◇A-side◇
のっちの家にやって来た。朝から親達はたかしげの試合の為に泊まりで宮崎県まで行ってしまった。どげんかせんといかん。
ちゃあぽんは友達と遊びに行ったし、これで心置きなくのっちとのんびり出来る。
「あ〜ちゃんおはよー」
出迎えてくれたのっち。まだ朝の9時。良く起きれたね。のっち起きてないんじゃないかって軽く心配したよ。
「何しよっかー」
「一応コレ持ってきた」
バックから取り出したのは、学校の宿題。連休だからって調子に乗った先生達がバカみたいに課題を出して来た。
「…嫌だ」
「どうせのっちの事じゃけん、放置しとくつもりじゃろ」
さっきまで笑顔だったのっちの表情がみるみる崩れてく。
「あ〜ちゃんはドSじゃね」
「ん?なんか言った?」
「…別に」
のっちは渋々宿題を広げた。本当に嫌そう。テーブルに広げられた宿題の量は半端無い。気が遠くなる。
「よし、やるよのっち!」
気合いを入れて、あ〜ちゃんは眼鏡をかけた。実は目が悪いんだよね。
「…!!」
バサバサッとのっちは宿題を落とした。何やっとるんよ。
「め眼鏡のあ〜ちゃん…良い……!」
「はい?」
のっちは目をキラキラさせて悶え苦しんでいた。顔が真っ赤で鼻息が荒い。危ない人みたい。
「かっ、可愛い…てゆーかエロい…」
「エロい?何がよ」
「眼鏡をかけたあ〜ちゃん…」
なんで眼鏡かけただけでエロいとか言われなきゃならないの。意味が分からん。眼鏡かけただけじゃん。
「なんか…、女教師物のAVに出てきそおぶあっ!」
恐ろしい事を言いかけたのっちに愛の鞭を。ほんまにこの子は女の子なのだろうか。頭の中は中二の男子だ。
「…あ〜ちゃん帰る」
「ごめんなさいごめんなさい!真面目にやります!」
…ほんまに、なんでこんな変態が好きなのか自分でも謎だ。
「次変な事言ったら絶交」
「…はい、絶対言いません」
のっち、お口チャック。遊園地でデートした時は格好良い王子様だったのになぁ。キスだって、凄くロマンチックで夢みたいだったのに。
なーんてあの時の事を思い出して、少し照れるあ〜ちゃんでした。
◇
ご飯食べて勉強して、もう夕方になっていた。
「あ〜ちゃん、晩ご飯はのっちが作ってあげるよ」
のっちが自信満々でそう言った。
「えーお腹壊しそう…」
「失礼な!この前ゆかちゃんに美味しいオムライスの作り方教えて貰っ…」
途中まで言って、のっちは口を塞いだ。
「…?どしたの?」
「あ、ううん何でも無い!とにかく美味しいの作るから、待っててね」
変なのっち。何かを誤魔化す様に笑ってキッチンに向かった。エプロンが似合わな過ぎて笑える。
◇N-side◇
前にゆかちゃんが泊まりに来た時に教えて貰ったオムライスの作り方を思い出す。あ〜ちゃんに怪しまれたかな?ゆかちゃんとの関係は絶対にバレちゃいけないんだ。
「コショウを入れて…と」
あ〜ちゃんの為に最高のオムライスを作るんだ。たまには出来る所を見せつけなきゃ。
◇
「いよっしゃ!」
見た目はアレだけど、のっち特製オムライス完成!最後にケチャップで落書きしなきゃ。何が良いかなぁ。Loveにしとこう。ベタだけど。
「あ〜ちゃん出来たよ〜!」
リビングのテーブルに運ぶと、あ〜ちゃんは待ってましたとばかりに宿題を片付けた。
「結構上手でしょ?」
「…可愛い」
あ〜ちゃんはオムライスをジッと見つめて微笑んだ。なんでそんなに優しい目をするんだろ。
「食べるのが勿体ないよ」
あ〜ちゃんが泣きそうな声で呟く。
「食べてよ、食べて欲しくて作ったんだもん」
向かい側に座って、のっちはあ〜ちゃんの顔を覗き込んだ。…今にも泣き出しそうだ。
「また作るよ、あ〜ちゃんの為に」
「…ほんまに?」
「うんっ、だから食べて!愛情たっぷりだよ」
むしろそれしか無い。のっちのオムライスはそれが売り。
「頂きますするよ?」
「うん」
「頂きまーす!」
「…頂きます」
のっちはガツガツ食べた。うん、なんか足りない気がするけど食べれる。ゆかちゃんのはもっと美味しかったんだけどなぁ。何が足りないんだろ。
「…パク」
あ〜ちゃんがゆっくり口に運んだ。緊張の一瞬だ。
「どう?…美味しい?」
「んー美味しい!」
あ〜ちゃんはニッコリ笑った。やった!凄く嬉しい!お世辞かもしんないけど、のっちの心にお花が咲きました。
「のっちやれば出来るじゃん!」
「えへへ」
頭を撫でられた。凄く幸せだ。
「あ〜ちゃん、食べさせ合いっこしよ」
「ん、良いよ」
これ、のっちの夢でした。
「はい、あーん」
「あーん」
口の中に広がる幸せの味に、酔ってしまいそうだった。
◇16:End◇
最終更新:2008年10月13日 12:22