レモンティーの甘酸っぱい匂いが、辺りにふわりと漂う。
胸が少し締め付けられた気がしたけど今は気付かないふりをした。
「ゆかはきっと変なんよ…」
「なんで変だと思うん?」
「だって、女の子が女の子を好きになるんよ?普通引くじゃろ?」
「あ〜ちゃんは引かん」
「……あ〜ちゃんは、優しいけぇそう言えるんよ…。でも…」
そこまで言って、ゆかちゃんはぽろぽろ涙を流す。
(きれい…)
ゆかちゃんから零れて落ちる雫が綺麗だと思った。
それを掬ってあげたいと思って。でも、その役目はあたしじゃないんだと目を閉じた。
ゆかちゃんはのっちを好きになった。
好きになって、のっちを想って泣いている。
(泣かないでいいんよ…ゆかちゃん)
きっと、のっちもゆかちゃんを想ってる。
「…大丈夫。のっちは、ゆかちゃんを傷付けるような事はせん」
「でも、嫌いになられたら…っ」
「絶対に大丈夫。あ〜ちゃんには分かるんよ」
(ほんまは、あ〜ちゃんが守ってあげたいんよ)
(ずっと傍にいたい)
(でも、ゆかちゃんが必要としてるのは、あ〜ちゃんじゃなくてのっち)
そっと頭を撫でてあげると、少し涙が止まった気がした。
(ゆかちゃんが幸せならあ〜ちゃんも幸せ)
(だから今は泣かないよ)
「ありがと……あ〜ちゃん」
「まぁ、あののっちの事じゃけぇゆかちゃんが好きって言うたら、跳びはねて喜ぶと思うよ」
「ふふっ…そうかも」
不意に、レモンティーの甘酸っぱい匂いが漂った。
「あ〜ちゃん、一口もらってもいい?」
頬に残ってた涙の後を拭いながら、ゆかちゃんがあたしが買った紙パックのレモンティーを指差す。
それをゆかちゃんの前に差し出して。
「全部あげる。あ〜ちゃんにはちょっと苦い…」
「そうなん?じゃあもらうね」
レモンティーを渡すと、ゆかちゃんの可愛い唇がストローをくわえる。
「まるでゆかちゃんみたいじゃね」
「ん?」
「レモンティー」
ふわりと漂う甘酸っぱい匂いは、今はただ苦いだけだった。
END
最終更新:2008年10月17日 14:33