好きだと言われて、悪い気はしない。それが、自分も好意を寄せているひとなら、尚更。
かしゆかも、のっちが好きだった。恋愛感情とか、そのような感情抜きでも、かしゆかは、のっちが好きだった。互いの恋愛に、深く突っ込んだりすることもなかったけれど、かしゆかは、何となくのっちに、恋人がいるのだろうな、とは思っていた。かしゆかの予想は見事的中した。とても可愛いお姫様みたいな女の子だった。
それでも、のっちは、かしゆかを好きだと言った。
かしゆかも、のっちが好きだった。
「なら、いいじゃん。ゆかちゃんも、のっちのことが好きならいいんじゃないの?」
かしゆかには、分からなかった。何故、のっちが、そんなにもかしゆかがいいのか。全く、わからなかった。
「ゆかは、」
最近、ずっと思っていたことがあった。かしゆかだって、自分の気持ちに嘘をつくことに、限界を感じていた。
彼女のことを、きらいになったわけではない。だいすきだ。安心する。彼女の声を聞いているだけで、守られているような気分になる。愛されている、と思う。
けれど、目の前のこのひとに感じる感情は、また、違った。
「これ以上のっちを好きになりたくない。」
はっきりと、告げた。
のっちの耳に届くように。のっちが、かしゆかのことを諦めてくれるように。サヨナラをすることは、あまりにも酷だったけれど、それが、最善の策だとかしゆかは信じていた。
「…うっわー…聞きたくなかった。」
かしゆかだって言いたくなかった。
「でも、しょうがないよね。」
ぽつりぽつり、静かに喋る低めの声を聞くのは、辛かった。
「それでも、のっちは、ゆかちゃんが好きだけど。」
のっちは、かしゆかの心に爆弾を落としていった。
何でゆかがいいの? あ〜ちゃんの方が可愛いじゃない? あ〜ちゃんの方がいいこでしょ? 付き合い長いんでしょ? あ〜ちゃんとのっちの絆に、ゆかは勝てる気がしないし、勝とうとも思わないよ? ゆかには恋人がいるよ。その人よりも、のっち、ゆかのことしあわせに出来る自信ある? 言っとくけど、ゆか愛されてるからね?
どれも、どれもどれも。のっちに聞くのは、恥ずかしすぎた。聞けなかった。自分が、のっちの戦略にまんまと引っかかってしまったみたいで、嫌だった。普段から、あしらって、のっちの前では強い自分を出してきたのに、呆気なく崩れていくことが、かしゆかは怖かった。
蒸し暑い夜、かしゆかは、そんなことを思った。
最終更新:2010年11月06日 18:00