少しでも身体をずらそうと動かすと、
微かにあ〜ちゃんは唸る。
なんて敏感なのだろう、寝ているというのに。
意味もなく鼻の前に手を翳すと、勿論あ〜ちゃんは生きていて、
一瞬こんな辛い思いをするくらいなら今すぐこの手を鼻に、口に持っていき、
塞いで殺してしまおうか、なんて怖いことを考えている自分に気がつく。
彼女が深く、浅く呼吸をするたびに、自分の心臓が脈打つ音はどんどん早まっていき、
もしかして自分が死ぬのではないか、とも考える。
さして近くもない空を見上げると、馬鹿にしているのではないかと思うほどの青空で、
私みたいな小悪魔が何も出来なくてすいませんねえ、とそいつを睨んでやる。
もう三十分間もこの状態だ。
もう一度あ〜ちゃんを見遣ると、(あわよくばその白い肌を目撃できないかと、)
白いブラウスのボタンがしっかり閉じられていて、几帳面だなこのやろう、と心なしか溜息。
もういっその事殺しもせず、殺されもせず、起こしてしまおうかとその肩に手をかけてみる。
彼女の体が大きく動いて、すいません何もしていないんです、の合図に両手を挙げる。
目覚めたのかと思ったあ〜ちゃんの身体は、
私の肩から大幅にずれて、軽そうな音を立てて膝へ。
起きていないのと、死んでいないのを確認して、
一安心して、また早まる心音。
喜びか悲しみか、味わったこともないような複雑な感情に相反して、
空に広がるのは一片の迷いもない青空。
end
最終更新:2008年10月13日 14:41