暑い、暑い、熱い。
昼間から、今日は、日差しが強かった。照りつける太陽の光がジリリと肌を射す。かしゆかの首筋には、汗が滲む。
そんな日に、のっちと会う約束をしたのが不味かったのか、否か。
今夜は、熱帯夜になりそうだった。


「なに、」


掴まれた腕が、熱かった。
振りほどこうと思えば、出来た話だ。


「なに、じゃないよ。」


暑い、暑い、熱い。
腕の力は、強かった。


「ちょっ、と。」


迫ってくる身体を、押し飛ばすことだって、出来た。


陽は、とうに沈んだ。賑わう繁華街に、のっちとかしゆかは、紛れるようにいた。誰に見られているかわからないこの状況で、場所で、のっちはかしゆかとの距離を、一歩、詰めた。


「待って、」
「待たない。」


また、一歩、詰めた。
かしゆかの瞳に映る、のっちが、ぼやけた。


「誰か、来る…!」
「来ないよ。」


今夜は、熱帯夜になりそうだ。






最終更新:2010年11月06日 18:13