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◆A-side◆

「あれ〜携帯がない」
のっちが帰る直前になって、携帯が無いと言い出した。ポケットやらを探すが見つからない様子。
「あ〜ちゃん、ちょっとのっちの携帯にかけてみて」
「ん、」
あ〜ちゃんは携帯を取り出しのっちにダイヤル。プルルル…と呼び出している。
「呼び出しとる?」
「うん」
だけど音は家の何処からも聞こえない。のっちは「おかしいなー」なんて言いながらくまなく散策中。
「途中で落としたんじゃない?」
「えー最悪じゃん!」
こんなに暗いと外で見つけるのはかなり難しいだろう。のっちは青ざめている。
すると、ガチャ、と受話器から音が。
『もしもし?』
のっちの携帯に、知らない女の人が出た。
「あ、もしもし…」
『彩乃ちゃん?』
一気に混乱した。どういうこと?拾った人が出たのだとしたら、どうしてのっちの名前を知ってるの?
「あ〜ちゃん、どしたの?」
「知らん女の人が出た」
「え?代わって」
のっちは不思議そうな顔であ〜ちゃんから携帯を奪った。
「もしもし」
あ〜ちゃんは耳を近付けた。どういうことだ。一体誰なんだ。
『あー彩乃ちゃん?私、直子だけど…』


直子?誰?知り合い?
『車に忘れてったから、私が預かってるよ。今どこ?届けるよ?』
「あ、そんな良いです!今から取りに行きますから」
『ホント?じゃあ待ってるね』
…誰だよ。てゆーか車に忘れてったとか、意味が良く分からない…。
「あー良かった!」
電話を切って、のっちは胸を撫で下ろした。
「今の、誰?」
「直子さん、さっき知り合ったの」
「さっき知り合った人の車に乗ったの?」
「乗せてってくれるって言うから、甘えさせて貰って…」
「そんな知らん人にホイホイ付いてったらダメじゃろ!」
のっちは隙が多すぎる。いつも言ってるのに、本当に心配になる。
「直子さんは良い人だよ、悪い人じゃない」
「…どんな人なん?」
「大学2年生で、バイトしとって、一人暮らしで、それから…」
凄く曖昧なプロフィール。そーゆーのじゃなくて、人柄とかを知りたいんよ。
「とにかく、美人」
「ほー…」
あ〜ちゃんの知らん間に美人と仲良くなるなんて、許すまじ。のっちは美人に目が無いからね。
「良かったねー美人と仲良くなれて」
「…ヤキモチ?」
「違う、そんな可愛いのじゃなくて本気でキレとる」


そう言うと、のっちは困った顔をした。お姫様の機嫌を取るのも王子様の仕事じゃろ。
「…ごめん、のっちが好きなのは、あ〜ちゃんだけだから…」
「…うん」
「好きだよ?」
「うん…」
そんな自信無さ気に言わんでよ。キスの一つくらいしたらどうなん、王子様らしく。
「キス…したい、けど」
けど?けど何よ?
「ちゃあぽんには出来ないや」
そうか、すっかり忘れていた。今あ〜ちゃんはちゃあぽんと体が入れ替わってるんだ。
「残念じゃったねぇ」
「…して良いの?ちゃあぽんにキス」
「ダメに決まっとるじゃろ!」
あ〜ちゃんの体のちゃあぽんはお風呂に入ってる。あーあ、なんで入れ替わったのかなぁ。
あ〜ちゃんだって、キスしたいよ。

◆N-side◆

あ〜ちゃんの家を出て、直子さんの暮らすマンションに向かった。と言っても、のっちの家のすぐ近くなんだけど。
マンションの前まで来ると、直子さんが居た。
「彩乃ちゃん」
遠くから手を振る直子さん。その手にはのっちの携帯が握られていた。
「ありがとうございますっ」
「いーえ、どう致しまして」
あー良かった。外に落としてたらどうしようかと…。


「今度お礼します」
「良いよ、そんなの」
でも…と言い掛けた時、のっちのお腹が鳴った。そういえば、あ〜ちゃんにご飯食べてけばって言われたけど断ったんだっけ。
空気の読めない自分のお腹が恥ずかしい。顔が熱い。きっと真っ赤だ。
「ご飯、食べてく?」
小さく笑って、直子さんは言った。
「いや、そんな…」
「食べてってよ、一人でご飯食べても美味しくないから」
寂しそうな顔をしたから、のっちは断れなかった。なんだろ、のっちが言うのも何だけど…放って置けない気がしたんだ。


部屋はシンプルで大人っぽくて、大人の女な雰囲気が漂っていた。あ〜ちゃんの可愛い部屋とは対照的だ。
「もう出来るからね」
「あ、はい…」
「ふふっ、緊張してるの?」
そりゃあ、こんな綺麗なお姉さんの部屋に居るんだもん。しかも二人きりだし。緊張しない人なんて居ないよ。
「彩乃ちゃんって、可愛いね」
「え…」
「良く言われるでしょ」
可愛いは、あんまり言われない。可愛いって言うのはあ〜ちゃんみたいな子に言う物でしょ?
「じゃ格好良いって言われない?」
「あ、それはたまに…」
って自慢みたいだ。バカのっち。自分で言うなよ。


直子さんはニッコリ微笑んだ。なんか、心の中を見透かされてる気分だ。ドキドキする。あ〜ちゃんに対しての物とは違うドキドキ。
「お待たせ、」
直子さんがお皿を運ぶ。凄く美味しそうだ。
「凄い…料理、得意なんですか?」
「一人暮らしだからね、それなりにするよ」
「美味しそー」
匂いをクンクン嗅いだ。食欲が刺激される。あー良い匂い。
「子犬みたい、可愛いね」
まただ。また、心臓が高鳴った。その笑顔は反則だと思う。みんなイチコロだよ。
「じゃ、食べよっか」
「いただきます!」
「おかわりあるからね」
のっち、一人っ子だからかな。こーゆー優しいお姉さんに憧れる。こんなお姉ちゃんが居たらな。なんて、考えながらのっちはサラダのトマトを口に運んだ。

◆A-side◆

のっち、ご飯食べて行けば良かったのに。それに、泊まってけば良かったのに。
そんな毎日毎日外泊も出来ないか。あー見えて真面目だし。だけど、もっと一緒に居たかった。
ふと、さっきのっちの電話に出た女の人を思い出した。携帯取りに行くって言って、他に何も無いよね?心配だな。
のっちがくれたお菓子は、勿体なくて食べれなかった。

◆2-14:End◆






最終更新:2008年10月12日 21:53