久しぶりだなあ…
思わずため息がもれてまぶたを閉じる。
たまにはこんな日も来る。深く深く沈んでいってしまうような日。
あたしはほうづえをついて誰もいない図書室のガラスごしに空を眺めた。
キイッ
突然、ドアが開く音がして振り返った。
「…のっち」
「かっしー…あの…や…」
気まずそうに目を泳がせるのっちの眉はどんどん下がる。
「ちょっと…どうやって入ったんよ?鍵かかっとったじゃろ」
「やっ…かかってなかったよ」
「うそじゃろ」
や…とか、違う…とか、もごもご言うのっちに背を向けるとあたしはもう一度空を見上げた。
「かっしー…」
「何よ」
「何かあったんじゃろ…?」
「…。」
のっちの視線で首もとが熱い。…くすぐったい。
「あ~ちゃんが言ってたんよ…何かあったらかっしーはここにおるよって…」
やっぱり。あ~ちゃんの仕業か。
「じゃあ、何であ~ちゃんは来ないんよ?」
「…あ~ちゃんは行けんって…かっしーは…悩んどるかっしーは踏み込まれたくないからって…。のっちは鈍いけぇ、入ってきちゃったけど…だから…つまり…のっちも、あ~ちゃんも…」
「もう、いいけぇ」
考えがまとまらないのっちの言葉を遮って振り返る。
泣きそうなのっちの顔。さっきから一歩も動かずおんなじ所に突っ立ったまま。
あたしも、何を言えば良いかわからなくなってのっちの履き潰したスニーカーに目を落とした。
「…心配じゃけぇ」
ちっちゃな声でのっちが呟く。思わず、顔を上げた。
「かっしーは強いから必要ないかもしれんけど…頼ってよ…もっと。かっしーのこと見てるけぇ」思わず口元が緩みそうになって唇をかんだ。
のっちの本気。
たまーにだけどすっごいホームラン打っちゃうんだ。
「ふふっ…」
「ちょ、何笑って…」
「もーのっちは、わけわからん」
「…どーせアホの子ですよ」
くやしそうにちょっと顔を歪めるのっち。でも堪えきれずに口元がキュッと上がってる
「へんな顔」
笑いながら、のっちの腕をつかんでぐっと引き寄せる。のっちの汚いスニーカーが初めて動いてあたしのつま先にコツンと当たった、その時。
「ちょっと!ゆかちゃん、のっち!何しとんのよ!」
勢いよくドアを開けてあ~ちゃんが慌てて駆け寄る
ほら。やっぱり見てた。
「何もしとらんよ。ね、のっち」
「…あ~ちゃん違う…ほんと…」
カミカミな上にあ~ちゃんに睨まれてたちまちハの字に戻るのっちの眉。
ああ、本当にもう大丈夫。
あたしは二人が知らないだけで目一杯頼ってる。
それに、知らない内に二人に守られてるってわかったから。
end
最終更新:2008年10月10日 02:05