◇A-side◇
久しぶりに一人で帰った。果てしなく寂しい。いつもはのっちが隣に居て、ゆかちゃんもその隣に居るのに。
今日一緒に帰れなかったのは、ゆかちゃんは生徒会の仕事、のっちは何やら先生に呼び出されたとかで。
ゆかちゃんはともかく、のっち…悪い事でもしたの?後でメールか電話で呼び出された理由を聞いてみよう。
◇N-side◇
自分達は健全な学び舎でなんて事をしてしまったんだろう。今さらとんでもない事態に気付いた。
てかむしろ、凄い事をしたという達成感みたいな物が沸き上がってきた。もうのっちとゆかちゃんに恐い物なんてないよ!
だけど、あ〜ちゃんに悪い事しちゃったな。嘘吐いて先に一人で帰らすなんて…。夜にでも謝りに行こう。本当の事は言えないけど。
もうすっかり日も暮れて、部活終わりの生徒の波が部室棟へと流れていた。皆お疲れ様。
それを眺めながら、靴を履き替えるゆかちゃんを待つ。さっきから少し腰が痛そうだ。机固かったし、痛かったのかな…ごめんね。
「お待たせ、のっち」
ゆかちゃんがのっちの腕に自らの腕を絡ませた。腕組むとか…カップルみたい。てかカップルか。
「ゆかちゃん大丈夫?歩ける?」
「腰痛いんですけど、誰かさんのせいで」
のっちを睨むゆかちゃん。う…ごめんなさい。本当に悪かったと思ってます。調子乗ってすいません。
「はい、」
のっちはゆかちゃんの腕を解くと、ゆかちゃんの前にしゃがんだ。背中をどうぞと差し出す。
「?何のつもり?」
「おんぶ」
歩けないくらい痛いんだったら、のっちがゆかちゃんの足になります。全部のっちのせいだし。
「あはは、おんぶしてくれるの?」
「なんで笑うの!のっち真面目に言って…どうわっ!」
油断した瞬間、ゆかちゃんが背中に飛び乗ってきた。ビックリして倒れそうになったけど、なんとか立ち直った。
「出発進行〜」
ゆかちゃんが楽しそうに笑って言う。思ってたより軽くて驚いた。ちゃんと食べてるのか心配になるよ。
「よしっ、しゅっぱ〜つ!」
のっちは全力で駆け出した。背中に当たる柔らかい膨らみは…意識しちゃダメだ。興奮しちゃうじゃないか。
二人でキャーキャー騒ぎながら、家へと向かった。子供みたいに、笑って。
近所迷惑とか気にしてる暇はない。ただ騒ぎたい気分だった。きっとゆかちゃんも、同じだったんだ。
◇
「到着〜!」
「すごーいのっち、早かったね!」
「ぜぇぜぇ…げほっ、…やべぇ…のっちもうそんな若くねーわ…」
樫野家に到着し、ゆかちゃんを背中から降ろした瞬間、のっちは力尽きてへこたれた。苦笑いするゆかちゃん。
「あ〜しんど」
もうお婆ちゃんだよのっち。明日は筋肉痛かもしれない。だっておんぶして学校から家まで全力疾走だよ?死ぬでしょそりゃ。
「お疲れ、のっち」
「ゆかちゃん…のっち頑張ったからご褒美ちょうだい」
「ご褒美?」
「うん、ご褒美」
もう立てないくらい疲れ果てたのっちが家まで歩いて帰るだけの体力を補給しなきゃ。ゆかちゃんで。
「何が良い?」
「キス…とかかなぁ?」
「なんで疑問系なんよ」
クスクス笑うゆかちゃん。あ…ヤバい、今のでかなり癒された。
キスは出来るんならずっとしてたい。それくらい、ゆかちゃんとのキスは気持ち良い。
「仕方ないね、のっちは」
のっちは目を閉じて、唇を突き出した。さぁお願い。
チュッ、
……ホッペ?
「誰も唇にするとは言ってないしー」
はめられた。悔しい。
だけど家までの間、無意識に何度も右の頬に触れていたのはまた別の話。
◇11:End◇
最終更新:2008年10月13日 11:35