日曜日の我が家には、あたしとちゃあぽんしかいない。
お父さんとお母さんはなんとか日帰りツアーで外出中。
たかしげは学校で部活の自主練習。
つまりはその間、二人きり。
普通は妹と二人きりになったからといって、別にどうってことない話なんだけどあたしはそう思えない。
何故なら、本気で妹を好きになってしまったからだ。
「どうしよう…」
どうにか二人きりを避けようとのっちとゆかちゃんにメールをするも、今日はデートの日らしい。お互いの学校が違うからこういう時くらいしか逢えない、とのっちが嘆いていたのであたしもそれ以上言えなかった。
もちろん学校の友達にもメールしてみたけど、皆予定があるから無理だと断られた。
今、あたしの心はいっぱいいっぱい。
顎に手を当てては意味もなくリビングをウロウロして、時折玄関の様子を伺ってみる。
…ちゃあぽんがコンビニへ行ってから結構経つから、もうそろそろ帰ってくるはず。帰ってきたらどんな顔したらいいんだろう。
相手は妹なのに、まるで恋人を待ってるみたいにソワソワしてしまう。
「…絶対こんなんあ〜ちゃんのキャラじゃない」
ブツブツ言いながら玄関に背を向けた時だった。
「ただいまー」
ちゃあぽんの声が玄関に響く。
「うひゃっ!…お、かえり」
「…なにしてんの」
「ななな何もしとらんよ!」
「今びっくりして床滑りそうになったでしょ」
「う…」
まさか見られてたなんて。
お姉ちゃんなのに落ち着きがないとか思われたかもしれない。かなり恥ずかしい。
「もー、相変わらずお姉ちゃんは怖がりなんだから」
「こ、怖がっとらんもん!」
「『うひゃっ!』って言ったくせにー」
ちゃあぽんがけらけら笑いながらあたしの横を通ってリビングへ向かう。
その背中を見ながら、案外普通に話せてる事に安堵した。
「じゃーん!これなーんだ?」
「え、うそっ!これ幻のやつじゃ!」
「これ最後の一個だったんだよー」
いつも午前中には売り切れてしまう幻のシュークリームと、紙パックのミルクティーがテーブルに置かれた。
…これ、買いに行ってたんだ。コンビニの真逆にあるお店なのに。
「ありがと…」
嬉しくてちゃあぽんの顔が見れない。
代わりに幻のシュークリームを見つめた。やばい、嬉しくてちょっと泣きそうだ。
「…早く食べないとあたしが食べちゃうよ?」
「だめ!」
「あはは、冗談だってば」
ちゃあぽんはそう言って、コンビニで売ってる105円のプリンを食べ始めた。
あたしも幻のシュークリームに口をつける。
「…ん〜!おいふぃ」
サクサクとした生地と濃厚なのにさっぱりとしたカスタードクリームが口いっぱいに広がる。
ほのかに香るバニラの匂いがさらにシュークリームの味を引き立てて、さすが幻と言われるだけあると感動してしまう。
「あ。ついてる」
「ん?」
不意にちゃあぽんの手が伸びて、あたしの唇の端に触れた。
心臓が大きくどきりと跳ねる。
つい、と指が這う感触に眩暈がしそう。
「おいしいね、このクリーム」
拭い取ったクリームをちゃあぽんが舐めた。
あたしはただそれを見てる事しか出来なくて。
「こんなおいしいんだから、零さないように食べなきゃだめだよ」
午後ティーを飲むちゃあぽんから慌てて目を逸らした。
番外編2END
最終更新:2008年10月17日 14:35