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やっと終わった委員会。皆が会議室を後にする。
そんな中、あ~ちゃんは座ったまま窓の外を見た。夕焼けが綺麗でオレンジ色の空。うっとりと溜め息を付いた。
「西脇さん、会議終わったよ?」
隣のクラスの子があ~ちゃんに声をかける。うん、と頷きあ~ちゃんは立ち上がった。別に終わった事に気付いてなかった訳ではない。
「あ、メール」
机の隅に置かれた携帯のライトがチカチカ点滅している。これは未読メールがある証拠。あ~ちゃんは携帯を素早く開き、画面を見た。
メール一件、差出人はのっち。受信時間は40分も前だった。会議に集中していて気が付かなかった。それに目を通して、携帯を閉じる。
「ねぇ西脇さんって大本さんと仲良いけど、メールとかってするん?」
来た来た。あ~ちゃんはその子の爪先から頭のてっぺんまで、舐めるように見た。そして笑顔で首を横に振った。
「そっかー」
残念そうな表情。どうせ仲の良いあ~ちゃんを使ってのっちに近付こうと言う魂胆。たまに聞かれる。正直、なんだかなって。
こうやって、王子様に近付きたがる女の子は追い払わんと。あのヘタレも可哀相やし、女の子も可哀相。どっちも傷付かない訳がないから。


「もう行くわ、じゃあね」
「うん、またね西脇さん」
会議室を立ち去るあ~ちゃんは、スクールバックに携帯を放り込んだ。あ~ちゃんの携帯は、のっちの携帯に登録されている数少ないメモリーの一つ。
しかも、「あ~ちゃん」というフォルダがあるくらい、のっちの携帯にとって自分のメールアドレスの存在は大きい。どうせのっちは携帯という文明の利器を本来の機能ではなく、ゲームをするためにしか使っていないのだろう。
そんなのっちから先程来たメールの内容はと言うと、
『教室で待っとるよ』
しかも訳の分からん絵文字つき。会議で遅くなるから先に帰れって言ったのに。まぁ、のっちらしいけど。
あ~ちゃんはのっちの待つ教室へと少しだけ足早に向かった。

◇◆◇◆

オレンジの夕日が差す教室は、影が深くて飲み込まれてしまいそうだった。オレンジと黒だけの空間に、いた。
机に突っ伏して心地良さそうに眠っているのっち。お姫様の帰りに気付かず、フワフワと夢の世界。
夕日を受けて輝く寝顔が綺麗で、ついつい見とれてしまった。寝息がその黒髪を揺らす。綺麗だ。
一時間半も待つなんて、どれだけヒマなんだ。あ~ちゃんは少し呆れ顔。


「…隙だらけなんよ」
そう呟いた声は、静まり返った教室に小さく響いた。あ~ちゃんの指が、のっちの髪を撫でる。前髪を掬い上げ、その顔を覗いた。
白い肌が光を反射して輝く。それが眩しくて目を細めた。
王子様はヘタレだから、寝ているお姫様にすらキス出来ないだろう。絶対、そう。キスした後が恐くて。だけどね。
「…お姫様が、いつまでも待っとると思ったら大間違いじゃよ。」
そう言って、お姫様は眠る王子様の頬にキスをした。静寂の中、二つの大きな黒い影が繋がった。
王子様はゆっくりと目を覚ます。眠そうな目をこすり、ごめん寝とった、と謝る。お姫様からキスを受けたとは知らずに。
全く。これじゃ、どっちが王子様か分からんな。


PM10:58◇樫野宅◇

「ネタが尽きんねぇ」
そう呟く樫野様は今日も夜更けまで新作の作成に取り掛かる。彼女のキーボードを叩く手は、止まる事を知らない。

―End―






最終更新:2008年10月10日 02:08