「お疲れさまでした〜」
ゲストとして呼ばれたラジオの収録が終わり、スタジオを出る。
あ〜ちゃんはすぐに家に帰るつもりで、かしゆかはぶらぶら買い物してくらしいから、今日はすぐにバラバラに別れることになった。
「また明日ね」
「じゃあねぇー」
「うん、ばいばーい」
2人に背を向けてビルが建ち並ぶ道を歩く。
午後の日射しが道路やらビルのガラスやらに反射してめちゃくちゃ暑い。かしゆかこんな中を買い物してんの?考えられん…。
うーうー唸りながら歩を進めてたら、突然後ろからあたしを呼ぶ少年みたいな声。
「あれ、のっちー」
振り返るとそこには、さっきまでスタジオで一緒にしゃべっていたあの人。
「あ、え、カエラさん?」
「のっちもこっちだったんだねぇ」
そう言いながらカエラさんがてけてけと隣に駆け寄ってくる。
「うわのっち汗ダラッダラだよ大丈夫?」
「いやもー暑くて…死にそうです…」
「あそうだ、さっき自販機でジュース買ったらあたり出て2本出てきたから1本あげるよ」
はい、と手渡されたペットボトルを額に当てる。
冷たい、たまらん。
「うーありがとうございます」
「ここ直射日光すごいからそこの公園でちょっと涼んでこーよ。ほんっとマジで死にそうな顔してるし」
そう言ってカエラさんは笑いながらあたしの手を引く。
あれよあれよといつの間にか公園へ引きずられて行った。
「うわ、涼しい」
公園の木陰のベンチに座ると、今までの暑さが嘘のようにひんやりした空気が流れていた。
「あーあっついっ」
手をうちわにしながらカエラさんがあたしの隣に座った。
ペットボトルを開けてぐびぐびと流し込む姿が男前だ。
あたしもさっきもらったジュースを開けて3分の1ぐらいを一気に飲む。
「あーーーうまいっ」
カエラさんの言い方がオヤジっぽくて何だかおかしくて、思わず吹き出して笑ってしまった。
つられてカエラさんも笑いだす。
ふと見たその笑った横顔がすごく綺麗で、いつものクセでじっと見つめてしまった。
カエラさんがあたしの視線に気付いてあたしを見返す。
あたしからじっと見つめてしまったので何となく目をそらせない。
どうしよう、と思って口を開きかけた瞬間。
「んぐ」
唇に軽くて柔らかい感触。
一瞬だけ近づいた短い眉と長いまつ毛。
ものの0.5秒の犯行だった。
「う、え?」
何が起きたかよく解らなかったけど、自分の顔が熱くなっていくことだけが解る。
あたしの顔を見てカエラさんが
「のっちかーわいいなぁ」
そう言って、あはははといつもの快活な笑い方で笑った。
「…こんな雰囲気でこんなこと聞くのもアレなんですけどカエラさん」
「ん?」
「…イカ食べました?」
「あ、ごめん」
おしまい
最終更新:2008年10月13日 07:24