㈰
高校を卒業し、大学2年に進級できたあたしは都内の喫茶店に来ている。ここは、よくあ〜ちゃんとデートで足を運んでいた思い出の場所。
(久しぶりだな…ここに来るのも)
あ〜ちゃんと別れてから、もう1年が経った。
原因なんて些細な喧嘩だった。気付いたときにはもう遅くて、あたしの口から別れを切り出していた。
でも、この1年間であ〜ちゃんを忘れたことなんて一瞬たりともなかったんだ。
(相変わらず苦いや…)
1人で飲むコーヒーはいつもと同じ味のはずなのに、心がズキンと痛むほど苦く感じた。
あぁ、あの時はあ〜ちゃんがいたから甘く感じたのか、と理解するにはあまり時間はかからなかった。
気付くとザーっという音が外から聞こえてくる。
(夕立かな?)
ふと窓から外を見て、あたしはドキッとした。心臓がズキズキ締め付けられる。
忘れたはずの痛みが、急に速度を増して蘇ってきた。
そこにいたのは、前よりも大人びた格好をしたあ〜ちゃんだった。突然の夕立から逃れるように走っている。
あたしは飲みかけのコーヒーもそのままにして店を飛び出し、人混みの中を走り出した。
㈪
(早く、早く、もっと早く…!)
その背中を抱き締めたい。あ〜ちゃんの声が聞きたい。
今更どんな言葉をかければいいのか、何一つわかってもいないくせに。
あたしは無我夢中であ〜ちゃんを追いかけた。
あれからあたしは何が変わったのかな?
何か変われたのかな?
今のあたしは、あ〜ちゃんの目にどんな風に映るだろう。
色んな想いを馬鹿みたいに巡らせ、あの痛みと戦っていた。
あ〜ちゃんを愛した故の痛みが増していく。
あたしが流させた涙、今なら拭ってあげれるよ。
あたしがつけた傷、今なら癒してあげれる。
(でも…)
もう少し右手を伸ばせば手が届く。
だけど、あたしにはその資格はないのかもしれない。
いつの間にか止んでいた夕立の匂いが、あ〜ちゃんの背中を小さくさせていった。
最終更新:2008年10月12日 22:23