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◇N-side◇
あれからずっとゆかちゃんは戻って来なくて、心配になって様子を見に行っても姿は無くて。
あ〜ちゃんがメールをしたら、数分後に返事が来たんだ。
『ごめん、気分悪いから先に帰っちゃった』
荷物を置いて何も言わずに先に帰るなんて、らしくないなと思いながら、のっちとあ〜ちゃんは荷物をゆかちゃんの家まで届ける事に。
「ゆかちゃん…大丈夫かな」
「心配じゃね」
気分が重くなった。不安そうなあ〜ちゃんの横顔が目に入る。のっちもそれを見て、さらに不安になる。
しばらく黙って歩いた。
今は音が、欲しかった。




「二人ともごめんね、ゆかなら部屋で寝てるの」
のっちはゆかちゃんのお母さんに荷物を届けた。お母さん曰く、なんだか疲れてたみたいだから寝れば元気になる…だって。
少しホッとした様な、でもまだ心配な様な…。
のっちはあ〜ちゃんを家まで送った。バイバイって手を振って別れて、家へと向かう。
なんだか嫌な予感がする。
胸がザワザワして、落ち着かない。胸騒ぎ…ってヤツかな?
その夜、電話をしてもゆかちゃんは出なかった。何度かけても…留守電だった。




次の日、ゆかちゃんは学校を休んだ。風邪を引いてたらしい。昨日具合が悪かったのは、きっと風邪のせいだろう。
「のっち?」
「…」
「もーのっちってば」
ハッとして顔を上げた。昼休みの食堂、あ〜ちゃんと二人でご飯を食べてる最中だった。
どうやら随分とボーッとしていたらしい。あ〜ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでる。
「あ、ご、ごめん」
「何考え込んでたの?」
「えっと…ゆかちゃん、風邪大丈夫かなぁって」
そう言うと、あ〜ちゃんも眉毛が下がった。
「うん…心配だね」
コラのっち。あ〜ちゃんを不安がらせてどうするのさ。
「学校終わったら…一緒にお見舞い行こ?」
「うん、そーだね」
頷くあ〜ちゃんの目は、優しかった。


◇A-side◇


学校が終わって二人でゆかちゃんの家に向かう。その途中、のっちが学校に宿題を忘れたとかで取りに戻っていった。全くドジなんだから。
一人で先にゆかちゃんの家に着いちゃった。ゆかちゃん家に来るの、ケッコー久しぶりかも。
ピンポーン、チャイムを押す。…しばらくしても誰も出ない。ドアノブに手を掛けると、ドアが開いた。


「え…」
鍵が開いてる…不用心だなぁ。
「こんにちはー」
家の中は静かで誰もいない様子。だけど、二階から物音がして、見ると、ゆかちゃんがいた。
「あ〜ちゃん…」
「お見舞いに来たんよ、風邪大丈夫?」
やっぱりゆかちゃんは何処か顔色が悪かった。
「熱…ちょっと下がったけど、まだダルい」
「そっか…寝てなきゃダメだよ、あ、入って良いかな?」
「うん、どーぞ」
一応来る途中にのっちとコンビニに寄って色々と買ってきた。必要無いだろうけど、風邪薬とか色々。あと栄養ドリンクとか。
ゆかちゃんの部屋に入ると、少しだけ服とかが散乱してた。のっちの部屋に比べたら全然綺麗だけど、ゆかちゃんにしては珍しい。
「お見舞い来てくれたんだ」
「うん、のっちももうすぐ来るよ」
そう言うと、少しゆかちゃんが暗い顔した気がしたけど、多分気のせい。
「ゆかちゃんは寝てなさい」
ベッドに押し込み、布団を被せた。額に手を当ててみると、やっぱり少し熱い。
「お母さん達は?」
「皆仕事、朝からゆかだけだよ」
「え…お昼ご飯食べた?」
「ううん、まだ」
まだ、って…もう四時じゃん。あ〜ちゃんは急いで立ち上がった。


「ちゃんとご飯食べなきゃダメじゃん!」
とりあえず食べる物…栄養のちゃんとある物…。
「お粥作ってくるけぇ、待ってて」
部屋を出て行こうとすると、ゆかちゃんの掠れた声で名前を呼ばれた。弱々しい声に振り返る。
「待って…」
「…ゆかちゃん…?」
「嘘、本当はさっきご飯食べたんよ」
どうしちゃったんだろ。風邪のせいか様子が変だ。いつものゆかちゃんじゃない。
「あ〜ちゃん、コッチ来て」
ゆかちゃんが手招きする。ベッドの端に、ちょこんと腰掛けた。
頬が少し赤くて、息が荒い。なんだか…とっても苦しそうだ。
「ゆかちゃん…」
汗で額に纏わりつく髪を払おうとゆかちゃんに手を延ばすと、その手をギュッと握られた。
「ねぇ、キス…どんな味した…?」
「え…?」
ゆかちゃんの突然の質問が理解出来ずにいた。キス?どんな味って…?
「キスした事…ないの?」
「ある…けど」
「どんな感じだった…?」
ゆかちゃんの熱いまなざしに吸い込まれそうになった。なんだか感覚が無くなってしまいそうになる。
「体が…熱くなる感じ…かな」
そう呟くと、ゆかちゃんの手が静かに離れた。熱を失う。
「…ゆかもだよ」


◇35:End◇






最終更新:2008年10月17日 14:47