甘ったるいこの部屋に来るのは、一体いつぶりだろう。
寂しそうにほったらかしにされていたこの鍵と、身体。無遠慮に部屋に侵入して、鼻いっぱいに広がる匂いを飲み込んで、胸に沈めた。
ゆかはね、あの日の自分が信じられなくて、違う!そうじゃない!なんて考えてみたり。だけど、うん、やっぱりあれは私だった、なんて納得してみたり。
体制を奪われて、負けた気がしたの。そんなの絶対嫌なのに。会いたくなるのも、会えないのも、全部嫌なの。
自分の気持ちが見えなくなるのは、ゆか、嫌なんだよ。
葛藤を吹き飛ばすように、玄関のドアを開けると、「んぁ、ゆかちゃ…」すぐに呼ばれる名前。それは紛れもなく私のもので、呼んだ声の持ち主も、紛れもなく、ゆかのもの。
耳を澄ませば安易に想像がつく。あーぁ。まったく。なにやってんの?ゆかのいないところで。盛りのついた、って、こーゆーことを言うんだね。
ねぇ、のっち?その指先はゆかじゃないよ。漏れる声も涙も唾液も、溢れてきそうな液体も感情も、ゆかがいるときにしなよ。もったいない。
「…のっち?」
部屋の扉を開いてたずねる。きっと私の顔はどろどろに歪んで、笑ってるんだろうな。
「ねぇねぇ今なにしてるの?」
絡んだ視線をそらして、照れながら。それでも性欲に勝てないこの子は、下唇を噛み締めて。
「…いじわ、る」
ちょっと、それ。煽るだけだって。
せめぎあったっていいことないよ。のっち、ゆかはね。それよりも、早くのっちに攻め込みたいんだ。
「ゆかちゃ、ん…おねがい…」
勝手だな。ゆかのいないところでドロドロによがってぐちゃぐちゃに濡らしてるくせに。
「はやくっ、、」
勝手だよ、のっち。そんな目でおねだりされたら、ゆかだっておかしくなるよ。
「のっち、えっちなんだぁ」
笑ってやる。恥ずかしそうに顔を歪めると思ったのに。
「ゆかちゃんの、せいだよ…」
「のっちもう我慢できない」
「ゆかちゃんはやくきもちくして?」
ばっかじゃないの。そんなの。そんなの。
「…どーなっても、知らないからね」
指先をするり。無遠慮に滑りこませて、もうすでに出来上がってる中を駆り立てる。長い腕が背中にまわって、のっちは「きもち、ぃ、」って声を漏らした。
そりゃそうだ。あんだけ我慢してた身体、ゆかで満たされて、気持ちくないはずがない。
舌をだすと、食いつくようにからめとって、唾液を流し込むとコクンとのっちの喉がなった。
のっちの中が、ぬるい。
よく、「中、あっつい」なんて言うけれど、そんなの嘘。
のっちの中はぐしゃっとしてて、ぬたっとしてて、そんでちょっと、ぬるい。
「んあっ、ゆかちゃ」
「ん?」
「…ん、も、」
「も?」
心臓を突き刺すように、下から上へ。
心臓を突き破るように、奥の奥の身体の中に。
「もっと?」
「ちが!も、無理!」
「ん、わかった」
のっち、ぬるい体温の中でどろどろによがって?
ゆかにだけ、その顔を見せて?
しなった身体を受け止めるベッド。
シーツに包まって、のっちが笑う。
「きもちかった」
「うん」
「ゆかちゃん、抱っこしてあげる」
長い腕がゆかを包むように抱きしめた。
ゆかの髪にキスをして、のっちは身体を縮めた。
「え?なに?寝るの?」
「へ?ん、うん。一緒に寝るの、いや?」
違う、そうじゃなくて!
「あたしぜんぜん眠たくないけど」
のっち?セックスはまだ終わってないよ?
END
最終更新:2010年11月07日 03:11