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1

「片想いに効く本…」
コンビニの漫画コーナーの隅にそんなタイトルの本が並んでいた。のっちは少しためらい、周りをキョロキョロと見渡す。
誰かに見られると気まずい。特に同級生とか。放課後のコンビニで同じ学校の生徒に出くわす事は少なくない。
「…よし、」
周りに人が居ない事を確認して、のっちはその本を手に取った。本当は買いたいくらいだけど、さっき大好きな東京事変のニューアルバムを買ったばかりで財布は軽い。
その本を開いて目を通した。なんとも稚拙で、ふざけた内容。だが共感出来る部分もあった。悔しいけど、的を突いてる。
認めたくないけど、あたしがあ~ちゃんにメロメロで、あ~ちゃんがあたしに興味無いのは事実。端から見れば完璧過ぎる片想い。
のっちがその本に読み入っていると、背後から一つの影が近付いた。のっちはそれに気付かない。
「のっち、何読んどるの?」
「っ!」
驚いて、ビクッと体が跳ねた。振り返るとそこには、
「あ、あ~ちゃんっ」
完璧過ぎる片想いの相手は不思議そうな顔でのっちをまっすぐ見つめた。のっちは慌てて本を隠すが遅い。

2

「隠さんと見せてよ」
「別に面白い本やないけぇ」
「…どうせエッチな本でも見てたんじゃろ」
「ち違う!」
「なら見せんさい」
ほれ、と手を出すあ~ちゃん。これだけは見せる訳にはいかない。恥ずかし過ぎる。
「のっち、早う見せんさいよ」
「え、えっと…」
「早う!」
お姫様をこれ以上怒らせたくない。ほら、段々顔がムッとしてきた。情けないけど、あ~ちゃんにメロメロな自分は本当に立場が弱い。
「…はい」
そう言って本を差し出す。あ~ちゃんは、それで良いんよ、と満足そうに言って受け取る。あぁ、なんかもう…死にたい。
「…?片想いに効く本?何コレー。のっちダサ過ぎ」
「……」
否定できない。自分でも分かってる。他人が見ていて恥ずかしいくらい、こんな自分はダサい。
「片想いしとるんなら告白すれば良いんに」
「こっ、告白なんて出来ん…」
「なら気を引く様な事しんさいよ。新発売のピノを買ってあげるとか」
え。のっちはキョトンとしてあ~ちゃんを見た。お姫様はまだムッとしている。
「…うん、」
のっちはチラリとアイス売り場とあ~ちゃん交互に見る。

3

「…何見てるんよ」
「いやっ、別に…」
目を逸すのっち。見なければ良かったと後悔した。あ~ちゃんの頬がほんのり桃色に染まっていた。そして黒髪の隙間から覗く耳は真っ赤。
「そしたら…好きになってもらえるかな」
「多分ね」
「…多分て…、」
のっちの声は小さ過ぎてあ~ちゃんには届かない。のっちの気持ちも。そう考えると泣けてきた。
「大丈夫、多分大丈夫じゃけぇ」
「え…」
「相手もきっと、のっちを想っとるよ」
うわ、胸が苦しい。のっちはアイス売り場に向かって走った。走ったらいけんよ、と言うあ~ちゃんの声は、のっちの耳には届かなかった。


PM11:23◇かしゆか宅◇

「新作のネタは決まりじゃね」
PCに向かうかしゆかは新発売のピノを頬張りながらニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

―End―






最終更新:2008年10月10日 01:37