「頭、撫でてて?」
そうお願いされたけど、断った。

えぇ、どうしてぇ。
いいじゃん。けちー。

散々ごねられたけど、断った。

だって、きっと
触れないほうが、いいと思ったから。


「じゃぁ、さ」
「ん?」
「なんか話して」
「え」
「声を、聞かせて?」


話って言われても、なぁ。。
そんな楽しい話なんてないし。

「なんでもいいよ」
「なんでもって言われても…」
「じゃ、ちっさいころの話」

ちっさなころ、かぁ。
気乗りはしなかったけど、話した。
とてもつまらない話。
それでも、のっちは「うんうん」と聞いてくれた。

「ごめん、おもしろくないよね?」
「ん?そんなことないよ」
「そんなことあるよ」
「だって、かっしーのこと、知れて楽しい」

「・・・あのさぁ」
「んー?」
「どうして、あたしなの?」
「なにが?」
「どうして、あたしと一緒にいてくれるの?」


もっといい人、いっぱいいるでしょ?


「…コエが、聴こえたから」
「ん?」
「ココロのオト」
「…よく、わかんない」

うん、そだね。
あなたは、曖昧に微笑んだ。





「のっちね、仕事のせいか、なんかやたら音に敏感でさ」
「別に、ダメじゃないんだけど、まぁ、いい音ばっかじゃないから」
「ちょっとの“雑音”で頭イタクなったり、ね」

ぽつぽつと話続ける。


「初めて会ったとき、覚えてる?」
「うん」
「すっげー警戒してたでしょ?」
「あ、うん」
思い出し笑いを噛みしめる、あなた。
「なんか、『近づくなぁ!』てのが、ひしひしと伝わってきて」
「…なら、どうして?」
どうして、あたしにかまってきたの?

「うん、それでも微かに、やさしいさってか、、、
 んー、、、泣き出しそうなやわらかさ?そんなの感じて」
「…」
「知りたいって。そう思ったんだ」

すっと、腕が伸びてきて、ゆかの髪を撫でる。

「初めてだったんだよね。こんなにも、誰かが気になること」
ゆかも、だよ?
「その人の発する、オトが心地よかったのも」

瞬間、ゆかはのっちの腕の中にすっぽりとおさまって。


「シンクロしてんの」
「シンクロ?」
「うん。のっちとかっしーのオト。
 すごく、気持ちよく響きあってるんだよ?」

て、わかんないか、、、
そう、あなたは呟いた。


残念ながら、ゆかにはのっちが言う
音のシンクロってのは、わかんなかったけど


それでも、心地よさは同じように感じてたんだよ。


「だから、ずっと。。。



ずっと、そばにいるから。」



『そんなの、ムリだよ』

そのコトバは飲み込んだ。


信じてみたくなった。


ずっと一緒だなんていう、お伽噺、を


信じてみたくなったから。




最終更新:2010年11月06日 17:15