あ〜ちゃんにああ言って、ちゃっかり前払いのキスまで貰ったものの、やっぱりゆかちゃんはコワい。
てゆうか、来たるべき将来あ〜ちゃんをもらい受ける時に、最後の鉄壁として立ちふさがるのはゆかちゃんであって。
今は多分のっちの味方となってくれてる守護天使を、つまらないことで敵には回したくない。
あたしとしてはスイス並みの永世中立でいたいし、基本的に平和主義、ノーモアヒロシマじゃけえ。
…というわけで、ゆかちゃんにあらいざらいぶちまけることにした。へたれと言いたい奴は言いたまえ。
あたしのぶちまけたあ〜ちゃんの陰謀に、ゆかちゃんは上機嫌になった。
「ふふっ、あ〜ちゃんっておかしな事ばっか思いつくよね〜」
ゆかちゃんはクスクスと嬉しそうに笑った。
「…にしても、のっち、すごい下僕じゃねえ」
「だってあ〜ちゃんが、自分はゆかちゃんに嫌われたくないって…」
「あのワガママ姫は、ほんま…」
ゆかちゃんは笑いすぎた息を整えながら、
「あ〜ちゃんのワガママなら、ゆかがきかんはずないのに」
「…それ、あ〜ちゃんも言っとった」
「あ〜ちゃんはゆかが従うと分かっとるから、逆にワガママは言って来んのんよね…」
「おかげでこっちに泣きついて来るけえ。ゆかちゃんがとられる〜、って」
「ふふっ」
ゆかちゃんはまれに見る上機嫌。ほんとに嬉しそう。こういう素の感情を屈託なくさらすのは、だいたいあ〜ちゃんが絡んでる時だ。
ほんと、2人の間にはトクベツなものがある。
…何かこうも見せつけられると、のっちだってちょっと面白くないぞ。
まあ問題は解決したことだし(あ〜ちゃんの人騒がせめ)、のっちはここらで手を引かせてもらおうっと。
「…じゃ、そーいうことで…」
「何甘いこと言っとるんよ、のっち」
…へ?
「のっちはあ〜ちゃんから秘密の任務を受けたくせに、ゆかにべらべら喋ったうえ、何もせん気?」
「…だ、だってする事なくなったし…」
「のっちのことじゃけえ、前払いとかかこつけて、あ〜ちゃんからチュウの一つくらい…」
「な、何で分かったん!?」
途端に、ゆかちゃんからピクリと黒い波動が。…し、しまった。
「ほ〜う、チュウしてもらっといて、あ〜ちゃんのお願いにな〜んもせんと終わらせる気じゃないよねえ?」
「え、だって、あ〜ちゃんの悩みはもう解決したしぃ」
「…のっち、任務は全うせんと」
ううう。しごく当たり前の真面目なことをゆかちゃんが言うと、何でこんな悪徳めいて聞こえるんよ。
「…な、何をすればいいんでしょうか…?」
「あ〜ちゃんの依頼と同じ。邪魔してくれん?」
「…はあ?」
「あのね、つきまとわれて困っとんよ。空気読めん男には、ほんま疲れるわ」
ゆかちゃんは可愛い声とほんわか笑顔で、キツいことをさらりと言った。
「うちが何を言っても照れとると受けとるんよ。もうダメじゃね、日本語が通じんわ」
…ゆかちゃんの特技はにっこり笑って人を斬ることです。さっきからバッサバッサと快刀続いてます。
「…じゃけえ、ゆかは考えたんよ。アホをもってアホを制す」
ま、イマイチ頼りにならないけど、ってゆかちゃんは小さく付け加えて、あたしを見てにっこりと天使のように笑った。
えーと、つまり、それって…。
「…のっちがアホってことぉ!?」
「…遅っ。ま、ゆかの為に働いてもらうけえ。あ〜ちゃんのキスの分は、しっかり」
そ、それ相当怒ってるね、ゆかちゃん…。
ゆかちゃんが冷たい魅惑的な笑顔で言い放った以上。
あたしに選択肢なんてあるわけない。
つづく
最終更新:2008年10月13日 11:17