◇A-side◇
ジェットコースターは本当に恐かった。ほとんど目は開けてない。のっちがずっと手を握っててくれたから安心したし、逆に違う意味でドキドキした。
今日ののっち、なんだか王子様みたいでヤバい。駅からずっとドキドキしっぱなし。のっちのくせに生意気だ。
「はい、あ〜ちゃん」
「ありがとーのっち」
ソフトクリームを買って来てくれたのっち。あ〜ちゃんは受け取り、ペロペロ舐めた。冷たくて甘くて美味しい。
妙に気が利くし、優しいし、変なのっち。調子が狂う。
「美味しいねー」
「うんっ」
笑顔で頷くと、のっちも嬉しそうに笑った。可愛い笑顔に胸が締め付けられる。
「次はお化け屋敷行こうよ」
「絶対やだ!あ〜ちゃんお化け嫌い」
「ここのお化け屋敷全然恐くないらしいよ、だから大丈夫だって!」
「……、」
「お化け屋敷行って、ご飯食べて、お店見て、帰ろ」
「…」
「あ〜ちゃん八時までに帰らんなんのじゃろ?ちょうど良い時間だよ」
のっちが得意気に言う。確かに良い計画かもしれない。だけど帰るとか言われたら、急に現実に引き戻された気分になる。
「うん…そうじゃね」
「よし決まり!」
のっちは笑顔でムシャムシャとコーンにかじりつく。あ、ホッペにクリームが。
「のっち、ホッペに付いとる」
「え…なっ!」
ペロッと、のっちの頬を舐めた。口の中に甘さが広がる。
「あああああ〜ちゃん!」
のっちは耳まで真っ赤にして驚いた。頬を押さえて、瞬きが尋常じゃない。
「はい、取れたよ」
のっちにばっかり良い格好はさせないよ。
◇
「キャー!キャー!」
「うわぁぁっ!あ〜ちゃん痛い!爪!爪がのっちの腕に刺さっとる!」
「ギャー!いやー!」
「痛い痛い痛い痛い痛い!痛いよあ〜ちゃん!」
「もー嫌ー!来るなー!」
「イダダダダダダ!」
…
……
「めちゃくちゃ恐かったね、のっち」
「…うん、恐かった…」
お化け屋敷を出て、やっとホッとしたあ〜ちゃん。のっちはゲッソリしている。よっぽど恐かったんだろう、聞いた事ない様な悲鳴上げてたし。あ〜ちゃんも恐かったけどさ。
「のっち、ご飯は?お腹空いたでしょ?」
「うん…行こうか…」
ふらつくのっち。危なっかしいな。あ〜ちゃんが腕を掴んで引っ張った。のっちをズルズル引きずり、レストランに向かった。
◇
ご飯を食べて色んなお店を見て回ってると、のっちの姿が無い事に気付いた。ずっと夢中で気が付かなかった。もしかして、もしかしなくても…はぐれた?
「のっちー、のっちー?」
迷子センターに届けるべき?なんて思って辺りを見渡す。いた。
「ごめんごめん」
「もードコ行っとったんよ!」
「これ、ゲーセンで取ったよ」
はい、と見せてくれたのは、でっかいクマのヌイグルミ。凄く癒される、アイツだ。
「凄いのっち!良く取れたね」
「簡単だったよ、400円で取れたもん」
のっちはゲーム全般なんでも得意らしい。ユーフォーキャッチャーもお手の物だ。
「これあ〜ちゃんにあげる」
「え…」
「のっちからのプレゼント、初デートの記念に」
ちょうど夕日が沈んで、辺りが静かになった。暗い中でものっちの綺麗な顔はハッキリと見えた。
胸の奥が蕩けそうな感覚。多分これが、幸せなんだ。
◇N-side◇
「夜景、綺麗だね」
今日、最後の締めくくりに観覧車に乗る。この為に、わざわざ少し遠い遊園地までやって来たんだ。
大本彩乃、行きます。あ〜ちゃんと口付けを交わします。あ〜ヤバい、心臓が痛い。
「夜景より、あ〜ちゃんの方が綺麗だよ」
ベタな事を言ってみる。だけど事実。
あ〜ちゃんは赤くなり恥ずかしそうに笑う。本当に可愛い。キスだけじゃなくもっと色々したくなる。
暗闇にちりばめられた光が宝石みたいに輝く。星も綺麗で、なんだか凄くロマンチック。良い雰囲気!
「もうすぐてっぺんだね」
「…ホントだ」
あ〜ちゃんは夜景に見とれている。光に照らされた横顔が、憂いを帯びて大人っぽい。
向かい合う形で座ってるけど、あ〜ちゃんの隣に行かなきゃキス出来ないよね?…よし。
「隣、座るよ?」
「良いよ」
ギシッと観覧車が揺らいで少し恐かったけど、なんとかあ〜ちゃんの隣に着席。肩と肩が触れて、ドキドキが半端無い。
「のっち」
「うん?」
「この子の名前、のっちジュニアに決めた」
ヌイグルミを大事そうに抱えてはにかむあ〜ちゃん。ジュニアって…まぁ良いけどさ。
「あ〜ちゃん」
てっぺんに差し掛かる。のっちはあ〜ちゃんの肩を掴んだ。行けのっち。
「大好きだよ」
少しの間見つめ合って、そっとキスをした。
柔らかくて温かくて…最高の幸せを感じた。
もういっそこのまま、時間が止まれば良いのに…。本気でそう願った。
◇14:End◇
最終更新:2008年10月13日 12:06