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−N-side

それは、涙がこぼれそうになるくらい、甘くてやさしかった。
入ってきていいよという無言の声が、首にまわされた腕の圧力に感じられる。

閉じ合わされた膝に自分の膝を割り込ませる。
当たり前のように指をそっとあてると、あ〜ちゃんが身を固くした。
目を閉じてそれを待ち受けている唇。

こんなに無遠慮にこんなに簡単に。
君の中に入ってしまっていいんだろうか。

あ〜ちゃんはいつだって目を固く閉じて、唇を噛んでいるから。
何度目だって、まるで初めてのときみたいに戸惑ってしまうよ。

汚してしまうかもしれないし、嫌われてしまうかもしれない。
君に触れるたびに、何度そう思ってきたかわからない。

けれどそんな戸惑いなんて容易に振り払うことができるくらい、
それでも伝えたい気持ちと触れたい欲望。
何があったって受け止めるって、勇気を持てた人間にだけ許された行為。


こんなに輝いててこんなにやさしくてこんなにかわいい君に。
それを許されたことをほんとに誇りに思うんだよ。

だから今日も。
逃れられないこの欲望を、一緒に分け合いたいって思うんだ。


−N-side

触れたところが熱くって湿ってる。
それを自分にだけ許してくれたことに感動する。
ぬるっとした感触にうれしすぎて笑い声をあげたくなった。


「…っ!」
耳元のあ〜ちゃんの呼吸が乱れた。
途端に普段のあどけなさが消えて、なまめかしい表情になる。
思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。

指を進めようとしたら、身をよじるようにさせて腰がついてくる。
目的地はもっと先だって言ってるみたい。

その身体の素直な反応に、つい聞いてみたくなる。
言葉攻めなんてしてるつもりもなくって、
ただ純粋に聞きたかった。

「…あ〜ちゃん、気持ちよくなりたい?」

固く閉ざされた目を少し開いて、あ〜ちゃんがこっちを見る。
うるんだ目でこくりと頷いた。頬が赤く染まってる。


うん。そうだね。一緒に気持ちよくなろ。

あ〜ちゃんの声が、甘く掠れたものに変わるまで。
一緒に気持ちよくなろうね。


−N-side

熱くてとろとろしたその中で、指を動かしていく。
思いつく限りの動きと、記憶が教えてくれるポイント。

「…あっ……んんっ…」
次第に声が大きく、ひときわ切なげになっていく。
隙間もないくらいにしがみついてくる体はすこし汗ばんでいた。

よっぽど見られるのが恥ずかしいみたい。
私の首あたりにぴったりと顔をうずめて震えてる。


「恥ずかしい?」
「はずかしい…に…きまってる…でしょ…っ」
大きくなった声は、高くて切ないものに変わっていった。
ああ。もっと聞きたい。もっと見たいよ。

「もっとよく顔見せて」
指を止めてそう言ってみる。だってもっと見たい。
乱れた呼吸を、私の指を求めてるその顔を。

「ぜったい、やだ…」
そう言いながらも、なすがままにだんだんじれてくる。
とうとう観念してこわばる体をすこし緩めて、唇を寄せてくる。
目が合うと、伏せ目がちに言った。

「はずかしい、みないで…」
せつない表情を浮かべながらも、これからに期待してる目。
きっと心の中では早くってねだってるんだろう。

こんな顔や声が、自分にだけ向けられるしあわせを。
もっともっとって求め合う尽きない欲望を。
体をつなぐことでさらに高まっていく思いを。

全身で伝え合って交換し合ってる。
膨らんで割れそうだよ。君もそう思ってくれてるの。
もっとわかって。もう抑えられないくらいに、すきだって思うこの気持ちを。


−A-side

すきだよ、のっちの言葉が耳に響いた気がした。
もしかしたら、声には出してないのかもしれない。

それでもたしかに聞こえたよ。
その声は、私にしか聞こえないって思っていいよね?

「…っ…ああっ…」
次の瞬間、全身を抗いがたい快楽の波が襲ってきて、
思わず鋭い叫びが漏れた。

まるで体中を何かで埋め尽くされてるような圧迫感と、
それに渦を巻きながら突き抜けていく快感は、
応え方を知らない私を残酷にねじ伏せてくる。

指に導かれ、つい腰が動くのが自分でもわかる。
そんな強烈な恥ずかしさをも凌駕していくのは、
やさしいくせに容赦なく体を探っていく指先と唇が、
のっちのものだからなんだよ。

その手で引き出された快感が体に刻み込まれていく。
頭が真っ白で、何も見えない。
いつもそうだ。自分が自分でなくなってくかんじに急に不安になる。

いじわるしてじっと顔を見てるんだろうけど、
左腕はしっかりと肩を抱いてくれてるのに、やさしさを感じるから。
このままずっと身を預けてしまいたくなるよ。
ちゃんと受け止めてくれるって信じていいよね。


…どれだけ時間が経っただろう。
貫かれる快感に身を委ねていると、突然のっちが言った。

「…やっぱり、イけない?」


(つづく)






最終更新:2008年10月17日 15:03