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外はどこまでも快晴。
雲ひとつない空は綺麗だ。
蜃気楼で揺らめく地面を踏み締めながら、しかしあたしの気分はとても晴れやかだった。

「へへっ…幸せってこういう事だよねぇ…」
誰に言うでもないんだけど自然と口をついて出る言葉。
あ〜ちゃんが聞いてたら、またあの白い目で見られるに違いない。
まぁ、今日ものっち一人なんだけど。
「早く逢いたいなぁ〜」
今日は昨日よりたくさん喋るんだ。もっと仲良くなるために。



しかし、図書館に着いたあたしの目に映ったのは、ゆかちゃんが誰かと楽しそうにおしゃべりする姿だった。


(だ、だだだ、誰…!?ゆかちゃん、隣の美人さんは一体誰なん!?)
本棚に隠れて様子を伺う。
(何…あの超がつく程の美人は…。しかもゆかちゃんとめちゃくちゃ親しそうだし…)
確かゆかちゃんにお姉ちゃんはいないって言ってたから、姉妹ではない訳で。
そうすると、あたしの阿呆な脳をフル回転させた結果、ゆかちゃんの恋人という結論に至ってしまう。
(あーあ…早くも失恋かぁ…)
なんだか涙が出そう。
今日は頑張ろうと決めたのに、ひどいよ神様。
のっちがあんな美人に敵うわけないじゃろ…。

肩を落として帰ろうとするあたしを、誰かが呼び止めた。
「あ、のっちー」
「…っ!ゆかちゃん…」
恐る恐る振り返ると、そこにはゆかちゃんが…って、あれ?
キョロキョロ辺りを見回しても、あの美人さんがいない。
「どうしたん?」
「…あ、あのさ…さっき、綺麗な女の人と一緒におった…よね?」
「あー…直ちゃん?」
(な、直ちゃん!?)
そんな親しげに名前を呼んでるだなんて、なんたる衝撃。
「も、もしかして…ゆかちゃん、あの人の事が好きとかそういう…」
「うん。好き」
「マ…!ジ、ですか…」
さようなら…のっちの恋。
ここが図書館じゃなくて、ゆかちゃんの前でもなかったら絶対号泣してるよ。
「…ねぇのっち、なんか勘違いしとらん?」
「へ…?」


「確かに直ちゃんは好きじゃけど、ラブじゃなくてライクの方よ?」
「あ、そうなんだ…」
(…よ、よかったぁ〜…)
なんだか一気に疲れがでてきた。
ビックリして損したよ…。

どうやら直ちゃんという美人さんは、ゆかちゃん家のお隣に住んでるらしい。
ちっちゃい時からのお付き合いなんだって。羨ましいな、まったく。


ゆかちゃんと話しながら、いつもと同じ席に座る。
この場所もちょっと馴染んできたかも。
「あんね、ゆか、直ちゃんに憧れとるんよ。美人だし、頭いいし、優しいし」
「へぇ…すごいねぇ」
「じゃろ?じゃけぇ、大学は直ちゃんと同じとこに行きたいなって思っとるんよ」
「そうなんだ…。でも、ゆかちゃんなら絶対行けるよ」
あたしは本当にそう思った。
目をキラキラさせながら語るゆかちゃんなら、きっと大丈夫だって。
「…ほんま?ありがと、のっち」
そう言ってはにかんだ笑顔のゆかちゃんは、悶絶しそうなくらい可愛い。
(ぐはっ…めちゃくちゃ可愛い…っ!)
思わず抱きしめたくなってしまって困る。
まぁ、そんな事でもすれば確実に嫌われるからしないけど。それにのっちヘタレじゃけぇね。


「あ、そういえば。のっち、今度の土曜日空いとる…?」
読書感想文用に読んでた本から目を離して、ゆかちゃんが問い掛けてきた。
「土曜日…?空いてるっていうか、予定なんてなんもないけど…」
友達なんてあ〜ちゃんだけだから遊びに行くっていっても毎日じゃないし、もとよりゲームくらいしかすることのないのっちに、はなから予定なんてものは存在しない。
寂しい高校生だなぁ…。自分で言うのもアレだけど。
「じゃあ、映画が土曜日に公開するけぇ見に行きたいんじゃけど…良かったら一緒に行かん?」
「…………」
「……のっち?」
えーと…今なんて言いました?
「映画を見に行きたい…?」
「うん」
「…え、誰と誰が?」
「ちょっ…のっちに予定聞いとるんじゃけぇ、のっちとゆかに決まっとるじゃろ?」
へぇー…のっちとゆかちゃんとで映画かぁ……って。
「えぇ!?っ、むぐ!」
大きな声を上げてしまって、慌てて両手で口を塞いだ。
隣の人にじろりと睨まれたけど、今は気にしてらんないよ。
だってゆかちゃんとデートだよ!?
「大袈裟じゃねー。…あ、もしかして映画嫌い…?」
ぶんぶん首を振って否定する。
それに、もし映画が大嫌いだったとしても、ゆかちゃんと居れるならあたしはいくらでも我慢できるよ。


「良かったぁ…。恋愛もんじゃけぇ、ゆか一人で行くの躊躇っとったんよ。ごめんねのっち。ありがと」
「ううん。のっちの方こそありがとうだよっ」
夢みたいだ…ゆかちゃんとデートだなんて。
お礼を言ったら、ゆかちゃんは小さく笑った。

「ねぇねぇのっち、映画楽しみじゃねぇ〜」
両手をちっちゃくぶんぶん振って、ほんとに嬉しそうなゆかちゃん。

(なんて可愛い仕草するんよ!た、たまらん…鼻血でそう、のっち)
なんてデレデレしながらゆかちゃんを見てたら、鼻から何か温かいものが。
「…ちょ、のっち鼻血!」
「へ?」
タイミング良すぎるよ鼻血…。
あたしはゆかちゃんの前で、情けなくティッシュを鼻に詰めた。



㈬END






最終更新:2008年10月13日 11:49