ゆかちゃんが見たいって言ってた映画は純愛ストーリーだった。
ラストの展開には感動しっぱなしで、ゆかちゃんも周りの人も泣いている。
例にもれずのっちも泣いてしまった。
(ヤバイ…絶対顔ぐっちゃぐちゃだよ…)
ゆかちゃんに鼻水流してる姿は絶対見られたくない。
観覧室から出る時にこっそりジャケットで鼻水を拭ったら、微かにシミができて凹んだ。
(うぐっ、しまった…)
「すごかったねぇ…」
「のっちめっちゃ感動したよ…」
「ゆかも。…いっぱい泣いちゃった…」
そう言った涙目のゆかちゃんはやっぱり可愛い。
くぅ…思わず抱きしめたくなるじゃないか…!
「のっちも結構泣いとったね」
「えっ!…見とったん?」
恥ずかしすぎる。知られたくなかったのに。
「顔逸らしてたけぇ見えんかったけど、ずっとぐすぐす鼻啜っとる音が聞こえとったもん」
「うっ…」
「でもそういうとこ、ゆか好きだよ」
「え…?」
今の…今のってまさか…。
「なんか男の子みたいで可愛い」
「あ…そ、そう…」
なんだびっくりした。
ていうか喜んでいいの?それ。
映画館を出てぶらぶら街を歩く。
とりあえずお腹が空いたからお食事タイム。
学生なうちらに贅沢できるお金はないから、結局ファーストフードに落ち着いた。
「のっち奢るよ」
「えっ、いいよ。ゆかも払うけぇ」
「いいからのっちに払わせて。…それで、さっき泣いたの知らなかった事にしといてよ」
ほんとはカッコイイとこ見せたいだけなんだ。
でもそんな事言えないから、そう言って笑ってごまかした。
「えー、しょうがないなぁ」
「あざーっす!…へへへっ」
「ふふふっ」
二人で笑いあう。
こうやって、ゆかちゃんと居ると幸せな気持ちになれる。心の中があったかくなって満たされていくんだ。
それはゆかちゃんと出会って、初めて知った気持ちだった。
すっかりお腹も満たされたのっちはゆかちゃんに内緒で、とある計画を実行しようとしていた。
実は昨日からずっと考えていた計画。
「実はさ、のっちも行きたいとこがあるんよ」
「どこ?」
「海」
「え…今から?」
「うん。今から、だからだよ」
きょとんとしてるゆかちゃんにそう言って、駅に向かって歩き出した。
電車にしばし揺られて着いたのは人もまばらなビーチ。
もう夕暮れだからほとんどカップルばかりだ。
「行きたかったのってここ?」
「うん。夕日がすっごい綺麗でしょ?」
「うん…綺麗じゃね」
海に沈む夕日が眩しい。
「ここに行きたかったのは、この景色が好きだから絶対見て欲しかったんだ。ゆかちゃんに」
「のっち…」
「なーんて。今のちょっとキザじゃね」
「…ううん。そんなことない」
首をふるふると振って、ゆかちゃんは微笑んでくれた。
夕日に照らされて、とても綺麗で。
「ありがとう、のっち」
「……うん…」
直視できなくて、視線を夕日に向けた。
ただひたすらに、隣に立つゆかちゃんに好きだと心の中で叫びながら。
㈮END
最終更新:2008年10月13日 12:30