◇A-side◇
「いらっしゃい!」
「お邪魔しまーす」
少し早く来てしまったけど、のっちは笑顔で迎えてくれた。
「迎えに行ったのに」
「一人で来れるよ」
「…ふーん」
あ、ちょっとのっち拗ねた。迎えに来たかったんだね。でも雨だし、面倒だと思ったから。
「あ…てか、その…」
「ん?」
リビングに入ってすぐ、のっちが顔を赤らめて何か言いたげな表情。
「えっと…そのワンピース、可愛いね、に、似合っとる…うん」
本当に口下手だ。もっとスマートに褒めれんのか。まぁでも、嬉しいから良いか。
「あ〜ちゃんは…まぁ何着ても似合うけど…」
のっちは冷蔵庫を漁り出す。ミネラルウォーターを取り出しててガバガバ飲んだ。どんだけ飲んでんの。
「よし、じゃあ早速見よっか!」
…面白い子じゃね。
◇N-side◇
なんだか、昨日ゆかちゃんとこの家で色々あった事もあって妙に緊張していた。あ〜ちゃんとそんな事…したいけど出来ない。
ゆかちゃんがリードしてくれたから良かったものの、のっちヘタレチキンだし?自分からなんて到底無理。でも格好良くリードしたい気持ちはある。
実は映画は三本ある。今見ているヤツは、ギャグコメディーみたいな笑えるヤツ。さっきからあ〜ちゃん終止笑ってる。のっちも笑う。
残り二本は、アクション系の格好良いヤツと恋愛物の感動するヤツ。あ〜ちゃんが一番見たいと言っていたのは恋愛物の感動するヤツだ。
あ〜ちゃんは韓国ドラマみたいな純愛ドロドロみたいなのが大好き。のっちに良さは分からんけど、ロマンチックなのが良いらしい。
ずっと前、まだ中学生だった頃に、あ〜ちゃんが理想のファーストキスを語っていた事があった。
例を何個も挙げていて、全部は覚えていないけど、どれもドラマみたいなロマンチックな物だった。
夜景の綺麗な所でだとか、遊園地の観覧車のてっぺんだとか。どれも凄くロマンチックなシチュエーションだった。
「……」
窓の外は雨。こんな雨じゃ、夜景は酷いし観覧車なんて動いている訳がない。残念だ。のっちが残念だ。
あ〜ちゃんとキス…したいなぁ。どんな味がするんだろ。ゆかちゃんとのキスは、食後に食べたバニラアイスの味がした。
「のっち、そろそろお腹空かん?ご飯にしよっか」
「あ…うん、そだね」
もう12時かー早いなぁ。
◇
あ〜ちゃんが作ってくれたのは、カレーだった。二日連続カレー…。嬉しいけど、なんか複雑な気分だった。
「あ〜ちゃん、次どっち見る?」
アクション系と恋愛系、さぁのっち!なんてね。
「こっち」
あ〜ちゃんが指差したのは恋愛系。うん、一番見たいって言ってたもんね。よし見よう。
見てて良いムードになって、…ムフフ、な事にはならないか。てゆーかのっち、そーゆータイミングとか分かんないし。あぁ…勉強不足だわ。
◇
結局何事も無く、夕方を迎えた。感動的なラストにあ〜ちゃんは号泣。のっちももらい泣きで号泣。
あ〜ちゃんが時計を気にして帰る支度を始める。あーあ、結局何も無かった。キスも無ければ手を握る事も無かった。ヘタレな自分に嫌気が刺す。
「じゃ、あ〜ちゃんそろそろ帰るね」
「あ、送るよ」
てゆーか、送らせて下さい。
家を出ると、タイミング良く雨が上がった。水溜まりに映る空はオレンジ色。そして七色の橋を発見した。
「あ〜ちゃん虹出とる!」
「ほんまじゃ、めっちゃ綺麗!」
これは、神様がのっちに与えてくれたチャンスだと思った。
のっちは黙ってあ〜ちゃんの手を握った。
◇07:End◇
最終更新:2008年10月13日 11:15