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◇N-side◇
家のお風呂がブッ壊れた。
『はぁ!?業者さん呼んで早く直してもらいんさい!』
電話の向こうでお母さんが言う。今忙しいのか、イライラした口調でなんか恐い。
「分かったけど…直るまでどうすれば良いん」
『お風呂屋さん行きんさい、お風呂屋さん』
「あ、そっか」
その手があったか。




「…え」
「なんでおるん…」
最近近所に出来た綺麗なお風呂屋さん。岩盤浴だとかサウナとかもあって、人気があるらしい。
そこの浴場の入口、女湯と書かれたのれんをくぐろうとした瞬間、見覚えのある長いストレートの黒髪に振り返ると、お風呂道具を持った恋人の姿。
「ゆかちゃん…」
「なんでおるんよ」
のっちの恋人はあからさまに嫌そうな顔をしている。
「家のお風呂が壊れちゃって仕方無く…って、ゆかちゃんは…?」
「ゆかはお母さんがタダ券もらって来たから一緒に…」
すると、のっちとゆかちゃんの間をスルッとゆかちゃんのお母さんがすり抜けた。先に行くわよー、と笑顔で。
「そ、そうなんだ…偶然だね!」
「…最悪」
なんでゆかちゃんが怒るの。意味が分からん。
「あ、ゆかちゃーん」


聞き覚えのある声。
ゆかちゃんが振り返る。のっちも振り返る。
「ゆかちゃんもお風呂入りに来たん?」
マイエンジェル降臨。
「「あ〜ちゃん!」」
綺麗にゆかちゃんとハモった。
だけどマイエンジェルはのっちに気付くと、一瞬で顔色が変わった。ちょっとちょっと、さっきから二人共、リアクションおかしいでしょが。
「なんでおるん」
さっき似た質問を聞いたような…。
「家のお風呂が壊れたんよ」
「…」
「あ〜ちゃんは?」
「ちゃあぽんが、どうしても来たいって言うけぇ仕方無く…」
あ、それでか。ちゃあぽんは今時娘だもんね、きっと岩盤浴とかしたかったんだ。
「三人共、そんな所おったら邪魔じゃろ、はよ入ってや」
「うぇ?」
「ちゃ、ちゃあぽん!」
グイグイとちゃあぽんに押され、のっち達は脱衣所に。
正直…若い人が多いから目のやり場に…困る。いやお年寄りが多かったらどうとかじゃないけどさ。
「…変態」
「…ド変態」
「痛いっ!」
思いっ切り二人に腰を抓られた。なんで変態呼ばわりされなきゃなんないの。同じ女なんだから別に良いじゃん裸見たって。お風呂屋さんってそーゆーシステムじゃん。


てゆーか良く考えたら…いや良く考えなくても、もしかして二人と一緒にお風呂…。
あいやぁ〜!!
死ぬー!のっち死ぬって!ぎゃーっ!!
「さ、早速お風呂に…」
二人の手をガッチリ握ってロッカーに…って、引いてもビクともしない。あれ?二人共こんな力強かった?
「ゆか、のっちが上がったら入る」
「あ〜ちゃんも」
「なぜ!どうして!」
のっちの夢なのに!
「「のっち、絶対ジロジロ見るもん」」
「そりゃもう舐め回す様に見るに決まっ…ゴフンッ!」
お…お腹に…凄いパンチ×2…。やばい、吐く…喉までカレー登って来てる…。
「変っ態!信じられん!」
「最低…死ね淫魔」
痛い痛い痛い痛い!シャンプーとか石鹸とか投げないで!てか淫魔って!?




「分かった、じゃあ二人先に入って来んさいや、それまでのっちは岩盤浴しとる」
ボッコボコにされたのっちは、そう言って二人に手を振った。
「じゃ、行こっかゆかちゃん」
「そうじゃね、行こ行こ」
ふふふ…騙されたな小娘共。これぞのっちの作戦ぞ。
「二人共、ゆっくり入って来てね」
のっちは笑顔で脱衣所を去った。
よーしよしよし!のっちもなかなかの策士じゃろうて。


しばらくして、
「おっとっと忘れ物〜」
これぞ完璧な作戦!忘れ物を取りに行くフリをして、着替えている二人の姿を!この目に!
脱衣所に飛び込むと、着替え中の二人の…てアレ?服着てる?
「そっか、忘れ物取りに来たんだ」
真っ黒な笑顔のゆかちゃんと、ぷくーなあ〜ちゃん。
あ…やべーしくじった?
「「はい忘れ物」」
「ぶごおっ!」
川の向こうに、死んだ小学校の池の金魚が見えた。


◇A-side◇


「のっち、しばらくは大人しくしとるじゃろ」
大浴場の一番大きなお風呂に浸かりながら、ゆかちゃんが呟く。あ〜ちゃんもその隣で頷いた。
のっち気絶してピクピクしてたし、そのまんまサウナに放り込んでやった。死んだらごめん。
それにさ、恋人のあ〜ちゃんならともかく、ゆかちゃんの裸も見たいとか、おかしいでしょ。全然面白くない。
「あー気持ち良い」
「広いお風呂は最高じゃね」
髪を上げたゆかちゃんが色っぽいなーなんて思いながら、あ〜ちゃんは大きくため息を吐いた。
体の芯まで温まるってこの事だね。凄くあったかい。
「…!」
一瞬ゾクッとした。なんだろ、嫌な予感がする…。


◇番外1:End◇






最終更新:2008年10月17日 15:15