◆N-side◆
お弁当を洗って、お弁当のお礼と言っては何だけど、コンビニでお菓子とアイスを買った。そして、借りていたDVDを返しにいつものレンタルビデオ屋さんに寄った。
返すだけ、のつもりがついつい新作のコーナーに足が延びてしまう。大好きな海外ドラマの新巻が出ていた。あ〜ちゃんと映画館に見に行った映画もそこに並んでいた。
ついその時のことを思い出してニヤけていると、ほんの数メートル離れた所で、派手な音がした。
驚いて振り返ると、このお店の店員さんが派手にDVDやらを床に散らばせていた。かなりの数だから、積み重ね過ぎてバランスを崩してしまったんだろう。
のっちはその店員さんに駆け寄った。慌ててDVDを掻き集める店員さん。のっちもしゃがんで手伝った。
「あ、すいません!」
「いえ…大丈夫ですか?」
そう尋ね店員さんの顔を覗き込むと、ハッとした。超美人だ。整った綺麗な顔立ちにフワフワな茶髪、スラリと延びた手足とその長身はモデル顔負けのプロポーションだ。
こんな綺麗な人…いたっけ?しばらく見とれていると、その女性はDVDを抱えて立ち上がった。
足元はまだふらついていて危なっかしい。
「半分、持ちますよ?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
微笑む彼女に、心臓がドキリと高鳴った。ん?何で高鳴るんだろ。まぁ美人だけど、あ〜ちゃんには敵わんね。
◆
結局ドラマの新巻を借りて、店を出た。すると駐車場に、さっきの美女がいた。
「あ、…さっきの」
「さっきはありがとうございました」
今勤務を終えたんだろう、私服は大人っぽいワンピースで、ファッション雑誌から飛び出したモデルさんみたいに格好良い。
「えっと…いつから働いてるんですか…?」
「先週入ったばかりで、まだ新人なんです」
道理で初めて見るな、と。こんな美人、一度見たら忘れないだろうし。
ポタリ、とスーパー袋から滴る水滴が、足に落ちた。
「ヤバ!アイス溶けちゃう!」
アイスがあるって事、すっかり忘れてた。
「車乗って行きます?」
「え、そんな、結構です」
「でも、アイス…」
アイスはもうかなりヤバい状態だろう。でも走れば数分だし…。
だけど、彼女の瞳が何かを訴えて来たんだ。分からない、理由は分からない。だけど、気が付くと彼女の車に乗っていたんだ。
◆
「私、徳澤直子って言います」
「あ、大本彩乃です…」
「高校生?」
「はい高2です…」
「若いねー」
可愛くて機能的な車のフロントガラスに付いた初心者マーク。何故のっちは今この綺麗なお姉さんの車の助手席に居るんだろう。
隣で慣れた手付きで運転する直子さん。若いね、って…そんなに変わらないでしょ。
「えっと…、大学生ですか?」
「うん、この近くの女子大分かるかな?そこの2年生」
「て事は…」
「計算しないで、まだギリギリ十代だよ」
笑って言う直子さん。19歳かー大人だな。のっちも19になったら、こんな格好良い女の人になれてるかな?うーん無理だろうなぁ。
「彩乃ちゃん、この近くに住んでるの?」
彩乃ちゃんだなんて、なんか新鮮。なんか嬉しいな。
「家は反対です、あっちの方」
「えー結構近くかも。私、去年出来たマンションに一人暮らししてるんだ」
去年出来たマンション…。家から歩いて二分くらいの所に出来た綺麗なマンション。外観も中もおシャレで若い人に人気があるって言ってた。
なんて偶然、めちゃくちゃ近所じゃん。そっかぁーあそこに住んでるんだ。
しばらくすると、あ〜ちゃんの家のすぐ側まで来た。
「あ、ここで良いです」
「はーい」
直子さんは車を止めた。のっちは急いで降りて、頭を下げた。
「本当、ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそありがとうね」
扉を閉めると、運転席から笑顔で手を振る直子さん。八重歯が少し幼く見えて、可愛いなって見とれてしまった。
もう一度頭を下げ、のっちはあ〜ちゃんの家に向かった。何ドキドキしてるんだ。のっちには、あ〜ちゃんがいるじゃんか。
◆A-side◆
「おっそーい!」
あ〜ちゃんは叫んだ。息を切らしてやって来たのっちは、ごめんを連呼する。全く、『今から行く』のメールからどれだけ経ったと思っとるんよ。
「これ、あ〜ちゃんの好きなアイスとお菓子…」
「ありがとう…ってアイス、ドロドロやん」
どこで道草してたんだか。
「ごめんね、DVD返したり色々してたら…アイスが…」
「ふーん、まぁ良いや」
とにかくのっちに上がって貰って、上でゆっくり話を聞こうか。
「あ、お弁当ありがとう」
のっちは綺麗に洗ったお弁当を手渡す。
「凄く美味しかった」
笑顔ののっち。本当は食べてる姿を隣で見たかったんだけどな。
◆2-13:End◆
最終更新:2008年10月12日 21:48