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まさかこんなことになるなんて。
体育館の薄暗い倉庫の中、漏れる吐息は熱い。

幾分か汚れているマットの上に広がるさらさらの黒髪も、さっきから心臓を捕らえて離さない黒目がちな瞳も、柔らかそうなピンク色した唇も。全部があたしの心のど真ん中に突き刺さる。
まるで漫画のようにハートに矢が射られたような、例えるならあんな感じ。
体が熱くて堪らない。




きっかけは多分何でもないことだ。
ゆかちゃんが居残り練習するのを待っててくれてて、もう帰る時間だからと二人で後片付けをしてたら転がってたボールにゆかちゃんが躓いたから助けようとして。
…気付いた時には、ゆかちゃんを押し倒したみたいになってた。

「…のっち」
普段と違く聞こえるゆかちゃんの可愛い声。
まるで誘ってるかのように聞こえるのは、あたしの気のせいなんだろうか。
ごくん、と唾を飲む音がやけに響いた気がした。


そっと近づいて唇を重ねる。
柔らかい感触にじわじわと理性が焼かれる。学校の、しかもこんなムードもへったくれもない体育館の倉庫で。
「ん、ふ…っ」
「ん…」
何度も唇を重ねて舌を絡めて、何度もゆかちゃんを味わう。
(もうすぐ…先生来るかなぁ…)
頭の隅っこで思うのに止められない。

だって、こんなにゆかちゃんが可愛い反応をするなんて思わなかった。
ぎゅっとあたしのジャージを掴み頬をほんのり赤く染めて、小さな舌で一生懸命応えようとしている。堪らなく可愛い。
初めての反応に、あたしの心臓が有り得ないくらい煩く音を立てる。
「ふぁ…ぅ、のっ…ちぃ…」
「ゆかちゃん…」
心に急かされるまま手をそっと制服の裾から侵入させて、ブラの隙間に差し入れた。
優しく撫でるように胸に触れて、ゆかちゃんの反応をじっと伺う。
「っ!ひぅ…」
固くなった突起に触れると、ゆかちゃんは小さく身をよじった。それがなんだか可愛くて、小刻みに指先で引っ掻く。


「や、っ!やぁあ…っ、だめぇ…」
「ゆかちゃん…これ、好きなんだ…」
「ちが、ぁ、は…っ」
ふるふると首を振ってるくせに、吐き出す吐息はどこまでも甘い。
益々欲情して、それすらあたしの物にしたいと唇を重ねた瞬間。
「誰かいるのかー?」
「!!」
体育館の入口の方から先生の声が聞こえた。
「う、ぁ、はいぃっ!」
慌ててジャージをゆかちゃんの肩に掛けて、倉庫から飛び出す。
「大本か。なんだどうした?もう閉めるぞ」
「ぅ、ええっと…あ、後片付けしてたらボールが結構奥の方に転がっちゃって…」
「そうか。仕方ないから気にせずにもう帰りなさい。あと、すまんがここの戸締まりをしたら鍵を職員室に返しておいてくれないか?」
「あ、はい…」

鍵をあたしに渡して先生が去っていく。姿が見えなくなった事を確認して、倉庫に慌てて戻った。
相変わらずゆかちゃんの頬は赤く染まったまま。
「っ…あの。ご、ごめん…」
「…なんで謝るん?」
「だってこんなとこで…しかも、初めてかもしれんかったから…」
なんか今になっていたたまれない気分。


よく考えたら嫌だよね。体育館の倉庫で初めて…とか。
「……ゆかはのっちとならどこでもいい…」
「えっ!?」
カシャン、と体育館の鍵が掌から落ちた。
「は、はよ帰ろ!」
制服を整えて立ち上がるゆかちゃん。
あたしのジャージとさっき落とした鍵をぎゅっと抱えて、赤い顔のまま倉庫をとたとたと出ていく。

「………マジ?」
一気に力が抜けてへなへなと座り込んだ。
(やばい…今めちゃくちゃ顔熱い…)
「の…のっちー鍵閉めるよー」
「へっ!?あ、ま、待ってゆかちゃん!」
ゆかちゃんの少し震えた声が聞こえてきてなんとか立ち上がる。足が縺れるけど慌てて外に出た。
ゆかちゃんと目が合う。でもなんとなく気恥ずかしくて、お互いに視線を泳がせた。
「…あ…あのさ、さっきの…」
「っ…先に玄関行って待っとるけぇ、はよ鍵返してきんさいや」
「あ…う、うんっ」
あたしに鍵とジャージを押し付けるように渡して、ぱたぱたと走り去るゆかちゃんの後ろ姿を見つめる。
あたしの掌の鍵は汗でびっしょりになった。

「どうしよう…このまま家に誘った方がいいよね多分…」
頭の中をしっかりピンク色に染めたまま、あたしはふらふらと職員室に向かった。


END






最終更新:2008年10月17日 14:12