれて、内緒で敷地内に入れてくれた。
ちゃんと制服着てってよかった。
「例えばさ・・・」
「ん?」
「あやちゃんの元彼がさ、突然来て結婚式めちゃくちゃにして、あやちゃんを奪い去るってなったらおもしろいよねw」
「ゆかちゃん映画の見すぎw・・・そうなってほしいの?」
「んな訳ないじゃん。ゆか、そこまで捻くれてないもん」
「知ってる。ゆかちゃんは優しいよ」
「なんそれ?バカじゃないの?w」
ゆかちゃんが立ち上がったと同時に扉が開いて、中にいた人がワッと出てきた。
ウエディングドレスを着たあ〜ちゃんはキラキラしてて眩しかった。
ゆかちゃんのお兄さんを初めて見た。普通の人だった。
ブーケトスをしてる。
未婚の女の人たちが群がってる。
人だかりにいたあ〜ちゃんがあたしに気付いてくれた。
「のっち!?どしたん?」
「あっ・・・。すいません。来ちゃいました。もう帰ります」
「ええよ。ええよ。こういうところは人が多いほうが楽しいけぇw」
あ〜ちゃんは怒らずむしろ歓迎してくれた。
「あ。ご結婚おめでとうございます」
「ふふふ。ありがとうねw」
「ドレスめっちゃキレイです」
「えー!?キレイなんはドレスだけ〜?」
「あ!?先生もキレイですw」
「はは。ありがとw」
「うん。あやちゃん、めっちゃキレイ」
ゆかちゃん・・・。
「そろそろ、ゆかの子守役疲れたでしょ?」
「え?」
「これからはゆかじゃなくて、お兄ちゃんの面倒みてやってねw」
「ゆかちゃん・・・」
今日のゆかちゃんは、なんというか上手く言えないけど大人びてる感じ。
ゆかちゃんのその言葉に涙ぐむあ〜ちゃん。
「それにさ、今度からゆかは子守される方じゃなくて、する方だからw」
そう言って冷たい眼差しをあたしに向けるゆかちゃん。
「えぇ!?」
思わずマヌケな声を出してしまった。
あたしがいつゆかちゃんに迷惑かけました?
「ふふ。そうなんじゃw」
「うん。だからもう、ゆかの事は大丈夫だからw」
「わかったけぇ」
まっいっか。
ふたりが笑ってれば、それでいいや。
あ〜ちゃんはスッキリした幸せそうな顔で手を振ってくれた。
「で、、、のっち。もう帰るんでしょ?」
「うん」
「んじゃ、ゆかも一緒に帰ろうっとw」
「え!?帰っちゃっていいの?」
「いいの!」
歩き出すゆかちゃんの後を追いかける。
「ん!」て言って右手を差し出してきたゆかちゃん。
「え?」その手はなんですか?
「手ぇ」
「手?」
「手!!」
あぁ!そっか。
「はいw」
ギュっとその大きな右手を握った。
ヤバイよ。
これ、ヤバイって。
顔の筋肉が緩みっぱなしだよ。
「・・・なんで、ニヤニヤしてるん?キモイんですけどw」
「えぇ!?そりゃ、ニヤケちゃうってw」
「なんで?」
「だって、一番になったんだもんw」
「は?一番?なんの?」
「なんの?って、ね〜wゆかちゃんの中であたしが一番になったってことでしょ?」
「なんそれ?いつそうなったん?」
「えぇ!?いつって、今さっきじゃないの?」
「は?」
「だって、あ〜ちゃんにもう大丈夫とか、今度は子守する方とか、言ってたじゃん!!」
「そんなん言ったけ?」
「えぇ!?言ってたよぉぉ」
「ふふ。ごめんごめんw」
「ゆか、のっちのこと好きだよ」
もうなにこの人。
なんでそんなにサラっと言っちゃうの?
どんだけあたしを振り回せばいいの?
「でもね。のっちは二番のままなの」
「へ!?」
「ずーと、二番よ。永久番号w」
「な、なんでよ〜。じゃあ一番は誰なの?もしかして、まだあ〜ちゃん?」
「ちがーうw」
「じゃあ、誰?」
「タム」
誰それ?
「ふふ。のっちの眉毛ハノ字になっとるw」
あたしの眉間をツンツンして、ゆかちゃんはまた先に走り出してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
あたしは情けない声を出して、追いかける。
追いかける間、また中田くんに相談する日々が始まるのかと考えた。
まー、それもそれでいっか。
二番でも好きって言ってくれるゆかちゃんが好きだから。
「のっちぃぃ!はやくーーー!!」
まずは遠くであたしを呼ぶゆかちゃんにライバルの『タム』って奴の事聞き出さないとね。
— Fin —
最終更新:2010年11月06日 17:13