◆A-side◆
朝からのっちが変だ。凄い眠そうだし、ネクタイ適当だし、寝癖付いてるし、無駄に笑顔だし。なんか挙動不信だ。いつもだけど、今日はさらに酷い。
「のっち、昨日の夜、何時に寝たん?」
「うーん…12時くらいかな」
「電話かけたの、気付かんかったん?」
のっちは驚いた顔をして、少し青くなった。
「あー…ちょっとボーッとしてたから…」
「ふぅん」
なんかビクビクしてるよね?まさか隠し事してるとか?のっち隠し事しても分かりやすいからすぐバレるんだよね。
「心配になってメールしたんよ」
「え、嘘っ」
「ホント」
のっちは慌てて携帯を探す。いつも入れてる右のポケット。取り出して、中身をチェック。だが…。
「うわ、電池切れだ…」
「充電せんかったん?」
「え、あ、あ、うん」
…怪しいな。目を合わせると逸すし、ずっと目が泳いでる。
「さっきからのっち変だね」
ちゃあぽんが言った。おぉ妹よ、君も思ったか。
「へ、変じゃないよ、普通だよ」
のっち慌て気味。これはもう間違ないね。
「お姉ちゃんに言えない様な事でもしたんじゃないのー?」
カシャーン。のっちが携帯を落とした。あぁ、バカ。
「いいいい言えない様な事なんて、しししてないしっ」
噛み過ぎ噛み過ぎ。ちゃあぽん笑ってる。おかしいけど、やっぱり隠し事なんてして欲しくない。
「何?隠し事なんてしないでよ」
「え…だからしてないってば…」
のっち、バレバレですから。目泳ぎまくってるし。
「直子さんとか言う女の人と何かあったんじゃないの?」
「……無い…ぞ」
マジ?え、ちょっと待って。絶対あったんじゃん。何があったの?浮気…なんてしてないよね…。
「正直に言いんさい」
「…だから…何も…」
「別れたいん?」
「それはズルイよあ〜ちゃ〜んっ」
のっち涙目。情けない王子様だこと。ちゃあぽん目に涙を浮かべて、笑い堪えるのに必死。
てか、さっきから気になってたんだけど、のっちからいつもと違う匂いがする。
「まさか、その人の家に泊まったとか無いよね」
「なんで分かったの!?」
「そのまさかなの!?」
仰天するのっち、仰天するあ〜ちゃん。だけど、すぐにのっちは「しまった」と言った表情で青ざめた。あ〜ちゃんも段々と怒りが込み上げてきた。
携帯取りに行くだけとか言って、ちゃっかり綺麗なお姉さんに泊めて貰ってるなんて。最低。
しかも、のっちの首筋に嫌な物が見えた。紅い痕…嘘でしょ…?
「泊まっただけなの、泊まっただけで何も…っ」
「嘘つき」
自分でも驚くくらいの低い声だった。のっちがビクッと震える。
「これ、キスマークだよね?」
こんな状況なのに、自分は嫌に冷静だった。なんかもう、怒りを通り越して呆れた。
「っ!?」
のっちはバッと手で首を隠した。ほら、あ〜ちゃんに言えない様な事したんじゃん。
「違…、これは向こうが寝ぼけて…!」
「ふーん」
「のっちは…のっちは本当に何も…っ」
のっちの震える声。震える瞳。ちゃあぽんは静かに逃げた。そりゃ逃げたくなるわ。
「ねぇ信じてよ、あ〜ちゃん…」
「言い訳、もう終わり?」
「…言い訳なんかじゃ…」
のっち、あ〜ちゃん信じてたんだよ?絶対に裏切らないって信じてたのに。
「のっち」
あ〜ちゃんの事、もうどうでも良いんだ。もう…好きじゃなくなったんだ。これじゃ付き合ってる意味なんて無い。
こんな辛い思いをするくらいなら、のっちなんて好きになるんじゃなかった。
「浮気して、嘘付いて、最低だね」
首を隠していたのっちの手が、力無く落ちた。
◆2-19:End◆
最終更新:2008年10月12日 22:27